初回の説明が長くなる治療家へ。情報量とアドヒアランス、説明を3つに仕分ける実務
セラピスト向け
コップの水は、少しずつ注ぐから満たせる
初回の状態説明だけで5分以上。来院から会計までは80分近くかかり、施術そのものは20〜30分。丁寧に伝えているつもりが、説明が施術より場所を取ってしまう。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった相談をもとに、説明の量と伝わり方の関係を考えます。
相談したのは、初回の説明が長くなりがちだという治療家です。体の状態の説明だけで5分以上かかることがあり、来院から帰るまでは80分ほど。施術は20〜30分なので、説明を含むそれ以外の時間がかなりの割合を占めています。
丁寧に説明しようとする姿勢そのものは誠実です。ただ検討では、その丁寧さが患者さんの中にどれだけ残っているか、という別の観点が示されました。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎説明が増えるほど、患者さんに残る量は減っていく
問診で患者さんに与える情報量が増えたり、話の複雑性が増したりすると、理解の程度やアドヒアランス(説明された内容を受け入れて治療を続け、実行する度合い)の低下を招く可能性がある。この点は検討の場でも触れられたとおり、複数の論文で指摘されています。
心当たりのある場面が、検討の中でいくつも挙がりました。
- 聞かれてもいないのに、膝の変形について「変形は関係ないですよ」と自分から切り出してしまう
- ヘルニアと腰痛の関係の話を3分ほど続けてしまい、患者さんが「わかったから施術してほしい」という空気になる
- 同じ内容を、言い方を変えて何度も繰り返してしまう
変形について聞かれたときも、「変形は痛みとあまり相関しないと言われています」くらいの一言で終えたいところです。聞かれてから答えるならよいのですが、こちらから話してしまう。検討で繰り返し出たのは、説明したくなるのを我慢するのが案外重要だ、という点でした。
説明する内容を、事前に3つへ仕分けておく
では、どう削るか。検討で共有されたのは、説明の内容を事前に3つへ仕分けておく方法です。スタッフへの指導でも、この「小分け」を勧めているとのことでした。
- 絶対に説明すべきこと初回にその場で必ず伝える内容。事前に絞り込んでおけば、初回の説明はこれだけで済みます。
- 聞かれたら答えれば十分なこと患者さんから質問が出たときにだけ答える内容。聞いてきたのだから伝えてよい、という線引きです。
- 初回はあえて説明せず、施術中に話すこと優先順位の低い内容は「施術中に話そう」と決めておき、初回の説明からは外します。
①に残す説明も、長い講義にする必要はありません。「デスクワークでずっと座っているので、お尻の筋肉が弱って、代わりにこちらを使いすぎているんですよ」「外回りで歩くときにこの筋肉をずっと使っていて、固まっているんですよ」。患者さんの日常生活に結びつく一言を入れた、この程度のシンプルな説明で十分という感覚が共有されました。ヘルニアなど病態の説明を先に置く場合も、30〜40秒ほどの簡単なもので足りる、という話でした。
教子先生
まなぶ先生
瀬谷崎これは伝える順番と量の設計の話で、安全にかかわる情報を削る話ではありません。危険な病態が疑われるときの説明と医療機関への受診のご案内は、①の筆頭に置いておく必要があります。
コップに水を注ぐように、少しずつ伝える
検討の中で共有されたイメージが印象的でした。コップに勢いよく大量の水を注ぐと、満杯にはならず半分ほどしか残らない。少しずつ注ぎ足していくと、ちょうど満たせる。説明もそれと同じだ、というたとえです。
初回に全部を注ぎ込まず、施術中の会話や2回目以降の来院時に少しずつ注ぎ足していく。③に仕分けた内容は、まさにこの注ぎ足しの時間に伝えるものです。伝える総量を減らすのではなく、一度に注ぐ量を減らして定着させる、という発想の転換になります。
自分の説明を文字起こしして、無駄を削る
仕分けの精度を上げる練習として、自分が話している内容を録音して文字起こしする方法が共有されました。トレーニングとしてしばらく続けた経験のある参加者いわく、文字にしてみると驚くほど無駄なことを喋っていて、同じことを5回くらい言っていると気づくそうです。
そこをそぎ落としていくと、説明がぐっと引き締まる。相談した治療家も、まずマニュアルを作り込むより先に、喋る練習から試してみるという方針になりました。
まなぶ先生
瀬谷崎
瀬谷崎





