漠然とした下部胸椎の背部痛。キャット&ドッグを評価にも介入にも使う進め方
セラピスト向け
場所を絞りにくい背部痛は、四つ這いの動きから仮説を立てる
動かすと痛いけれど、ズキズキともチクチクとも言いにくい。押しても場所の輪郭がはっきりしない。下部胸椎まわりの漠然とした背部痛は、原因部位の特定が難しい症状の代表格です。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに挙がった27歳女性の相談をもとに、絞り込みにくい背部痛への現実的な評価と介入を考えます。
相談されたのは27歳女性の症例です。昨年11月から下部胸椎のあたりに痛みがあり、1月に入って寒くなってから悪化している気がする、と本人は話しています。朝起き上がるときに体にねじりが入ると痛む一方、朝以外なら同じような動作をしても特に気にならない、という出方でした。
痛みの質をたずねても「なんて言っていいか分からない」。ズキズキ、チクチクと選択肢を出してもピンとこない。鋭くズキッとする痛みではまずなさそうで、呼吸で変わることもありません。動作テストで痛みがはっきり再現される場所も乏しく、一貫した病態像は浮かびませんでした。
- 部位は下部胸椎まわり。痛みの場所の輪郭がぼんやりしている
- 痛みの質は本人も言葉にしにくく、鋭い痛みではなさそう
- 呼吸では変わらない
- 朝の起き上がりでねじりが入ると痛むが、朝以外は同じ動作でも気にならない
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎症状で絞れないなら、胸椎・胸郭の動きを確かめる
背部痛では、テストで再現痛がはっきり出ず、確かめても一貫した病態が見つからないことが珍しくありません。検討でもまず挙がったのは、胸椎や胸郭の動きの確認でした。症状の側から絞れないなら、可動性の側から仮説を立てて、動きを良くする方向でエクササイズを組んでいく方針です。
その具体的な手段として名前が出たのが、キャット&ドッグ(四つ這いで背中を丸める・反らせる運動)です。胸椎領域の痛みでは好んで使われている種目で、評価にそのまま使え、介入にも使え、自宅でのセルフエクササイズにも使える。ひとつの種目が三役をこなす汎用性が持ち味です。
評価=どこの動きが悪いかを見る。介入=動きの悪い場所を意識して繰り返す。セルフ=同じ動きをそのまま自宅課題にする。評価から自宅課題まで同じ種目でつながるので、患者さんの側でも話が一本の線になります。
評価で見るのは、主に「動き」
キャット&ドッグを評価に使うとき、見るのは主に動きです。伸展の可動域が悪いのか、屈曲が悪いのか。どこの動きが悪く、どこが動きすぎているのか。背骨の矢状面(前後に丸める・反らせる面)の動きを、ざっと網羅的に確かめられます。精密な分節評価というより、見れば大体分かるくらいの程度で十分です。
動きの悪い場所が見つかったら、そこを意識して動かすよう声かけ(キューイング)しながら何回か繰り返してもらい、必要なら徒手で軽く補助を入れます。この時点で、評価がそのまま介入に変わっています。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎回旋は、下部胸椎の「働きすぎ」を疑って見る
下部胸椎領域の症状では、隣り合う関節の役割から考えるジョイントバイジョイント理論(隣接する関節が可動性と安定性の役割を分け合っているという考え方)が当てはめやすい、という話も出ました。腰椎の回旋可動域が足りないとは考えにくいので、隣接のうち上部胸椎・胸郭の回旋可動性が低下していて、下部胸椎だけで回旋を代償しているのではないか。まずそう仮説を立てます。
- 四つ這いで回旋してもらう症状の誘発や動きの偏りが出るかを見ます。
- 下部胸椎に軽く手を当てて動きを抑える抑えるとほとんど回旋できず、抑えないとよく回るなら、下部胸椎だけで回旋動作をしているという判断に傾きます。
- 軽く固定したまま回旋を繰り返す最初は全然いかなくても、少しずつ動きが出てくるのを確かめながら反復し、変化を見ます。エクササイズとしてもこの形をそのまま使います。
患部の起立筋は、初回から緩めてよい
動きの評価と並行して、患部の脊柱起立筋(背骨沿いの筋)を普通に押して緩める介入も挙がりました。検討の場で共有された臨床印象ですが、背部痛ではこれでスムーズに良くなることが多く、テストがはっきり出ない場合はむしろ初回から使われています。
興味深かったのは患者さんの反応の話です。腰痛では腰そのものより別の筋を押したときに「そこだったんだ」となることが多いのに対し、背部痛は患部を触っているときが一番「そうしてほしかった」と感覚の一致が起きやすい、という経験談でした。
なぜそこの緊張が強いのかは、キャット&ドッグで見つけた動きの悪い場所と結びつけて考えます。他の場所の動きを代償して働きすぎているのか、動きが悪いから緊張しているのか。どうとでも取れるストーリーではありますが、その仮説に乗って一旦進め、反応で確かめるのが現実的な落としどころです。
患者説明は「かもしれない」で止め、反応で判断する
患者さんへの説明の仕方も話題になりました。断定はしません。「ここのどこかが悪いと思います。今見るとこの辺りの動きが悪いので、もしかしたらここが原因になっているかもしれません。しばらく、ここの動きを良くする方向で進めていきましょう」。この程度の言い回しに留めます。
1回の介入で変化が出たら、しばらくその方針を続ける。次回来院時に全く変わっていなければ、介入を変える。直後の良い感じが2、3日持てば効果があったと判断し、翌日や帰宅時に戻ってしまうなら、適切な介入ではなかった可能性を考える。
長年の慢性例では1回の反応をそこまで重く見られませんが、経過数か月のこうした例なら、適切に介入できれば2、3日持つか、そのまま良くなっていくこともある、という感触が共有されました。逆に、方針を変えても反応が出ない場合や経過が運動器らしくない場合は、医療機関の受診を選択肢に入れて患者さんと相談します。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎





