肉離れの血腫が1ヶ月残っている。散らすか、待つか、経過判断の目安
セラピスト向け
血腫は敵とは限らない。吸収の時間感覚と6週間という区切り
バスケットボール選手が大腿直筋の肉離れを起こし、痛みは順調に引いたのに血腫だけが1ヶ月近く残っている。散らしにいくべきか、待つべきか。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで、スポーツ現場のトレーナーから実際に挙がった相談をもとに、血腫の経過判断を考えます。
相談のケースを先に共有します。後ろに下がりながらシュートを打つ動作で、大腿直筋にエキセントリック収縮(伸張性収縮)が入った瞬間にブチッという断裂感があり、受傷しました。状況は次のとおりです。
- 診断は2度の肉離れ。受傷2週後のエコー(超音波画像検査)で血腫(けっしゅ)の形成を確認
- 大腿直筋に力を入れてもらうと、ピンポン玉ほどの膨らみが表面に浮き出てくる
- 受傷1週後の試合で、同じ大腿の別の場所に打撲(いわゆるチャーリーホース)が重なった
- 痛みはほぼ消失し、ランニングやダッシュでも痛みは出ていない
- 血腫だけが1ヶ月近く残り、ドクターからは「血腫を散らしてあげないと」と言われている
経過そのものは悪くありません。残っているのは血腫だけ。担当トレーナーは、血腫の散らし方やアプローチ方法を探すべきか迷っていました。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎血腫の吸収には幅がある。1ヶ月は想定内かもしれない
検討で挙がった目安として、血腫はだいたい1ヶ月ほどで吸収されていくことが多い一方、ものによっては2ヶ月ほどかかる場合もあります。今回は2度の肉離れ、つまり部分断裂を伴う損傷です。この程度の損傷であれば、1ヶ月で引かない血腫があってもおかしくない、という見方が出ていました。
だとすれば、1ヶ月という経過だけを理由に慌てる必要はなく、「焦らずもう少し様子を見ましょう」がまず選択肢になります。なお、肉離れそのものの重症度分類や急性期対応は肉離れの評価の記事で扱っているので、初期評価の考え方はそちらをどうぞ。
待てるかどうかを分けるのは、初期対応の中身
ただし「待っていい」には条件があります。検討の場で確認されたのは、受傷からの1ヶ月間にどんな対応をしてきたか、でした。挙がった標準的な流れは次のとおりです。
- 固定・圧迫受傷直後は患部を固定し、圧迫をかけて血腫の拡大を抑える。
- 早期からの弱い抵抗運動受傷3〜5日ごろから、弱い負荷の抵抗運動を始めていく。
- 少しずつストレッチ抵抗運動とあわせて、防御反応を見ながら伸張を加えていく。
今回のケースでは、固定と圧迫は実施済み。ストレッチも腸腰筋や大腿直筋を対象に続けられていました。抵抗運動だけは、伸張時に防御的な収縮が出ていたため見送られていましたが、受傷1週間過ぎからは、5秒間収縮させて脱力し、最大伸張位まで持っていくストレッチが行われていました。おおむね妥当な対応と言える経過です。
逆に、固定も圧迫もせず普通に動かし続けた結果として血腫が残っているなら、その時点で対応から考え直す必要があります。適切な対応の上で残っている血腫と、放置の末に残っている血腫は、同じ1ヶ月でも意味が違うという判断軸でした。
必要だから残っている、という見方もある
今回の検討で印象的だったのは、血腫を敵と決めつけない見方です。適切な対応をしてきて、それでもまだ血が残っているということは、損傷組織の回復に必要だから残っているのではないか。その可能性も十分ある、という意見が出ました。
教子先生
瀬谷崎一般的な医学では、あまりにも血腫が残る場合に注射で抜く処置がとられることもあります。ただそれは医科の判断領域です。現場のセラピストが焦って散らすためのアプローチを探す段階かどうかは、分けて考えたいところです。
ここで挙げた時間の目安や「必要だから残っている」という見方は、検討の場で経験をもとに挙がったものです。エコー画像を直接見たわけではないため、受傷初日にできたしこり様のものが断裂端によるものかという質問にも、「見ていないので分からない」と率直な回答がつきました。断定ではない前提で受け取ってください。
目安は6週間。超えて残る場合は要注意
では、いつまで待つのか。検討で挙がった区切りは6週間でした。
初期対応が適切だったなら、まず6週間は通常どおり経過観察でよい。
6週間を超えて血腫が残る場合は残りすぎと考え、医科への相談を検討する。
数字はいずれも検討で挙がった目安であり、絶対的な基準ではない。
相談したトレーナーも、血腫が長引いた場合に起こりうる骨化性筋炎の可能性を自分で調べていました。レントゲン(単純エックス線検査)はまだ撮っていない段階でしたが、6週間を超えても血腫が残るようなら、こうした確認も含めて医科に送る流れが自然です。
ちなみにこの選手は、受傷から1週間ほどで試合に出ており、その試合では別の部位に打撲も負っていました。復帰を急ぎやすい環境だからこそ、待つ判断の根拠を関係者と共有しておく価値があります。良くなったり戻ったりする経過の受け止め方は別の記事でも扱っています。
散らし方より、待てる条件がそろっているか
血腫が1ヶ月残っていると、現場は散らし方を探したくなります。ただ今回の検討で確かめられたのは、吸収には2ヶ月かかる場合もあること、初期対応が適切なら待てること、そして6週間という区切りでした。焦って介入を足す前に、待てる条件がそろっているかを確かめる。その順番のほうが、結果的に回復の近道になるのかもしれません。
瀬谷崎





