DGS(深殿部症候群)の診断はどこまで詰められるのか。立ち仕事で改善が頭打ちの梨状筋症候群疑いから
セラピスト向け
立ち仕事で頭打ちのDGS疑い、確度の積み方と評価への戻り方
立ち仕事の患者さんで、休みの日は痛くないのに立位が長く続くと殿部が痛む。一定の改善のあと、そこから変化が止まってしまう。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに挙がったDGS(深殿部症候群)疑いの相談をもとに、この領域の診断はどこまで詰められるのか、詰めきれないときにどう動くのかを考えます。
相談されたのは、立ち仕事の患者さん2名です。どちらも仕事が休みの日は痛みがなく、立位が長く続くと殿部の痛みが強くなります。ある程度までは良くなったものの、そこから変わらない状態が続いていました。
施術者は圧痛点をすべて確認して印をつけ、温かくなるまで7分ほど超音波(0.75W/cm²=ワット毎平方センチメートル)を当てる方法を試していました。直後は楽になるのですが、効果があまり持続しない、という経過です。
- 立ち仕事の2名。仕事が休みの日は症状が出ない
- 立位が長く続くと殿部の痛みが強くなる
- 圧痛の中心は双子筋の少し上。殿部としては比較的上方
- 圧痛点への超音波で直後は楽になるが、効果が持続しない
- 伸長で症状に関わる所見はあった一方、収縮時痛の確認はまだだった
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎DGSの診断は、なぜ難易度が高いのか
DGSは、殿部の深いところで坐骨神経が刺激や絞扼を受ける病態の総称です。検討の場では「関節痛を疑う、と言っているくらい抽象度の高い概念」という表現が出ました。かつて梨状筋症候群と呼ばれてきた領域ですが、実際には梨状筋のほかに内閉鎖筋、線維性バンドなど、候補になる組織が複数あります。
しかも、梨状筋症候群まわりの検査は感度(症状のある人を陽性と拾う割合)や特異度(症状のない人を陰性と返す割合)が定まっていないものが多く、結果のばらつきも大きい。検査単体で白黒をつけにくい領域です。
線維性バンドに至っては、エコー(超音波画像装置)でも確認が難しく、仮に手術で存在が確認できたとしても、無症候性のバンドがどのくらいあるかという研究が見当たらない以上、存在がそのまま発症の原因だとは言い切れません。検討の場では「開けても分からない」という言い方で共有されました。
梨状筋の収縮時痛・伸長時痛・圧痛がそろい、腰椎や仙腸関節など腰仙椎の疾患をきれいに除外できている場合は、比較的判断がつきやすい。逆に、この条件がそろわない症例では確定は難しく、「疑い」のまま計画を組む前提になります。腰仙椎の除外には医師の画像診断や診察が必要な場面もあるため、疑わしい所見があれば受診をお勧めします。
それでも積める根拠。3つの所見と、持続圧迫の反応
確定が難しい領域でも、疑いの確度を上げる手は残っています。まずは収縮・伸長・圧痛の3点をそろえて確認すること。本例では伸長に関わる所見と圧痛は取れていましたが、収縮時痛の確認、たとえばペーステスト(梨状筋の収縮時痛をみる検査)はまだでした。検査の選び方はフェアテストと優先順位の記事で扱っています。
教子先生
まなぶ先生
瀬谷崎持続的な圧迫で遅れて放散痛が出る所見は、検査的介入のひとつとして検討の場で共有されました。押した瞬間の痛みではなく、時間差で広がる痛みを手がかりにする、という見方です。研究で確立した検査ではなく臨床印象の域にありますが、単発の圧痛よりは神経の関与を考える材料になります。
超音波で楽になった。その変化をどう読むか
本例では、圧痛点への超音波0.75W/cm²のあとに患者さんが楽になっています。ここで気をつけたいのが、「効いた=神経痛が良くなった」と読んでしまうことです。
検討の場で挙がったのは、神経の症状に特異的に効いたとは限らない、という読みでした。超音波で局所の血液供給が増えれば、使いすぎで血流が乏しくなっていた周囲の組織でも発痛物質が減り、痛みの閾値(痛みを感じはじめるライン)が上がることが考えられます。
DGSと呼ばれる病態そのものが良くなったのか、周囲の組織の閾値が上がっただけなのか。「楽になった」という結果だけでは、この2つの区別はつきません。変化した事実は施術に活かしつつ、何が良くなったのかの解釈は保留しておく。この区別を持てるかどうかが、次の評価の質を左右します。
頭打ちになったら、介入を重ねる前に評価へ戻る
直後は楽になるのに持続せず、改善が頭打ち。このとき同じ介入を続ける選択もありますが、検討の場の方向は、病態把握をもう少し絞る、つまり評価へ戻ることでした。
候補の見直しでは内閉鎖筋が挙がりました。SLR(下肢伸展挙上テスト)では梨状筋よりも先に内閉鎖筋が坐骨神経に接触するという研究があり、梨状筋か内閉鎖筋かの判断は慎重にする必要があります。腰仙椎の疾患を除外できているかの再確認も、最初の段階として重要です。
介入の面では、神経の滑走エクササイズが挙がりました。テンショナー(神経に張力をかける方法)ではなくスライダー(神経を滑らせる方法)を推す意見です。ただし殿部局所のトラブルがある程度落ち着いてからでないと、痛みを誘発するだけになりかねません。導入の時期を見きわめて使います。両者の違いは神経モビライゼーションの記事をどうぞ。
それでも厳しければ、有酸素運動や患者教育、股関節・腰椎・骨盤のアライメント修正など、こちらがある程度変化させられる要素へ働きかける方向も共有されました。患部だけを見続けるより、視野を広げるほうが打ち手は増えます。
まなぶ先生
瀬谷崎





