内側上顆炎(ゴルフ肘)を評価する。回内屈筋群の腱症と尺骨神経・外反不安定の鑑別
セラピスト向け
肘の内側痛も「炎」より腱症で診る
内側上顆炎(ゴルフ肘)は、回内屈筋群(円回内筋・橈側手根屈筋など)の内側上顆起始部に生じる腱症です。外側のテニス肘と同様、炎症より変性が主体で、把持や手関節掌屈・前腕回内で誘発されます。すぐ近くを走る尺骨神経の障害や、内側側副靭帯の不全との鑑別が要点になります。
肘内側の痛みを「炎症」とだけ捉えると消炎に偏ります。臨床では内側上顆炎を、腱症として病態・評価・鑑別・保存療法に分けて見ていきます。外側のテニス肘と機序は共通です。
病態:回内屈筋群起始部の腱症
内側上顆には、円回内筋・橈側手根屈筋を中心とする回内屈筋群が起始します。把持しながら手関節を掌屈・前腕を回内する反復負荷で、起始部にコラーゲンの変性が生じ、痛みをきたします。テニス肘(外側上顆炎)と同様、急性炎症より退行性変化が主体です。
ゴルフや投球、手作業、重い物の把持で誘発され、内側上顆部の圧痛と、抵抗下の手関節掌屈・前腕回内での痛みが特徴です。内側上顆のすぐ後方を尺骨神経が走るため、神経症状の有無を必ず確認します。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎疫学と自然経過(期待値の設定)
外側のテニス肘より頻度は低いものの、把持や前腕回内を反復する人に生じます。多くは保存療法で軽快しますが、テニス肘と同様に時間がかかり、遷延・再発もあります。
「変性主体なので休ませるだけでは進みにくく、適切な負荷をかけ直すことが軸。時間はかかるが多くは改善する」という見通しを共有しておくと、消炎一辺倒や過度な安静を避けられます。
評価:所見の組み合わせで見る
- 圧痛:内側上顆部(回内屈筋群の起始部)の限局した圧痛
- 誘発:抵抗下の手関節掌屈・前腕回内での痛み
- 尺骨神経:薬指・小指のしびれ、肘部のTinel(チネル)、外反肘
- 内側側副靭帯:外反ストレスでの痛み・不安定(投球選手で重要)
- 頚椎・把持様式・道具(クラブ・ラケット)の確認
誘発所見は単独で確定できません。圧痛部位と再現、尺骨神経・靭帯の所見を組み合わせて判断します。
鑑別(外せないもの)
- 肘部管症候群(尺骨神経):薬指・小指のしびれ、運動枝の筋力低下
- 内側側副靭帯不全:外反不安定(投球選手)
- 頚椎神経根症(C8・T1):頚部由来の放散
- 変形性肘関節症、若年では内側上顆の裂離(成長期)
- 回内筋症候群(正中神経)
介入:負荷を設計する
- 相対的安静と負荷管理:把持+掌屈+回内の反復動作の見直し
- 漸進的負荷:手関節屈筋・回内筋のエクササイズ(エキセントリックを含む)
- 運動連鎖:体幹・肩・前腕、道具(クラブ・ラケット)やフォームの調整
- 補助:カウンターフォースブレース、テーピング(一時的除痛)
- 尺骨神経症状や靭帯不全があれば医療機関へつなぐ
テニス肘と同様、休ませるだけでなく適切な負荷をかけ直すことが軸で、物理療法は補助的です。ステロイド注射は短期的に痛みを抑えますが、長期成績や反復のリスクに注意が必要で、しかも内側は尺骨神経が近く慎重を要します。神経症状や外反不安定があれば内側上顆炎と決めつけず医療機関へつなぎます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎「炎」でなく腱症として、神経を確認する
内側上顆炎は、外側のテニス肘と同じく腱症として捉え、適切な負荷で組み立てます。すぐ近くの尺骨神経や内側側副靭帯の鑑別を必ず押さえることが要点です(テニス肘(外側上顆炎)の評価と介入)。





