長年の腰痛、ストレッチしても変わらないのはなぜか。症例をスタッフで検討

10年つづく腰痛、なぜ「股関節の硬さと支える筋力」に着目したのか

1つの症例を、担当した川口流世先生(とんとん整骨院 下板橋店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。10年来の腰痛で、自分でストレッチや筋トレに取り組んでも変化が出にくかった方。腰そのものでなく股関節まわりの硬さと支える筋力に出どころを見て、セルフケアの的と順序を揃え直した判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、10年来の腰痛で来院した70代の男性。ご自身でもストレッチや筋トレに取り組んでいたものの、変化が出にくかった方の症例です。なぜ変わらなかったのか、事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:10年来の腰痛、股関節の硬さと支える筋力に着目
今回検討する症例(担当:川口先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=10年来の腰痛(70代・男性)。背景=10年ほど前から腰痛が続き最近悪化。起床時が最もつらく、朝の洗顔・30分ほどの立位・食後の立ち上がりで痛む。自分でストレッチや筋トレに取り組んでいたが変化が出にくかった。所見=前屈で左腰から脚への痛み、後屈で腰痛、立ち上がりで痛み、ハムストリングス・腸腰筋の硬さ、腹斜筋の働きの低下。とらえ方=太もも裏や股関節まわりの硬さと、腰を支える筋力の低下が腰への負担につながっていたと考えた。対応=ハムストリングス・腸腰筋への手技、鍼(鍼電極療法)、腹斜筋のトレーニング。経過=起床時にわずかな違和感が残る程度まで落ち着き、維持のためのメンテナンスへ移行。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

長年つづく腰痛、原因は腰そのものより股関節まわりの硬さか

主訴は10年来の腰痛。けれど川口先生は、痛む腰そのものより、その負担を生んでいる股関節まわりに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

川口先生川口先生

主訴は10年来の腰痛でした。所見をとると、太もも裏と股関節まわりが硬く、腰を支える筋力も落ちていました。痛む腰そのものより、その負担を生んでいる股関節まわりに出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

10年続いている腰痛で、腰でなく股関節に目を向けたのはなぜですか。

川口先生川口先生

前屈でも後屈でも痛みが出る一方、太もも裏と股関節が硬く、腰を支える筋力が落ちていました。股関節が動かない分を腰で補い続けて、長く負担がたまる、という像が所見と一致したんです。だから断定でなく、まずその仮説で進めました。

ストレッチや筋トレをしても変わらなかったのはなぜか

この方は自分でもケアをしていました。それでも変わらなかった理由を確かめます。

教子先生教子先生

ご自身でストレッチや筋トレに取り組まれていたのに、変化が出にくかったんですよね。そこはどう考えましたか。

川口先生川口先生

やっていたこと自体は悪くないんです。ただ、硬いところと弱いところがずれていると、努力が的を外してしまう。この方は、ゆるめるべき股関節まわりと、使えるようにすべき腰を支える筋肉の組み合わせが合っていませんでした。そこを揃えてから取り組んでもらいました。

瀬谷崎瀬谷崎

自分でやっても変わらないと、つい『もう歳だから』と諦めてしまいがちですよね。でも多くは、的と順序の問題だったりする。どこをゆるめ、どこを使うかが合うと、同じ努力でも変わってくる。そこを揃え直したのは要点だと思います。

年齢に関わらず変えられる、続け方と期待値

長くつきあってきた腰痛で、どこを目指すか。経過とあわせて確かめます。

まなぶ先生まなぶ先生

10年来の腰痛だと、どこまで目指すかも難しいですよね。

川口先生川口先生

硬い股関節まわりをゆるめて鍼も併用し、腰を支える筋肉を使えるようにしました。起床時にわずかな違和感が残る程度まで落ち着いて、今は維持のためのメンテナンスです。完全にゼロというより、つきあいながら困らない状態を保つ、という目標で続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

長くつづいた腰痛は、ゼロを約束するより、負担を下げて維持できる状態を一緒に保っていく。年齢に関わらず、的が合えば変えられる部分はある。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ個人差はあるので、無理のない範囲で続けたいところです。

考察:股関節の硬さと支える筋力からとらえる長年の腰痛

所見という事実(太もも裏と股関節の硬さ・腰を支える筋力の低下・前屈後屈での痛み)と、経過という結果(起床時のわずかな違和感まで落ち着き、維持に移行できたこと)。この両方が、「腰そのものでなく股関節まわりの硬さと支える筋力に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。自分でケアしても変わらないときは、ゆるめる場所と使う筋肉の組み合わせがずれていることがあり、的と順序を揃え直すと変わることがある。年齢に関わらず、決めつけずに所見から出どころを絞る。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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