朝起きると腰がこわばる、寝起きの腰痛をどう考えるか。症例をスタッフで検討

寝起きの腰のこわばり、なぜ「股関節と背中の動き」に着目したのか

1つの症例を、担当した川口流世先生(とんとん整骨院 下板橋店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。寝起きに出る腰のこわばりと、常にある張り。腰そのものでなく、股関節と背中の動きに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、1年ほど前から腰痛が続く40代の男性。配達業で体を使い、寝起きや前かがみで痛みが出て、常に腰が張っている方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:寝起きの腰のこわばり、股関節と背中の動きに着目
今回検討する症例(担当:川口先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=寝起きや前かがみで出る腰の痛み、常にある腰の張り(40代・男性)。背景=1年ほど前から続き、配達業で体を使う。整体で対処してきたが間隔が空くと出る繰り返し。姿勢の改善と体の癖を知りたいという希望。所見=屈伸動作で腰に痛みと張り、股関節の屈曲伸展の制限、肩甲骨の動きの低下、体幹や臀部の筋出力低下、猫背姿勢。とらえ方=股関節の動きの制限と背中の動きの低下が組み合わさり、腰への慢性的な負荷につながっていたと考えた。対応=股関節と肩甲骨の可動域を広げる手技、胸を張れる姿勢を保つ体幹・股関節のトレーニング、姿勢と動作の意識づけ。経過=腰の張りや痛みを感じづらい状態が続き、現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

寝起きの腰のこわばり、原因は股関節と背中の動きの低下か

主訴は寝起きのこわばりと常にある張り。けれど川口先生は、腰そのものより、股関節と背中の動きに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

川口先生川口先生

主訴は寝起きの腰のこわばりと、常にある張りでした。所見をとると、股関節も背中も動きが落ちていて、腰だけがその分を動いて補っていました。痛む腰そのものより、動かない股関節と背中に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

常に張っていて寝起きにこわばる、というのは腰そのものの問題に思えます。それでも股関節や背中に目を向けたのはなぜですか。

川口先生川口先生

前かがみでも反る動きでも痛みが出る一方、股関節と背中(肩甲骨まわり)の動きが落ちていました。上と下が動かない分を腰が肩代わりして動き続け、張りがたまる、という像が所見と一致したんです。だから断定でなく、まずその仮説で進めました。

なぜ朝・寝起きに腰がこわばるのか

この方は、とくに朝・寝起きに強く出る、という特徴がありました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

寝起きに強いというのが特徴ですよね。安静にしても引かない強い痛みや、足のしびれ、力の入りにくさといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

川口先生川口先生

そこは確認しました。足への神経症状や安静時の強い痛みはなく、痛みは動作に伴って変わりました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。日中動くとほぐれてくる、という出かたでもありました。

瀬谷崎瀬谷崎

動いていない夜のあいだは、硬い股関節と背中の分を腰が肩代わりできず、朝にこわばりとして出やすいんですよね。日中動くと和らぐ、という出かたとも合っています。危険なものを外したうえで、動きの低下に絞る。順序が妥当だと思います。

常にある張りを繰り返さないための介入と経過

整体でその場をゆるめても繰り返してきた、という背景がありました。

まなぶ先生まなぶ先生

整体で対処しても、間隔が空くと出ていた方なんですよね。

川口先生川口先生

はい。だからゆるめて終わりにせず、股関節と背中の動きを引き出して、胸を張れる姿勢を保つ体幹とお尻を使えるようにしました。本人も癖を知りたいという希望だったので、姿勢と動作の意識づけも一緒に。腰の張りを感じづらい状態が続いています。

瀬谷崎瀬谷崎

その場をゆるめるだけだと、動きの低下が戻ればまた腰が肩代わりする。動きと支えを変えて、自分で気づける形にしているのが要点ですね。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ体を使う仕事なので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:股関節と背中の動きからとらえる寝起きの腰のこわばり

所見という事実(股関節と肩甲骨の動きの低下・体幹や臀部の弱さ・屈伸での痛みと張り)と、経過という結果(腰の張りや痛みを感じづらい状態が続いていること)。この両方が、「腰そのものでなく股関節と背中の動きに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。朝にこわばるのは、動かない上と下の分を腰が肩代わりするため。その場をゆるめるだけで終わらせず、動きと支えを変える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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