脛骨腓骨骨折の術後リハビリ。パテラセッティング(クアドセッティング)の強度を上げる方法

内側広筋は収縮の絶対量よりバランス。電気刺激で負荷を高める

脛骨(けいこつ・すねの内側の骨)と腓骨(ひこつ・すねの外側の骨)の骨折から手術を経て競技に復帰した選手で、内側広筋(ないそくこうきん・太ももの内側の筋肉)の収縮が戻り切らないことがあります。パテラセッティング(クアドセッティング)では強度が足りなくなった段階から、負荷をどう高めていくかを取り上げます。

この記事について

このコラムでは、当院のカンファレンスで検討された相談をもとに、術後に内側広筋の収縮が落ちた選手のトレーニングを進める考え方を取り上げています。外側広筋(がいそくこうきん)との収縮バランスの見方から、電気刺激やEMS(イーエムエス・電気的筋刺激)を併用して強度を上げる方法まで触れています。

著者アイコン 髙原佑輔

物理療法の機器は、筋力トレーニングの置き換えではなく、狙った筋の収縮を助ける道具だと考えています。どの筋を、どんな条件で働かせたいのかを先に決めると、機器の使いどころが自然に決まります。

結論:内側広筋のトレーニングで大事なのは収縮の絶対量ではなく、外側広筋との収縮バランスです。収縮の速さや遅れが主な問題なら、パテラセッティングの継続で対応できます。強度を上げたいときは、膝屈曲位でハムストリングに電気刺激を併用する方法や、EMSを付けたままのパテラセッティングが選択肢になります。内側広筋が働いていない状態での高強度スクワット系種目は、内側広筋のトレーニングとしては推奨されません。

術後復帰した選手の内側広筋が戻り切らない

検討の題材になったのは、脛骨と腓骨の骨折で手術を受け、練習に完全復帰した選手の相談です。競技には戻れたものの、手術した側の内側広筋の筋力が戻り切っていませんでした。左右を比べると、収縮そのものは入ってきているのに、反対側よりわずかに遅い、という状態です。

内側広筋は、太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)のうち、内側に位置する筋です。膝蓋骨(しつがいこつ・膝のお皿の骨)を内側から支える役割があり、収縮が落ちると膝蓋骨のラインがやや外側寄りにずれて見えることがあります。今回の相談でも、膝蓋骨のラインが外側偏位気味である、という観察が共有されていました。

この段階の相談は、次のような内容でした。

  • パテラセッティングでは、強度として足りなくなってきた
  • フルスクワットなど負荷の高い種目は取り入れている
  • 内側広筋にフォーカスしたエクササイズを知りたい

パテラセッティングとは、膝を伸ばした姿勢で膝の下に置いたタオルなどを押しつぶすように大腿四頭筋へ力を入れる、術後リハビリの基本種目です。クアドセッティングとも呼ばれます。負荷が軽いぶん、回復が進むと物足りなくなる、というのがこの相談の出発点です。

絶対量ではなく、外側広筋との収縮バランスを見る

検討の場でまず示されたのは、内側広筋のトレーニングで見るべき指標です。大事なのは、内側広筋がどれだけ強く収縮したかという絶対量ではなく、外側広筋との収縮バランスだ、という考え方でした。

検討では、数字の例えでこう説明されています。内側広筋が100活動していても、外側広筋が200活動していたら、これは良い状態とはいえません。逆に、内側広筋の収縮が50程度でも、外側広筋の活動が5や10といったわずかな量なら、内側広筋のトレーニングとしてはこちらのほうが望ましい、という比べ方です。

判断の目安

フルに収縮できたパテラセッティングでも、外側広筋がそれ以上に強く働いていたら、内側広筋の練習としては意味が薄くなります。収縮の量そのものより、外側広筋を働かせずに内側広筋を働かせられているか、という比率で種目を評価します。

この視点に立つと、パテラセッティングが物足りないかどうかの判断も変わります。収縮の絶対量が小さいこと自体は、それだけでは問題になりません。

速さや遅れの問題なら、パテラセッティングの継続でよい

今回の選手は、収縮が入らないのではなく、反対側と比べて収縮がわずかに遅い、という程度でした。検討では、そのレベルであればパテラセッティングの継続でよい、という見解が示されています。収縮の速度やタイミングの遅れが主な問題なら、種目を大きく変える必要はなく、程度の問題として扱えるということです。

強い負荷をかけることと、収縮の立ち上がりを作り直すことは、分けて考えたほうが方針を選びやすくなります。

強度を上げる方法。膝屈曲位とハムストリングへの電気刺激

そのうえで、パテラセッティングの強度を上げたい場合によく用いられる方法として、物理療法の機器を使う手順が共有されました。膝を曲げた位置で行い、ハムストリング(太ももの裏の筋肉)に電気刺激を併用する方法です。

  1. 膝を屈曲位にする膝を伸ばした通常の姿勢ではなく、膝を曲げた位置でセッティングを行います。
  2. ハムストリングに電気刺激をかけ続ける電気刺激でハムストリングを収縮させた状態に保ちます。すると、膝を曲げる方向のトルク(回転力)が生まれます。
  3. その状態で膝を伸ばす方向に力を入れるハムストリングの屈曲トルクが抵抗になるため、膝を伸ばそうとする大腿四頭筋側の負荷が高まり、セッティングの強度が上がります。

もうひとつの選択肢が、内側広筋にEMSを貼った状態でパテラセッティングを行う方法です。検討では、ある程度の筋収縮が出せる出力であればそれでよく、必ずしも強い刺激である必要はない、とされています。収縮のスイッチを入れ直したい今回のような狙いには、この組み合わせも選択肢になる、という位置づけでした。

高強度スクワットは内側広筋の練習にはなりにくい

一方で、内側広筋が働いていない状態のまま、大腿四頭筋全体を使う高強度のスクワット系種目を行うことは、内側広筋のトレーニングとしてはおそらく推奨されない、という見解も示されました。収縮バランスの考え方に照らすと、外側広筋が優位なまま負荷だけを上げる形になりやすいためです。

スクワット系種目そのものが悪いわけではありません。内側広筋を狙う目的に対しては順番が違う、という趣旨です。バランスが確認できてから負荷の高い種目へ進む、という流れで考えます。

術後の負荷設定は主治医との連携を前提に

骨折の手術後にどこまで負荷をかけてよいかは、骨癒合の状態など、画像を含めた医師の判断が前提になります。この記事で挙げた方法は、術後の経過が順調で競技復帰が許可されている段階の話です。膝に痛みが出る、腫れが引かないといった変化があるときは、自己判断で負荷を上げず、手術を受けた医療機関に相談してください。

著者アイコン 髙原佑輔

強度を上げる方法はいくつもありますが、その前に、何のバランスを直したいのかを確認しておくと迷いません。内側広筋と外側広筋の比率という物差しを持っておくと、種目選びも機器の使い方も判断しやすくなります。

髙原佑輔
株式会社とんとん/とんとん整骨院。マネージャー・物理療法指導責任者。柔道整復師。

2014年より整形外科に勤務し、骨折・捻挫など多数の外傷症例を経験。勤務先で出会った患者の「私、ここの病院に30年通ってるの」という一言をきっかけに、「症状を抑え続ける」のではなく「通院に頼らない身体づくり」を追求するようになる。その後、大手整骨院グループの技術統括責任者を経て現職。現在は、とんとん整骨院グループを統括し、物理療法の品質管理・スタッフ指導を担うほか、noteでは物理療法やテーピングに関する技術情報の発信にも取り組んでいる。

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