長く運転すると腰が痛い、ドライバーの腰痛をどう考えるか。症例をスタッフで検討

運転の多い仕事の腰痛、なぜ「股関節の動き」に着目したのか

1つの症例を、担当した二宮寿己先生(とんとん整骨院 ときわ台店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。運転の多い仕事で出る左の腰の痛み。腰そのものでなく、股関節の動きと体幹の連動に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、タクシーの仕事をする70代の男性。会計のひねる動作や荷物の積み下ろし、歩行で腰が痛む方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:運転の多い仕事の腰痛、股関節の動きに着目
今回検討する症例(担当:二宮先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=左腰の痛み(70代・男性)。背景=タクシーの仕事。会計のひねる動作や荷物の積み下ろし、歩行で痛みが出て業務や日常に支障。所見=伸展と回旋で激しい痛み、側屈で痛み、歩行時痛、股関節の伸展・回旋の制限、股関節の屈筋群や内転筋群のオーバーユース、大殿筋・腹斜筋の筋出力低下、長時間の座位姿勢。とらえ方=股関節と体幹の連動性の低下が腰へ過剰な負担をかけていたと考えた。対応=股関節の屈筋群(大腿直筋・大腿筋膜張筋・腸腰筋・内転筋・梨状筋)への手技、腹斜筋の運動療法、疼痛緩和の電気施術、股関節の運動連鎖の指導。経過=日常や仕事中の腰の不安感が落ち着いてきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

運転の多い仕事の腰痛、原因は股関節の動きと体幹の連動か

主訴は運転の多い仕事で出る腰の痛み。けれど二宮先生は、腰そのものより、股関節の動きと体幹の連動に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

二宮先生二宮先生

主訴は左腰の痛みでした。長く座って運転し、会計でひねり、荷物を積み下ろす仕事です。所見をとると股関節の動きが落ちて前側ばかり使われ、お尻やお腹の支えが働いていませんでした。腰そのものより、股関節の動きと体幹の連動に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

長く座って運転する仕事だと、腰そのものに負担がかかっている気がします。それでも股関節に目を向けたのはなぜですか。

二宮先生二宮先生

長く座ると股関節は縮んだまま固まりやすく、立つ・ひねる・運ぶ動きで足りない分を腰が補います。伸展と回旋で強く痛んだのも、股関節が伸びず回らない分を腰で代償していた、という像と一致したんです。

座って運転するだけで、なぜ腰に負担がたまるのか

この方は長く座る仕事に、ひねる・運ぶ動作が重なっていました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

長く座る仕事ですよね。安静にしても引かない痛みや、足のしびれ、力の入りにくさといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

二宮先生二宮先生

そこは確認しました。足への神経症状や安静時の強い痛みはなく、痛みはひねる・反る・歩く動作で変わりました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

長く座ると股関節が縮んで固まり、そこへ会計のひねりや荷物の積み下ろしが重なると、股関節の足りない分を腰が引き受ける。座位そのものより、固まった股関節と動作の組み合わせなんですよね。危険なものを外したうえで、そこに絞る。順序が妥当だと思います。

運転と動作の負担を減らす介入と経過

腰を直接ゆるめるだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

腰そのものでなく、股関節の動きから変えていったんですね。

二宮先生二宮先生

はい。縮んで固まった股関節の前側や内ももをゆるめ、電気施術で痛みも抑えつつ、お腹やお尻の支えを使えるようにしました。ひねる・運ぶときの股関節の使い方も確認しています。仕事中の腰の不安感が落ち着いてきました。長く座る仕事なので、股関節の柔軟性づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

座って固まる股関節を動かし、ひねり・運びの負担を腰でなく股関節と体幹で受けられるようにしているのが要点ですね。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ仕事の姿勢が続くので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:股関節の動きと体幹の連動からとらえるドライバーの腰痛

所見という事実(股関節の伸展・回旋の制限・屈筋群のオーバーユース・大殿筋と腹斜筋の弱さ)と、経過という結果(仕事中や日常の腰の不安感が落ち着いたこと)。この両方が、「腰そのものでなく股関節の動きと体幹の連動に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。長く座って固まった股関節に、ひねる・運ぶ動作が重なると腰が引き受ける。危険なものを外したうえで、固まりと動作の組み合わせから出どころを絞る。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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