膝蓋靭帯炎は一括りにしない。ブラジナ分類と痛む場所の見方
セラピスト向け
膝蓋靭帯炎を、ひとつの名前で終わらせない
ジャンパー膝、膝蓋靭帯炎、膝のお皿の下の痛み。よくある症状だからこそ、痛む場所と病態を分けて見ないと、介入も見通しもズレることがあります。
膝蓋靭帯炎は、痛みの部位や病態によって見立てが変わります。ブラジナ分類は、ただ重症度をつけるためではなく、評価と回復の見通しを整理するために使いたい分類です。
膝蓋靭帯炎は、スポーツ現場でも整骨院でもよく見る症状です。
ジャンプ、ダッシュ、切り返し、階段、しゃがみ込み。
膝のお皿の下あたりが痛くなり、「ジャンパー膝」と説明されることもあります。
ただ、よくある症状ほど、雑にまとめられやすいです。
「膝蓋靭帯炎ですね」
「ストレッチと筋トレをしましょう」
これだけで終わると、少し足りません。
どこが痛いのか、どの段階なのか、どんな負荷で反応するのか。ここを分けて見たいところです。

まなぶ先生

瀬谷崎
ブラジナ分類は、痛みの経過を整理する道具
膝蓋靭帯炎では、ブラジナ分類という整理がよく使われます。
これは、痛みが運動とどのように関係しているかを段階的に見る分類です。
簡単に言うと、最初は運動後だけ痛む。次に、運動中にも痛むが競技は続けられる。さらに進むと、痛みで競技や日常動作に支障が出る。最終的には断裂まで含まれることがあります。
| 段階 | 痛みの出方 | 臨床で見たいこと |
|---|---|---|
| 初期 | 運動後に痛むが、運動中は比較的動ける | 負荷量、練習量、回復時間を確認する |
| 中等度 | 運動開始時や運動中に痛むが、何とか続けられる | 競技を続けながら調整できるかを検討する |
| 進行例 | 痛みで競技や日常動作に支障が出る | 負荷を下げる期間、医療機関での確認も考える |
| 重度 | 断裂など、強い機能障害を伴う可能性がある | 整骨院だけで抱えず医療機関での確認が必要 |
この分類を使う意味は、「ステージを言うこと」ではありません。
今の痛みが、練習後だけなのか、運動中も出るのか、生活にも影響しているのか。
それによって、負荷の調整や改善までの見通しが変わります。
痛む場所で、疑う病態が変わる
膝蓋靭帯炎と聞くと、膝蓋骨の下端、つまりお皿の下側に痛みが出るイメージが強いと思います。
たしかに、そこは重要な部位です。
ただ、膝前面の痛みは、痛む場所によって考える病態が変わります。
膝前面の痛みは、膝蓋骨側、膝蓋靭帯付着部、脛骨粗面側など、痛む場所によって見立てが変わります。
大腿四頭筋が膝蓋骨へ付着する部位では、大腿四頭筋腱炎を考えることがあります。
膝蓋靭帯が膝蓋骨へ付着する部位では、膝蓋靭帯の表層の炎症、膝蓋下脂肪体の関与、膝蓋靭帯の深層の損傷や変性などが候補になります。
さらに、膝蓋靭帯が脛骨粗面へ付着する部位では、膝蓋靭帯の表層の炎症や、成長期であれば骨端部の問題も考える必要があります。
「膝のお皿の下が痛い」で終わらせず、膝蓋骨側なのか、靭帯中央なのか、脛骨粗面側なのかを確認します。痛む場所は、病態を考える入口になります。
もちろん、痛む場所だけで確定するわけではありません。
ただ、痛みの場所を雑にすると、介入の方向も雑になります。
膝蓋下脂肪体が関与していそうな痛みと、腱の変性が強い痛みと、単純な表層の炎症では、同じように扱えないことがあります。
炎症だけで説明しすぎない
膝蓋靭帯炎という名前には「炎」という字が入っています。
そのため、炎症を抑えればよいと考えたくなります。
ただ、膝蓋靭帯の痛みでは、腱の変性や負荷への適応不全が関与することもあります。
特に長引いているケースでは、単純な炎症だけで説明できないことがあります。
名前に「炎」がついていても、すべてが急性炎症とは限りません。長引く膝前面の痛みでは、負荷管理と腱の状態を分けて考えたいところです。
ここを間違えると、「とにかく休む」「とにかく冷やす」「痛みが引いたらすぐ元通り」という対応になりがちです。
もちろん、痛みが強い時に負荷を下げることは必要です。
でも、腱は負荷に対して適応していく組織でもあります。
完全に休ませるだけでなく、どのタイミングで、どの強度から、どの動作を戻すかが大切になります。
改善までの期間は、分類で変わる
膝蓋靭帯炎は、すぐ良くなるケースもあります。
一方で、長くかかるケースもあります。
その違いは、痛みの段階、病態、競技レベル、練習量、体重、ジャンプや着地の負荷、休める環境などによって変わります。
痛みが運動後だけなのか、運動中も出るのか、日常動作にも出るのか。膝蓋骨側か、脛骨粗面側か。腱の変性が疑われるのか、脂肪体の関与が強そうなのか。こうした情報で、改善までの見通しは変わります。
患者さんに説明する時も、「膝蓋靭帯炎なので何週間で治ります」と言い切るのは難しいです。
同じ名前でも、状態が違えば経過も違います。
むしろ、最初の評価で何を見て、どのくらい負荷を調整し、どの反応なら次の段階に進むのかを共有した方が現実的です。

まなぶ先生

瀬谷崎
評価で確認したいこと
膝蓋靭帯炎を疑う時は、痛む場所だけでなく、負荷への反応を見ます。
ジャンプ、着地、スクワット、階段、片脚動作、走る動作。
どの動作で痛むのか。
痛みは運動前、運動中、運動後、翌日のどこで強くなるのか。
ここを確認すると、介入の優先順位が見えやすくなります。
- 膝蓋骨下端、膝蓋靭帯中央、脛骨粗面側のどこに痛みがあるか
- 運動後だけ痛むのか、運動中にも痛むのか
- ジャンプや着地、階段、スクワットでどの程度反応するか
- 痛みが翌日まで残るか、すぐ落ち着くか
- 練習量、休息、睡眠、競技スケジュールの余裕があるか
膝蓋靭帯炎の評価は、痛い場所を押して終わりではありません。
痛みの場所、動作、負荷量、経過を合わせて、どこから調整するかを考えます。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、膝蓋靭帯炎をひとつの名前だけで片づけないことを大切にしています。
膝蓋骨側なのか、脛骨粗面側なのか。
痛みは運動後だけなのか、運動中にも出るのか。
負荷を下げるべき段階なのか、少しずつ戻すべき段階なのか。
そこを問診と評価で確認しながら、施術、運動、負荷量の調整を考えます。
痛みの名前だけで判断しない。痛む場所、病態の候補、負荷への反応を合わせて見て、今の状態に合った介入を考えます。
こんな膝の痛みは一度ご相談ください
- ジャンプや着地で膝のお皿の下が痛い
- 運動後だけでなく、運動中にも痛みが出るようになった
- 膝蓋靭帯炎と言われたが、なかなか改善しない
- 膝蓋骨側なのか脛骨粗面側なのか、痛む場所を整理したい
- 競技を続けながら、どこまで負荷を調整すべきか相談したい
急な強い痛み、腫れ、膝が伸ばせない、断裂が疑われる、成長期で骨端部の痛みが強い、日常生活にも支障が大きい場合などは、医療機関での確認が必要になることがあります。
分類は、患者さんを型にはめるためではない
ブラジナ分類も、痛む場所による病態の整理も、患者さんを型にはめるためのものではありません。
今どの段階なのか。
どこが主に反応しているのか。
どのくらい負荷を落とすべきか。
どの反応なら、次の段階へ進めるのか。
それを一緒に考えるための道具です。
膝蓋靭帯炎はよくある症状です。
でも、よくあるからこそ、雑に扱わない。
そこが臨床では大事だと思っています。

瀬谷崎
参考
- Patellar Tendonitis. StatPearls. NCBI Bookshelf.
NCBI Bookshelf - Patellar tendinopathy: an overview of prevalence, risk factors, screening, diagnosis, treatment and prevention.
PMC - Jumper’s Knee: A Comprehensive Review of Diagnosis and Treatment.
PMC - Current Concepts in the Treatment of Patellar Tendinopathy.
PMC













