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足に力が入りにくい時のMMT(徒手筋力テスト)。下肢の筋力チェック

下肢MMTを臨床でどう使う?
筋力と神経学的所見のつなげ方

MMT(徒手筋力検査/テスト)は、力の入り方を数字でメモできる便利な検査です。ただ、数字だけを眺めても見えてこないことがあります。感覚検査や腱反射、誘発テストと合わせて読むと、かなり使いやすくなります。

この記事について

下肢MMT(徒手筋力検査)は、足のしびれ・脱力感・筋力低下・左右差がある時に、大腿四頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋などの力の入り方を確認する神経学的検査です。ここでは、0〜5の6段階評価、検査精度、大腿四頭筋・前脛骨筋・下腿三頭筋の評価手順、腱反射・触覚検査・SLR・FNSなど他の神経学的所見とのつなげ方をまとめています。

著者アイコン 伊藤聡史

MMTは、筋力を0〜5で記録できる便利な検査ですが、数字だけで判断するものではありません。左右差、痛みによる抑制、感覚検査や腱反射との整合性まで合わせて見ることで、評価として使いやすくなります。

結論:下肢MMTは、筋力低下の有無や左右差を確認し、神経根・末梢神経の関与を疑う材料を増やす検査として使うのが実用的です。

MMTは「Manual Muscle Testing」の略で、日本語では徒手筋力検査、徒手筋力テストと呼ばれます。重力や検者の抵抗に対して、患者さんがどの程度筋力を発揮できるかを0から5の6段階で評価します。

この動画で扱うのは、大腿四頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋の3つです。ざっくり言うと、太ももの前、すね、ふくらはぎ。腰から足へ出る神経の評価とも関わるので、しびれ・痛み・脱力感がある場面では押さえておきたいところです。

MMTの基本:0から5で筋力を見る

MMTでは、重力に抗して動かせるか、検者の抵抗に耐えられるか、筋収縮だけでも確認できるか、といった基準で筋力を段階づけます。臨床では、MMT4以下を筋力低下として扱い、左右差や症状の分布と合わせて評価することが多いです。

5 Normal 最大抵抗に耐えて、全可動域の運動ができます。
4 Good ある程度の抵抗に耐えて運動できます。臨床では、ここ以下を筋力低下として見ることが多くなります。
3 Fair 抵抗なしで、重力に抗して全可動域の運動ができます。
2 Poor 重力を取り除いた姿勢であれば、全可動域の運動ができます。
1 Trace 筋収縮は触知または目視できますが、関節運動は起こりません。
0 Zero 筋収縮が確認できません。

MMTは数字だけを見る検査ではありません。左右差、症状の出方、筋萎縮、痛みによる力の入りにくさ、患者さんの理解度なども合わせて確認します。

検査精度とエビデンスの読み方

動画内では、腰椎神経根障害に対する2013年のメタアナリシスが紹介されています。MMTの検査精度は、感度22%、特異度79%、陽性尤度比1.05、陰性尤度比0.96とされています。

感度 22%
正常に見えても、神経根障害の可能性を低く見積もる材料としては弱い数値です。
特異度 79%
筋力低下がある場合は、神経の関与を疑う所見として拾いやすくなります。
尤度比 陽性尤度比:1.05
陰性尤度比:0.96
単独で判断を大きく動かす性能ではないため、他の神経学的所見と合わせて読む必要があります。
整理

MMTは、筋力低下があったときに「神経根や末梢神経の関与を疑う所見」として重要です。一方で、MMTが正常でも症状の背景を否定する材料にはなりにくいため、腱反射、知覚検査、SLR、FNS、症状分布と合わせて総合的に見ます。

実施手順:まずはMMT3を確認する

MMTでは、いきなり強い抵抗をかけるのではなく、まず重力に抗して全可動域を動かせるかを確認します。ここでMMT3に届くかどうかを見てから、抵抗を加えて4・5を判定していきます。

  1. 評価する筋と神経高位を決める症状の分布や疑われる神経根をもとに、大腿四頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋など、確認する筋を選びます。
  2. まず重力に抗して動かせるか見る抵抗なしで全可動域の運動ができるかを確認します。できればMMT3のラインに乗ります。
  3. 抵抗をかけて4・5を判定する検査肢位を保った状態で、検者が決められた方向に抵抗をかけます。最大抵抗に耐えられるか、中等度で負けるかを見ます。
  4. 動かせない場合は重力最小位へ重力に抗して動かせない場合は、側臥位や腹臥位など重力の影響を減らした姿勢でMMT2を確認します。
  5. 収縮だけでも触知する関節運動が出ない場合は、筋や腱を触り、収縮があるかどうかでMMT1・0を判断します。

大腿四頭筋:L2からL4の評価

大腿四頭筋は、膝を伸ばす働きを持つ筋群です。L2からL4神経根の関与を考える場面で確認されます。膝蓋腱反射や大腿前面の感覚、FNSテストなどと合わせると、評価の整合性を見やすくなります。

MMT3 座位で両手をベッドの後ろにつき、体を少し後ろに傾けた状態で膝を伸ばします。抵抗なしで全可動域の膝伸展ができれば3です。
MMT4・5 膝を伸ばした状態を保持してもらい、検者は下腿遠位に下向きの抵抗をかけます。強い抵抗に耐えられれば5、中等度の抵抗で負ける場合は4として見ます。
MMT2 患側を上にした側臥位で、下側の脚と骨盤を支えながら膝を伸ばしてもらいます。重力の影響を減らして全可動域が動くか確認します。
MMT1・0 仰臥位で膝裏をベッドへ押し付けるように力を入れてもらい、膝蓋骨の上の筋収縮を触知します。収縮があれば1、確認できなければ0です。

前脛骨筋:L4・L5の評価

前脛骨筋は、足首を上に反らす背屈と、足を内側へ返す内返しに関わります。足の甲やすね周辺のしびれ、つまずきやすさ、下垂足のような訴えがある場面では確認しておきたい筋です。

MMT3 座位で踵を床につけ、足首を上かつ内側に反らします。抵抗なしで背屈・内返しができれば3です。
MMT4・5 背屈・内返しを保持してもらい、検者は足背の外側から外下方へ抵抗をかけます。保持できる強さを左右差も含めて確認します。
MMT1・0 仰臥位で患者さんの踵を検者の太ももの上に乗せ、足首の前内側で腱の浮き出しや収縮を触知します。収縮があるかどうかを丁寧に見ます。

下腿三頭筋:S1・S2の評価

下腿三頭筋は、足首を下に伸ばす底屈に関わります。S1・S2神経根の関与を考える場面で確認され、アキレス腱反射や足底・ふくらはぎ周辺の症状と合わせて見ると見通しがよくなります。

MMT3 片脚立ちになり、踵をできるだけ高く上げます。全可動域で1回踵を上げられれば3として見ます。
MMT4・5 2秒に1回のペースで踵上げを反復します。全可動域で25回できれば5、2から24回で途中から上がらなくなる場合は4として評価します。
MMT2 腹臥位で足首をベッドの外に出し、検者が足底に背屈方向への抵抗を軽くかけた状態で、患者さんに足首を伸ばしてもらいます。
MMT1・0 アキレス腱をつまむようにして、下腿三頭筋の収縮を触知します。収縮があれば1、確認できなければ0です。

陽性所見として読みたい反応

MMTで重要なのは、筋力低下がどの筋に出ているか、左右差があるか、症状分布や他の神経学的所見と一致するかです。単に「弱い」だけでは、痛みによる抑制、恐怖心、関節可動域制限、指示理解の問題なども混ざることがあります。

  • MMT4以下の筋力低下があり、左右差もはっきりしている
  • 筋力低下の部位が、しびれや痛みの分布と大まかに合う
  • 腱反射や触覚検査の変化と同じ神経高位を示しやすい
  • SLR、FNS、スランプテストなどの誘発所見と整合する

MMTの陽性所見は、神経の関与を疑う材料になります。ただし、単独で判断するより、感覚・反射・症状分布・誘発テストと合わせて「同じ方向を向いているか」を見るのがポイントです。

注意点:痛みと代償を混ぜない

MMTでは、検査したい筋以外の代償動作が入ると、筋力を正しく見にくくなります。また、痛みが強い状態では、本当の筋力低下ではなく、防御的に力を抜いているだけのこともあります。

MMTは、「強く押して勝ち負けを見る検査」ではなく、「決めた筋が決めた方向へ力を出せているかを見る検査」です。

抵抗の方向をそろえる

抵抗の方向が毎回変わると、同じ筋を見ているつもりでも結果がぶれます。大腿四頭筋なら下腿遠位へ下向き、前脛骨筋なら外下方、下腿三頭筋なら踵上げの回数と高さ、というように、見るポイントをそろえます。

痛みで力が入らない場合は記録に残す

患者さんが痛みで力を出せない場合、それを純粋な筋力低下として扱うと評価がずれます。「痛みによる抑制がある」「可動域制限が強い」など、結果に影響した要因も一緒に記録しておくと、経過を追いやすくなります。

関連症状:こんな訴えと合わせて見る

  • 足に力が入りにくい、踏ん張りにくい
  • 階段や立ち上がりで膝が不安定に感じる
  • つまずきやすい、足首が上がりにくい
  • つま先立ちがしにくい、ふくらはぎに力が入りにくい
  • しびれや痛みの範囲と筋力低下の部位が重なる
重要

急に足へ力が入らなくなった、歩行が大きく不安定になった、排尿・排便の異常がある、強いしびれや感覚低下が急に出た場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

MMTは「筋力低下の場所」をしぼり込む検査

下肢MMTは、大腿四頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋などの筋力を確認し、神経根や末梢神経の関与を疑う材料を集める検査です。0から5の数字で整理できるため、左右差や経過を追いやすいのが特徴です。

ただし、MMT単独で状態を決めるには限界があります。正常に見えても神経の関与を低く見積もれるとは限らず、筋力低下があっても痛みや代償の影響が混ざることがあります。

だからこそ、MMTは腱反射、触覚検査、SLR、FNS、スランプテスト、症状分布と合わせて読みます。とんとん整骨院では、痛みやしびれの場所だけでなく、筋力・感覚・反射・動作での症状変化を丁寧に確認し、身体の状態を多角的に見極めることを大切にしています。

著者アイコン 伊藤聡史

下肢MMTは、どの筋に力が入りにくいかを確かめる検査です。筋力低下の場所が、しびれの範囲、腱反射、触覚検査、誘発テストと同じ方向を示しているかを確認することで、神経学的所見としての意味が見えてきます。

実際の検討例(オンラインカンファレンス)

足に力が入りにくいときに行う徒手筋力テスト(MMT、手で抵抗を加えて筋力を段階評価する検査)について、判定の難しさが検討で取り上げられました。グレード1や2は、筋肉がわずかに収縮するだけの状態や、持ち上げた脚が支えを外すとすとんと落ちる状態など、見た目ではっきり分かれます。一方でグレード3と4の境目は、検者の主観が入りやすいという声が挙がりました。

「弱っていてほしい」と思いながら測ると弱く見えてしまう検者バイアスが具体例として語られ、対策も示されました。測定は毎回同じ人が行うこと、そして4を確認するときの抵抗の強さ、5を確認するときの強さを、あらかじめ自分の中で決めておくことです。段階はグラデーションなので、自分の基準を固定しておけば境目の判定も安定します。

こうした主観のばらつきに備える工夫は、グレード3〜4の見極めを扱う本記事の内容と同じ考え方です。

参考文献

この記事で解説した検査について、精度や実施方法の根拠として参照した主な文献です。

  1. Iversen T, Solberg TK, Romner B, Wilsgaard T, Nygaard Ø, Waterloo K, Brox JI, Ingebrigtsen T. Accuracy of physical examination for chronic lumbar radiculopathy. BMC Musculoskeletal Disorders. 2013;14:206.
  2. Al Nezari NH, Schneiders AG, Hendrick PA. Neurological examination of the peripheral nervous system to diagnose lumbar spinal disc herniation with suspected radiculopathy: a systematic review and meta-analysis. The Spine Journal. 2013;13(6):657-674.
伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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