足根管症候群を評価する。後脛骨神経の絞扼とTinel(チネル)、足底腱膜炎との鑑別
セラピスト向け
足裏のしびれを、絞扼部位で絞り込む
足根管症候群は、内果後方の足根管で後脛骨神経が絞扼される障害です。足底のしびれや灼熱痛、立位・歩行での増悪が特徴。扁平足・回内足やガングリオンなど占拠性病変が背景になります。足底腱膜炎や腰仙部由来との鑑別、占拠性病変の除外が要点になります。手のしびれの手根管症候群の足版とも言えます。
足底のしびれを「血行不良」で片づけず、臨床では足根管症候群を、絞扼性神経障害として病態・評価・鑑別・保存療法に分けて見ていきます。
病態:足根管での後脛骨神経絞扼
内果(内くるぶし)の後下方には、屈筋支帯に覆われた足根管があり、後脛骨神経が通ります。ここで神経が圧迫されると、足底(内側・外側枝の支配領域)のしびれ・灼熱痛・違和感が生じます。立位・歩行で増悪し、安静で軽快する傾向があります。
背景には扁平足・後足部回内による神経の牽引、ガングリオンや腱鞘嚢腫・静脈瘤などの占拠性病変、外傷後の瘢痕などがあります。占拠性病変の有無で対応が変わるため、見極めが重要です。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎疫学と自然経過(期待値の設定)
手根管症候群ほど頻度は高くありませんが、扁平足や立ち仕事、占拠性病変のある人にみられます。原因への対応で軽快する例がある一方、占拠性病変による圧迫は保存療法で取りきれないことがあります。
「背景因子への対応で改善が期待できるが、占拠性病変があれば手術も選択肢」という見通しを共有しておくと、適切な段階で画像評価・相談につなげられます。
評価:一つひとつの所見を重ねる
- しびれの分布:足底(内側・外側枝)の領域、灼熱感
- Tinel(チネル)徴候:内果後方の叩打で足底へ放散
- 増悪因子:立位・歩行での増悪、背屈外反での誘発
- 足部:扁平足・後足部回内、内果後方の腫瘤の触知
- 鑑別所見:踵の第一歩痛、両側性・対称性、腰由来の所見
誘発所見は単独で確定できません。しびれの分布とTinel(チネル)、増悪因子、占拠性病変の有無を組み合わせ、近位や全身性を含めて判断します。
鑑別(外せないもの)
- 足底腱膜炎:朝の第一歩痛、踵内側の圧痛(しびれは主でない)
- 腰仙部神経根症・坐骨神経由来の関連症状
- 多発神経炎(糖尿病など):両側・対称の手袋靴下型
- モートン病:前足部の趾間のしびれ(部位が異なる)
- 占拠性病変(ガングリオン等)、足根骨癒合症
介入:背景因子と荷重を設計する
- 足部:回内制御のインソール、アーチサポートで神経の牽引を軽減
- 負荷管理:立位・歩行時間の調整、合わない履物の見直し
- 神経・軟部:後脛骨神経の滑走、足部内在筋・下腿の柔軟性
- 占拠性病変が疑われれば画像評価へ
- 強いしびれ・筋力低下や難治例は整形外科へ
扁平足など背景因子への対応が保存療法の中心です。ガングリオンなど占拠性病変による圧迫は保存療法で取りきれないことがあり、手術(足根管開放)が検討されます。強いしびれや足底の筋力低下、進行する症状があれば、足根管症候群と決めつけず医療機関での評価につなぎます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎足裏のしびれを「分布」で絞り込む
足根管症候群は、しびれの分布とTinel(チネル)を症状に結びつけて絞り込みます。足底腱膜炎や近位由来との鑑別を押さえ、背景因子と荷重から組み立て、占拠性病変が疑われれば医療へつなぎます。
治療家向けのオンラインカンファレンスでも、足根管症候群を疑った相談がありました。60代女性で、両足の内側アーチに朝起きた瞬間から、荷重していなくてもジリジリとした痛みが出るケースです。足底腱膜炎の典型像と違い院内では痛みの再現が乏しく、インソールで日中は軽くなるのに朝の痛みが変わらない。検討で挙がったのが、チネル徴候が陰性でも神経性を疑い直すことと、トリプルコンプレッションストレステスト(内果の後方を圧迫しながら足関節を底屈・内反させて30秒ほど保持し、症状の誘発を見る検査)を足すことでした。睡眠不足やアルコール、糖尿病といった感作・ニューロパチー側の背景を問診で確かめる方針も併せて共有されています。こうした検討の場はオンラインカンファレンスの開催報告で紹介しています。





