「ANOテスト」とは何か。効く筋を1つに絞り込む検査の位置付け
ANOアカデミー
確認検査の次にやる、最後の絞り込み
当たり前のことを、当たり前に確かめる。ANOテストは、とんとんで使っている独自の呼び名の検査です。特別な手技ではなく、評価の最後で「どの筋に介入すれば結果が出るか」を1つに絞り込むためのもの。確認検査とセットで使うことで、やる介入とやらない介入が決まります。中身を整理したものがこれまで無かったので、臨床推論のなかでの位置付けと、その限界まで含めてまとめておきます。
ANOテストは、効く筋を見つける検査であり、どこまで良くなるかを測る検査でもあります。確認検査で関節運動を、ANOテストで筋を絞り込む。発想は特別ではなく、症状そのものを指標にした仮説検証です。だからこそ、検査特性と限界まで意識して使いたい検査です。
ANOテストは、とんとんが社内で使っている独自のフレームワークです。名前こそ独自ですが、やっていること自体は、当たり前のことを当たり前にやるだけだと思っています。
ただ、当たり前だからこそ曖昧なまま運用されがちで、中身を言語化したものがありませんでした。この記事では、ANOテストが臨床推論のどこに位置するのか、なぜ役に立つのか、そしてどこで通用しにくいのかまでを整理します。
伊藤聡史
瀬谷崎臨床推論で言えば、これは「仮説検証」
確認検査もANOテストも、特別な発想ではありません。動診で「この関節運動か」「この筋か」という仮説を立て、その仮説を1つだけ操作して、痛みが変わるかで検証する。臨床推論の基本を、症状そのものを指標にしてやっているだけです。
検査の結果は、白黒をつけるものというより、「その筋が要因である確からしさ」を上げ下げする材料です。陽性なら確からしさが上がり、陰性なら下がる。1回で確定させず、確率を更新していく感覚が近いと思います。この考え方はベイズ更新で考える徒手検査や検査前割合から考える臨床推論でも整理しています。
関節運動を絞る
原因と想定する関節運動を徒手的に取り除いて、再現動作をする。痛みが減れば、その関節運動が要因の候補。
筋を絞る
原因と想定する筋を押圧して、再現動作をする。痛みが減れば、その筋が要因であり、介入で効果が出る筋の候補。
「やらない介入」が決まる
この検査のいちばんの価値は、効く筋だけを残して、あとは触らない判断ができることだと思います。患者さんの負担も、施術時間も減ります。
しかも同じ筋でも、特に影響の強い線維によく反応します。「この筋をやる」ではなく「この筋のここをやる」まで決まると、結果が変わってきます。
効く介入を増やすより、効かない介入を減らす。そのための検査だと考えています。
なぜ押圧で痛みが変わるのか(正直、確定はしていない)
ここは正直に書いておきたいところです。押圧で痛みが変わる仕組みは、まだ確定的には説明できていません。
候補はいくつかあります。筋の過剰な張りが関節運動を偏らせていて、押圧で一時的にその影響が減るという機械的な説明。痛みの抑制系が動くという神経生理的な説明。感覚としては運動鍼が一番近いかもしれません。
注意したいのは、動かすこと自体に痛みを減らす働きがあることです。運動誘発性鎮痛(EIH)のように、運動そのもので痛みが下がる現象が知られています。だから「押したら減った、イコールその筋が原因」と即断はできない。そこは慎重でいたいところです。
だからこそ、偽陽性を意識する
押圧や動作の反復そのものに除痛効果があると、特定の筋でなくても痛みが減ってしまう。これが偽陽性につながります。期待や、検査の順序の影響も混じります。
対策はシンプルです。1つの筋で減った減らないを白黒つけるより、複数の筋を比べて相対的な差(程度)を見る。同じ施術者で再現するかも確かめる。検査をどこまで信じるかという視点は徒手検査の感度・特異度を読む前にも参考になります。
伊藤聡史
瀬谷崎通用しにくい場面もある
ANOテストは、機械的な要因で痛みが再現されることを前提にしています。なので、痛みが中枢神経側で増幅されている状態では、反応が読みにくくなります。
中枢性感作や神経障害性疼痛のように、刺激と痛みの対応が崩れている場合、押圧での増減を機械的に解釈しすぎると、見立てを誤ります。再現痛が当てにできる状態かどうかを、先に見ておきたいところです。
予後と治療計画にも使える(ただし決めつけない)
確認検査とANOテストで取れる割合は、見込める改善幅の目安になります。7割取れると分かれば「7割は改善が見込めますが、3割は残るかもしれません」と先に伝えられます。
ただ、改善した理由を一つに決めつけないことも同じくらい大事です。時間経過、安心感、動けたこと自体など、いろいろが重なって良くなることもある。だから「効いた、イコール見立てが完全に正しい」とまでは言い切らない。そのうえで見込みを共有するから、信頼につながると感じています。
ANOテストは「絞り込み」と「見立て」の道具
ANOテストは、効く筋を見つける検査であると同時に、どこまで良くなるかを測る検査でもあります。発想は当たり前でも、検査特性と限界を踏まえて使うと、精度はかなり変わります。
名前の由来は、社内で「あのテスト」と呼んでいたのを、そのままローマ字にしただけです。ただ、名前がついたことで、現場の共通言語になりました。
伊藤聡史













