70代・20年来の足底のしびれと痛み。長期化した症状の期待値と評価の順番
セラピスト向け
治せるかどうかの前に、変えられる要素を探す。20年来の足底症状
20年前から続く足底のしびれと痛み。インソールにも施術にも反応が乏しく、いろいろな場所へ通ってきた患者さん本人が、もうどこへ行けばいいのか分からないと困っている。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった相談をもとに、長期化した症例の期待値設定と、評価の組み立てを考えます。
相談されたのは70代男性の症例です。20年ほど前から足の裏にしびれと痛みがあり、これまでにインソールを作ったものの、まったく効果がなかったと話しています。歩いても痛く、歩かなくても痛い。何をしても変わらない、という訴えでした。
場所はMP関節(中足趾節関節)の前側から足底の中央にかけてで、圧痛は第3趾のMP関節のあたりに強く出ます。足趾を反らせる方向に伸ばすと痛みが強まる所見もありました。担当者はラジオ波とストレッチングで筋を緩める施術を重ね、動きは上がったものの症状はあまり変わらず、10回ほどが経過していました。
- 20年来の足底のしびれと痛み。インソールでは効果を感じられなかった
- 歩いていても、歩いていなくても痛む。何をしても変わらないという訴え
- 圧痛は第3趾のMP関節(中足趾節関節)あたり。足趾を伸ばすと痛みが強まる
- 接地していなくてもしびれる。しびれは足底の内側寄り
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎20年続く症状の期待値。丸ごと治すことより、変えられる要素
検討の場でまず話題になったのは、細かい病態の前に「そもそも治るのか」という点でした。20年痛かった症状を全部消しにいく目標設定には、無理があります。担当者自身も、10回の施術で変わらない経過に手詰まり感を抱えていました。
長期化した症例で先に置きたいのは、症状の全消失ではなく、条件を変えると症状が変わる要素を見つけることです。変わる要素が見つかれば、そこに介入の余地があります。見つからないまま同じ施術を重ねる選択は、取りにくくなります。
「治せるか」を最初に約束するのではなく、評価で「変化する要素があるか」を確かめる。変わる要素が見つかった分だけ、今より良くなる余地がある、という考え方です。
接地しなくても出るしびれ。足根管症候群の評価を取りにいく
接地していなくても出るしびれは、筋や筋膜の問題だけでは説明しにくい訴えです。しびれが足底の内側寄りにあることから、検討では足根管症候群、つまり内くるぶしの後ろで脛骨神経が絞扼される病態の評価を取りたい、という流れになりました。
実際、足関節を背屈するとしびれが誘発される感覚があり、エコー(超音波画像)では脛骨神経がやや太く見えた、という観察も共有されています。検査としては、トリプルコンプレッションテストの名前が挙がりました。脛骨神経の状態を見る誘発検査で、検討の場では特異度の高い検査だという臨床印象が共有されています。
もうひとつ指摘されたのは、歩いているときの痛みと、何もしていないときの痛みとで、本人の表現が違うように聞こえるという点です。ひとつの病態で全部を説明しようとせず、痛みとしびれ、荷重時と非荷重時を分けて確かめたい症例です。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎タオルとテーピングで、アーチと症状の関係を確かめる
検討で出た確認の手順は、次のようなものでした。
- タオルでアーチを支える舟状骨の真下あたりにタオルを挟み、アーチを保持した状態で症状が変わるかをその場で見る。
- テーピングで1日固定するタオルが当たること自体が痛い場合は、足底のアーチが低下しないようにテーピングでしっかり固定し、そのまま1日過ごしてもらう。
- 変化を聞き取るこれで多少でも楽だったとなれば、アーチの低下と症状がつながっているという見立てに、かなりの確信が持てる。
ここでのテーピングは治療ではなく、評価として使っています。道具を「治すため」に使うか「確かめるため」に使うかで、同じテーピングでも意味が変わります。
アーチを保持すれば症状が減ると分かれば、アーチ形成系の施術へ根拠を持って進めます。検討の場では、足根管症候群であればアーチ保持系の施術で割と改善するイメージがある、という臨床印象も共有されました。丸ごと全部が良くなるかは別として、今より良くなる余地はある、という位置づけです。
変化する要素を見つけることが、この症例の目標になる
検討の終盤では、圧痛としびれが足底の内側にあることから、脛骨神経の枝が母趾外転筋の周囲で絞扼される可能性や、外側足底神経の枝の関与も話題に挙がりました。その場では文献を思い出しきれず、確認して後日共有することになっています。仮説を一本に絞りきらず、候補として持っておく段階です。
方針としては、まず脛骨神経の絞扼を第一候補に評価を進め、アーチの形成で症状が減るかどうかを見る。筋肉を緩めてどうこうという段階ではない、という方向で検討は落ち着きました。
なお、しびれが進行する場合や、評価で説明のつかない所見が残る場合には、医師の診察につなぐ前提で進めます。診断は医師の領分であり、私たちにできるのは、変えられる要素を見つけて確かめるところまでです。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎





