足根骨癒合症のダンサーへの足部内在筋アプローチ。動きにくい足に感覚入力から働きかける
セラピスト向け
構造は変えにくくても、足の感じ方は変えられる
骨どうしがつながって関節が動きにくい足では、動かして緩める手技が使いにくくなります。構造として動きが出にくい足に、感覚受容器への入力で何ができるか。ダンスを続けている方の足を題材に、瀬谷崎が共有した見立てを紹介します。
整形外科で足根骨癒合症(そっこんこつゆごうしょう)と診断された、ダンスを続けている方の足の相談です。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に挙がったものをもとにしています。普段は痛みがなく、ダンスをした後にだけ痛む。外脛骨が痛む位置より少し後ろ、内果の下あたりを押すと強く痛むという訴えでした。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎稀な疾患であることと、保存療法の位置づけ
足根骨癒合症は、足根骨どうしが骨や軟骨、線維でつながって、本来動くはずの関節の動きが制限される状態です。数としては稀で、全癒合症のなかでも発症頻度は1%以下とされ、手術が選ばれる例も少なくありません。足の痛みの相談で頻繁に出会うものではありません。
保存療法としては、運動の制限、消炎鎮痛剤(しょうえんちんつうざい)の使用、足底板(インソール)による支持が一般的な位置づけです。今回の方も痛みが出たあとは激しいダンスを控えていましたが、しばらくして踊るとまた痛んだという経過でした。
足根骨癒合症の保存療法では、運動の制限・消炎鎮痛剤・足底板(インソール)による支持が一般的に挙がります。構造を変えるのではなく、痛む動きや量を抑えながら、足の使い方に働きかけられる余地を探る前提で扱います。
足の状態と、荷重の傾向を見る
今回の足は、三つのアーチがそれほど高いわけではなく、やや回内足の傾向がありました。小趾外転筋(しょうしがいてんきん)が働きにくく、足の指を開くのが難しい状態です。まず施術者が指を開いて保ってもらう、逆に指で挟む力を入れてもらうといったやりとりから、力の入れ方の感覚を戻していきます。
スクワット姿勢を取ると足が三日月のような形になり、小趾側に体重が乗って内側が浮きます。一方、スピードのあるダンスでは逆に内側のアーチが潰れて負担がかかり、そこで痛みが出るようでした。同じ足でも、動作の速さや場面で荷重のかかり方が入れ替わる点を押さえておきます。
何をすると痛み、何をすると楽になるかを確認検査的に見る
普段は痛みがなく、院内では誘発しにくいこともあります。荷重位でのレッグエクステンションや片足での動作、底屈・背屈を他動的に試しても痛みが出ないことがあり、その場合は外から誘導を加えて、どの動きで痛みが動くのかを見ていきます。
- 荷重位で誘発を試す体重をかけた姿勢で、どの方向の動きや角度で痛みが出るのかを見ます。ダンスに近い場面も含めて確認します。
- 誘導を加える荷重時に足部を外から押さえ込む、あるいは縦アーチの形成を促すなど誘導を加え、痛みが誘発されるか減弱するかを見ます。
- 増減で手を絞る痛みが増す誘導と和らぐ誘導の手がかりから、どの仕組みが痛みに関わっていそうかを見立て、介入の方向を絞ります。
感覚受容器への入力で、足部内在筋を賦活する
関節の動きが構造的に出にくいぶん、動かして緩める手技の代わりに、足部内在筋の賦活と、足の感覚受容器への入力を手がかりに考えます。院内での介入と、ご自宅で続けてもらうホームケアを組み合わせます。
- 母趾・小趾・踵骨(しょうこつ)の下にタオルを敷き、そこの感覚を意識させながらスクワットやランジを行う
- かかとから土踏まずへ短めのテーピングを斜めに貼り、かかとの感覚をあえて鈍くして前足部を使わせる
- 局所振動(マッサージガンや電動マッサージ機)で感覚受容器の賦活を狙う
- 家では裸足で過ごし、前足部に荷重がかかる意識を保つホームケア
テーピングは検査的な介入として使う
テーピングは、貼って終わりではなく、貼ったことで痛みや荷重がどう変わるかを見る検査的な介入として使えます。かかとから土踏まずへ短めに斜めに貼り、かかとの感覚を鈍くすると、感覚受容器が多い前足部に体重がかかりやすくなります。張力はかけず、ただ貼るだけで感覚の重心を前へ動かす狙いです。
距骨(きょこつ)の内側から一本貼って回内の落ち込みを支える、足底に貼って足趾の屈筋を意識させるなど、いくつか試して、痛みや荷重が変わったものを手がかりにします。足底のテーピングは合わない場合もあるので、検査的に確かめながら使います。扁平足・回内足の支える力への働きかけや、有痛性外脛骨と後脛骨筋腱の関係とも、支持と感覚という点で重なります。
振動と裸足で、感覚入力を増やすホームケア
振動刺激は、感覚受容器の賦活を狙って使います。局所への振動には、マッサージガンのような縦揺れと、電動マッサージ機のような横揺れがあり、期待できる作用が異なります。使える機器に合わせて、前足部を中心に感覚を高めていきます。
靴下や靴を履くと足裏の感覚は鈍りやすいので、家では裸足で過ごし、前足部に荷重がかかる意識を保ってもらいます。ダンスも、裸足や素足で靴を履ける場面があれば試してみる。日常のなかで感覚入力の頻度を増やす組み立てです。
構造は変えられなくても、感覚からできることはある
足根骨癒合症のように構造として動きが出にくい足でも、何をすると痛くて何をすると楽になるのかを確認検査的に確かめ、足部内在筋の賦活と感覚受容器への入力から働きかける余地は残っています。タオルやテーピング、振動、裸足での感覚入力を試しながら、その方の足とダンスに合う手がかりを探していく組み立てです。
瀬谷崎





