「痛くない範囲で動かして」が慢性痛を長引かせることがある

その「痛くない範囲で」が、回復の邪魔をしているかもしれません

痛みを無視して動かせばいい、という話ではありません。ただし、痛みを全部「危険」と決めつけて避け続けると、かえって身体の回復を遅らせることがあります。

この記事について

この記事は、瀬谷崎のYouTube動画をもとに、痛みと運動指導の考え方をコラムとして整理したものです。症状の状態によって適切な対応は変わります。強い痛みやしびれ、外傷、発熱、脱力などがある場合は、医療機関での確認が必要になることがあります。

結論:「痛いから全部ダメ」ではありません。大切なのは、痛みの強さ・出方・残り方を見て、動かしていい範囲を判断することです。

「痛くない範囲で動かしてください」

この言葉、整骨院や整体、リハビリ、運動指導の現場でよく使われます。たぶん、かなり多くの施術者が何気なく言っています。

もちろん、悪気があるわけではありません。痛みを強めたくない。無理をさせたくない。患者さんを守りたい。そういう意図で使われている言葉です。

ただ、ここが難しいところです。痛みを避けることが、いつも患者さんのためになるとは限りません。

「痛い=悪い」と決めつけると、動けなくなる

多くの方は、痛みが出ると「悪くなったのではないか」と不安になります。

そして施術者からも「痛くない範囲で」と言われると、患者さんはさらに慎重になります。少しでも痛い動きは避ける。怖いから動かさない。結果として、身体の使い方がどんどん小さくなっていきます。

少し辛口に言うと、「痛くない範囲で」とだけ伝えるのは、説明として雑です。どの痛みは避けるべきで、どの痛みは過度に怖がらなくていいのか。そこまで伝えて初めて、患者さんのための指導になります。

痛みが出たら何でも中止。痛くない動きだけを選ぶ。これを続けると、患部をかばう動きが癖になります。

一時的には楽でも、長い目で見ると「動かしにくい身体」を作ってしまうことがあります。

見るべきは「痛いかどうか」だけではない

ここで大切なのが、イリタビリティという考え方です。日本語では易刺激性と訳されることがありますが、患者さん向けには「痛みの過敏性」と考えると分かりやすいと思います。

痛みを見るときは、単に「痛い・痛くない」ではなく、次の3つを確認します。

どれくらい動かすと痛いか 少し動かしただけで痛いのか、大きく動かした時だけ痛いのかを見ます。
どれくらい強く痛いか 軽い違和感なのか、鋭い痛みなのか、我慢できない痛みなのかを確認します。
どれくらい痛みが残るか 動きをやめたらすぐ引くのか、しばらく残るのか、翌日まで悪化するのかを見ます。

大事なのは、痛みが出た瞬間だけを見ることではありません。その痛みが強くなるのか、すぐ戻るのか、後に残るのか。ここで判断が変わります。

避けるべき痛みと、過度に怖がらなくていい痛み

イリタビリティが高い状態では、無理に動かすべきではありません。

たとえば、急性の外傷直後や、炎症が強い時期、少し動かしただけで強い痛みが出て、その痛みが長く残るような状態です。この場合は、痛みを避ける判断が必要になります。

避けた方がいい痛み

少し動かしただけで強く痛む、痛みがどんどん増える、動作後もしばらく痛みが残る、翌日に明らかに悪化する。このような場合は、無理に動かすのではなく、状態を確認しながら進める必要があります。

一方で、多少痛みが出ても、動きを戻せばすぐ落ち着く。痛みが強くならない。翌日に悪化しない。こういう場合は、必ずしも「悪化している痛み」とは限りません。

過度に怖がらなくていい痛み

少し違和感や軽い痛みはあるが、動きをやめるとすぐ落ち着く。後に残らない。翌日も悪化しない。この場合は、身体を動かす経験を少しずつ積んだ方が良いケースもあります。

もちろん、これは自己判断で無理をしていいという意味ではありません。重要なのは、痛みの出方を見ながら、必要以上に動きを怖がらないことです。

動かさないことを、身体が覚えてしまう

痛みを避け続けると、身体は「その部位を使わない動き」を覚えていきます。

腰が痛いから腰を全く動かさない。肩が痛いから肩を使わない。膝が痛いから膝をかばう。最初は痛みを避けるための工夫でも、それが続くと代償動作として定着してしまいます。

こうした状態は、学習性不使用と呼ばれることがあります。簡単に言えば、身体が「使わないこと」を学習してしまう状態です。

痛みを避けること自体は悪ではありません。ただし、避け続けることで「使えない身体」を作ってしまうなら、それは回復から遠ざかっています。

身体の部位は、使うことで脳の中でも認識されやすくなります。逆に、使わない状態が長く続くと、その部位をうまく動かす感覚が鈍くなることがあります。

痛みが長引く人ほど、「どこに力を入れたらいいか分からない」「どう動かせばいいか分からない」という状態になっていることがあります。

痛みは、組織が壊れているサインとは限らない

ここはとても大切です。

昔から、「痛みがある=どこかが傷ついている」と考えられがちです。しかし、現在の痛みの考え方では、痛みはもっと複雑なものとして捉えられています。

国際疼痛学会(IASP)は、2020年に痛みの定義を改定し、痛みを「実際の組織損傷、または組織損傷が起こりうる状態に関連する、あるいはそれに似た不快な感覚・情動体験」としています。

つまり、痛みがあるからといって、必ずしもその瞬間に組織がさらに傷ついているとは限りません。

ここを誤解しない

痛みを軽く見ていい、という意味ではありません。ただ、「痛い=必ず悪化」と決めつけると、必要な動きまで避けてしまいます。痛みの意味を丁寧に見極めることが重要です。

患者さんに伝える言葉を、もう少し丁寧にする

では、施術者はどう伝えるべきか。

ただ「痛くない範囲で」と言うのではなく、もう少し具体的に伝える必要があります。

声かけの例

動かした時に少し痛みが出るかもしれません。ただ、その痛みがどんどん強くならず、動きをやめたら落ち着き、帰宅後や翌日に悪化しないようであれば、身体が悪くなっているサインとは限りません。不安になりすぎず、少しずつ動かしていきましょう。

この説明があるだけで、患者さんの受け取り方は変わります。

痛みが出た瞬間に「また悪くした」と思うのではなく、「これは様子を見ていい痛みなのか、避けるべき痛みなのか」と整理できるようになります。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、痛みをただ我慢させることはしません。逆に、痛みを必要以上に怖がらせることもしません。

大切なのは、今の痛みがどの段階なのか、どの動きで反応するのか、どの程度までなら許容できるのかを見極めることです。

そのために、問診と検査を行い、患者さんに分かる言葉で説明します。

とんとんの基本姿勢

「動かす」「休ませる」を感覚だけで決めない。痛みの出方、残り方、生活への影響を見ながら、その人に必要な運動と施術を考えます。

こんな方は一度ご相談ください

  • 痛みが怖くて、動かすことを避けるようになっている
  • 動くたびに「悪化したのでは」と不安になる
  • 腰痛、肩の痛み、膝の痛みなどが長引いている
  • 痛くない動きばかり選んで、身体の使い方が小さくなっている
  • 運動した方がいいのか、休んだ方がいいのか分からない
医療機関の受診について

強い痛みが急に出た、しびれや脱力が強い、排尿・排便の異常がある、発熱や外傷を伴う、安静にしていても強い痛みが続くなどの場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

「痛いから動かさない」で止まらない

「痛くない範囲で動かしてください」という言葉は、患者さんを守るために使われてきた言葉です。

しかし、その説明だけでは、患者さんが痛みを必要以上に怖がり、動きを避け続けてしまうことがあります。

大切なのは、痛みの強さ、出るタイミング、残り方を見ながら、避けるべき痛みと、少しずつ慣らしていく痛みを分けて考えることです。

とんとん整骨院では、痛みをただ抑えるだけでなく、患者さんが自分の身体を理解し、安心して動ける状態を取り戻すことを大切にしています。

参考

読みもの

瀬谷崎コラム

施術・検査の解説

とんとんブログ

電話
タップで電話がかかります
LINE
24時間予約受付中
東武練馬店
ときわ台店
下板橋店
南浦和店