抱っこや中腰で腰が痛い、立ち仕事の腰痛をどう考えるか。症例をスタッフで検討

保育の腰痛、なぜ「股関節と体幹の連動」に着目したのか

1つの症例を、担当した二宮寿己先生(とんとん整骨院 ときわ台店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。保育の仕事中、園児の抱っこや前かがみで出た腰痛。抱える動作の多い生活で崩れた股関節と体幹の連動に出どころを見た判断について、安静や受診の見極めも含め、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、保育園で働く20代の女性。園児の抱っこや前かがみで腰が痛み、業務にも支障が出て来院した方の症例です。抱える動作の多い生活という背景から見ていきます。

症例カルテ:抱っこや中腰の腰痛、股関節と体幹の連動に着目
今回検討する症例(担当:二宮先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=保育の仕事中に出た腰痛(20代・女性)。背景=保育園勤務。園児の抱っこや前かがみで痛みが出て、業務に集中できず日常にも支障。1週間前から。所見=伸展で激しい痛み、起き上がりや立ち上がりがつらく壁を伝う状態、股関節の伸展制限、股関節の屈筋群のオーバーユース、大殿筋・腹斜筋の出力低下、長時間の抱っこ姿勢。とらえ方=股関節と体幹の連動性の低下が腰へ過剰な負担をかけている状態と考えた。対応=股関節の屈筋群(大腿直筋・大腿筋膜張筋・腸腰筋)への手技、腹斜筋の運動療法、疼痛緩和の電気施術、股関節の運動連鎖の指導。経過=腰の不安感がなくなり、抱っこも問題なくできるように。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

抱っこや中腰で出る腰痛、負担を生むのは股関節と体幹の連動か

主訴は保育の仕事中の腰痛。けれど二宮先生は、抱える動作の多い生活で崩れた連動に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

二宮先生二宮先生

主訴は保育の仕事中に出た腰痛でした。園児の抱っこや前かがみで痛みが出ていて、所見をとると股関節の前側が使われすぎ、お尻やお腹の支えが働きにくくなっていました。抱える動作の多い生活で、股関節と体幹の連動が崩れて腰に負担が集まる、ととらえました。

まなぶ先生まなぶ先生

抱っこや中腰が多い仕事だと、腰そのものに負担がかかっている気がします。それでも股関節と体幹に目を向けたのはなぜですか。

二宮先生二宮先生

抱えるとき、股関節とお尻がうまく使えていれば腰は守られます。でもこの方は股関節の前ばかり使い、お尻とお腹の支えが働いていなかった。その分を腰が肩代わりしていた、という像が所見と一致したんです。

仕事中に急に強くなった腰の痛み、安静と受診の見極め

起き上がりもつらいほどの痛みでした。先に外しておくものを確認します。

教子先生教子先生

起き上がりもつらいほどの痛みですよね。足のしびれや力の入りにくさ、安静にしても引かない痛みといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

二宮先生二宮先生

そこは確認しました。足への神経症状はなく、痛みは動作に伴って変わりました。痛みの強い時期は無理に動かさず、こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

仕事を続けながらの強い腰の痛みは、まず危険なものと、無理をしてよい段階かを見極めたいですよね。痛みが強い時期は守り、落ち着いてから抱える動作に強い体をつくっていく。順序が妥当だと思います。

抱える動作に強い体にする介入と経過

痛みを取るだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

痛みを取るだけでなく、また抱っこできる体まで見ていったんですね。

二宮先生二宮先生

はい。使われすぎていた股関節の前側をゆるめ、電気施術で痛みも抑えました。落ち着いてからお尻とお腹の支えを使えるようにして、抱えるときの股関節の使い方も確認しました。腰の不安がなくなって、抱っこも問題なくできています。

瀬谷崎瀬谷崎

その場の痛みだけでなく、仕事で繰り返す動作に耐えられる体に戻しているのが要点ですね。守る時期と鍛える時期を分けて、抱える動作の質を変える。抱っこできるようになった経過も、その方向を支持しています。ただ仕事で負担が続くので、再発予防は続けたいところです。

考察:股関節と体幹の連動からとらえる抱っこ・中腰の腰痛

所見という事実(股関節の伸展制限・屈筋群のオーバーユース・大殿筋と腹斜筋の弱さ)と、経過という結果(腰の不安感の消失、抱っこができるようになったこと)。この両方が、「抱える動作の多い生活で、股関節と体幹の連動が崩れて腰に負担が集まっていた」という見立ての妥当性を支えています。抱っこや中腰の多い仕事では、強い痛みの時期はまず守り、落ち着いてから股関節とお尻・お腹の支えを整える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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