運動では出ないのに腰が痛い、慢性の腰と尻の張りをどう考えるか。症例をスタッフで検討

長年の腰と尻の張り、なぜ「股関節と殿筋」に着目したのか

1つの症例を、担当した川口流世先生(とんとん整骨院 下板橋店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。あちこち通っても変わらず、立って靴下を履く動作で出る慢性の腰と臀部の張り。運動中は出ないのに日常動作で出る、という特徴から、股関節の動きと殿筋の弱さに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、慢性的な腰と臀部の張りで来院した50代の女性。整形外科や整体に通っても変わらず、ご本人も諦めかけていた方の症例です。運動では出ないのに日常動作で出る、という特徴から見ていきます。

症例カルテ:慢性の腰と臀部の張り、股関節と殿筋に着目
今回検討する症例(担当:川口先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=慢性的な腰と臀部の痛み・張り(50代・女性)。背景=はっきりしたきっかけがなく長く続き、整形外科・整骨院・整体に通っても変化が得られず、本人も諦めていた。前かがみや立って靴下を履く動作、同一姿勢で痛みが出やすい。ジムや水泳など運動中は症状が出ない。所見=右側屈・右回旋・前屈で誘発、股関節の屈曲や内外転の可動域制限、中殿筋・大殿筋の出力低下。とらえ方=股関節の可動域制限と殿筋の弱さが重なり、腰や臀部への慢性的な負荷につながっていたと考えた。対応=股関節の可動域を広げる手技、中殿筋・大殿筋のトレーニング、日常動作の意識づけ。経過=長く続いた張りや痛みが気になりにくい状態へ落ち着き、現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

慢性の腰と臀部の張り、原因は股関節の動きと殿筋の弱さか

主訴は長く続く腰と臀部の張り。けれど川口先生は、張る場所そのものより、股関節とお尻の働きに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

川口先生川口先生

主訴は長く続く腰と臀部の張りでした。所見をとると、股関節の動きが制限され、お尻の筋力も落ちていました。張る場所そのものより、股関節とお尻の働きに出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

はっきりしたきっかけもない慢性の張りで、股関節とお尻に目を向けたのはなぜですか。

川口先生川口先生

前かがみや体をひねる動きで誘発される一方、股関節が動きにくく、お尻が使えていませんでした。股関節とお尻が働かない分を腰と臀部で補い続けて張りが残る、という像が所見と一致したんです。

運動では出ないのに、立って靴下を履くと痛いのはなぜか

この方はジムや水泳では出ないのに、日常の動作で痛む、という特徴がありました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

ジムや水泳では出ないのに、立って靴下を履く動作で痛む、というのが特徴ですよね。そこはどう考えましたか。

川口先生川口先生

運動は、体が構えて準備した状態で動きます。でも立って靴下を履く動作は、片脚で不安定なまま腰を曲げてひねる。股関節が動かないと、その一瞬を腰と臀部だけで支えることになる。だから整った運動では出ず、不意の日常動作で出ていたんです。

瀬谷崎瀬谷崎

『運動はできるのに日常で痛い』と、自分の感覚では原因が分かりにくいですよね。でも、構えた動きと不意の動きは別物。股関節が間に合わない一瞬に負担が集まる。そこを見分けられると、何を変えればいいかが見えてきます。

あちこち通っても変わらなかった負担を、どう変えたか

いくつも通ってきて、本人も諦めかけていた。その経過を確かめます。

まなぶ先生まなぶ先生

整形外科や整体も回ってきて、変わらなかった方なんですよね。

川口先生川口先生

はい。だからこそ、その場をゆるめて終わりにせず、動きにくい股関節を広げて、使えていなかったお尻を働かせることを続けてもらいました。日常動作の意識づけも一緒に。長く続いた張りが気になりにくい状態まで落ち着いてきています。

瀬谷崎瀬谷崎

あちこち通っても変わらないと諦めてしまいがちですが、ゆるめるだけで終わると戻りやすい。動きにくい股関節と、使えていないお尻を揃えて変えると、慢性でも動くことがある。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ慢性に負担がたまってきた方なので、維持は続けたいところです。

考察:股関節の動きと殿筋からとらえる慢性の腰・臀部の張り

所見という事実(股関節の可動域制限・中殿筋と大殿筋の弱さ・前屈やひねりでの誘発)と、経過という結果(長く続いた張りが気になりにくい状態へ落ち着いたこと)。この両方が、「張る場所そのものでなく股関節の動きと殿筋の弱さに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。整った運動では出ず不意の日常動作で出るのは、股関節が間に合わない一瞬に負担が集まるため。ゆるめるだけで終わらせず、動きと支えを揃え直す。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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