L2からS1までをつなぐ腰下肢痛。筋力・感覚・反射の読み方

症状の場所だけでなく、動き・感覚・反射をつなげて読む

腰から足へ広がる痛みやしびれは、神経根のレベルを考える手がかりになります。ただし、L2、L3、L4、L5、S1を暗記表のように当てはめるだけでは不十分です。筋力、感覚、腱反射、誘発テストが同じ方向を向いているかを確認します。

この記事について

腰下肢痛をL2からS1までの神経根所見と照らし合わせる考え方を整理します。細かな検査手順は既存のFNS、SLR、下肢MMT、触覚検査、腱反射の記事へつなぎ、ここでは所見同士の読み方を扱います。

伊藤聡史
伊藤聡史

神経根の評価は、痛みの場所だけでは決まりません。筋力、感覚、反射、誘発テストが同じ方向を向いているかを見ていくと、判断の精度が上がります。

結論:L2からS1までの腰下肢痛は、症状分布、筋力、感覚、腱反射、誘発テストを組み合わせて読みます。ひとつの所見だけで神経根レベルを決めないことが大切です。

神経根レベルは、ひとつの検査で決めない

腰から足に痛みやしびれが広がると、L4、L5、S1などの神経根レベルを考える場面があります。ただし、患者さんが示す痛みの場所だけで神経根を決めるのは危険です。痛みは広がって感じられることがあり、筋肉や関節、末梢神経、血流の問題が混ざることもあります。

そのため、神経根レベルを考える時は、症状の分布、筋力低下、感覚低下、腱反射、SLRやFNSなどの誘発テストをつなげて確認します。複数の情報が同じ方向を示すほど、所見としての重みが増します。

L2・L3は鼠径部から大腿前面を意識する

L2やL3の関与を考える時は、腰だけでなく鼠径部、大腿前面、大腿内側の痛みやしびれを確認します。上位腰椎神経根の症状は、一般的な坐骨神経痛のイメージとは違い、後面ではなく前面側に訴えが出ることがあります。

筋力では股関節屈曲や膝伸展、感覚では大腿前面や内側、誘発テストではFNSテストが材料になります。ただし、股関節疾患や大腿神経周囲の問題とも重なりやすいため、鼠径部痛や股関節可動域も一緒に確認します。

痛みの範囲

鼠径部、大腿前面、大腿内側に症状があるかを確認します。

筋力

股関節屈曲や膝伸展の左右差を確認します。

感覚

大腿前面、内側の感覚低下や左右差を確認します。

誘発テスト

FNSテストでいつもの症状が再現されるかを見ます。

L4は膝伸展と膝蓋腱反射を合わせて読む

L4を考える時は、大腿前面から膝周囲、下腿内側の症状を確認します。筋力では大腿四頭筋による膝伸展、反射では膝蓋腱反射、感覚では下腿内側の左右差が手がかりになります。

膝の痛みとして訴えられることもあるため、膝そのものの問題と腰椎由来の神経症状を分けて考える必要があります。膝伸展の弱さ、膝蓋腱反射の左右差、感覚低下が同じ方向を向くかを確認します。

症状の出方

大腿前面、膝周囲、下腿内側へ広がる痛みやしびれを確認します。

筋力

大腿四頭筋、膝伸展の左右差を確認します。

反射

膝蓋腱反射の減弱や左右差を確認します。

注意点

膝関節由来の痛みと混ざりやすいため、膝単体の所見も確認します。

L5は足首・母趾の伸展と足背の感覚を見る

L5は、腰下肢痛の評価でよく意識する神経根です。臀部から大腿外側、下腿外側、足背、母趾側へ症状が広がる場合に候補に入ります。筋力では足関節背屈、母趾伸展、股関節外転などが材料になります。

L5には腱反射で分かりやすく対応するものが少ないため、筋力と感覚、症状分布、SLRやスランプテストの結果を合わせて読みます。足が上がりにくい、つまずく、母趾が伸ばしにくいという訴えは慎重に確認します。

症状の範囲

臀部、大腿外側、下腿外側、足背、母趾側の症状を確認します。

筋力

足関節背屈、母趾伸展、股関節外転の左右差を確認します。

感覚

足背や母趾側の感覚低下、左右差を確認します。

生活上の変化

つまずく、足が上がらない、スリッパが脱げやすいなどを確認します。

S1は足底屈とアキレス腱反射を確認する

S1では、臀部から大腿後面、下腿後面、足外側や足底へ症状が出ることがあります。筋力では足関節底屈、つま先立ち、反射ではアキレス腱反射、感覚では足外側や足底の左右差を確認します。

歩行時に蹴り出しが弱い、片脚つま先立ちができない、アキレス腱反射が左右で違う場合は、症状分布と合わせて確認します。単なるふくらはぎの張りや足底の痛みと混同しないよう、神経学的所見をそろえることが大切です。

症状の範囲

大腿後面、下腿後面、足外側、足底への痛みやしびれを確認します。

筋力

足関節底屈、片脚つま先立ち、歩行時の蹴り出しを確認します。

反射

アキレス腱反射の左右差や減弱を確認します。

感覚

足外側、足底の感覚低下や左右差を確認します。

誘発テストは症状の再現と変化を見る

L2からL4の前面症状ではFNSテスト、L4からS1の後面症状ではSLRやスランプテストが材料になります。ただし、どの検査も陽性か陰性かだけで神経根レベルを決めるものではありません。

大切なのは、患者さんのいつもの症状が再現されるか、追加操作で症状が変わるか、筋力や感覚、反射の所見と同じ方向を向くかです。検査手順そのものは既存記事で確認し、ここでは所見の組み合わせを重視します。

筋力・感覚・反射のずれを読む

神経根症状を考える時、所見がすべてきれいにそろうとは限りません。痛みはL5に見えるのに筋力低下がない、感覚低下は広いが反射は正常、SLRは陽性だが普段の症状とは違うなど、ずれが出ることがあります。

その場合は、検査のやり方を見直すだけでなく、末梢神経障害、股関節、仙腸関節、脊柱管狭窄症、血流、全身疾患なども考えます。所見がそろわない時ほど、ひとつの病名に急がないことが重要です。

進行する脱力は慎重に扱う

痛みやしびれだけでなく、筋力低下が進行している場合は慎重に扱います。足首が上がらない、つまずきが急に増えた、片脚つま先立ちができなくなった、膝折れが出るなどは、施術で反応を見る前に医療機関での確認を優先する場面があります。

また、排尿・排便の変化やサドル部の感覚低下がある場合は、馬尾症候群を含む危険サインとして考えます。神経根レベルを読む前に、緊急性の確認を先に行います。

  • 足首が上がりにくく、つまずきが増えている
  • 片脚つま先立ちが急に弱くなった
  • 膝折れや階段での不安定感がある
  • 排尿・排便の変化がある
  • サドル部の感覚低下がある

L4・L5・S1の詳細は既存記事へつなぐ

L4、L5、S1の切り分けは、しびれシリーズでも詳しく扱っています。この記事では腰痛・腰下肢痛から神経根所見をどうつなげるかを整理し、より細かいL4・L5・S1の分布や検査の見方は既存記事へつなぎます。

腰痛シリーズでは、腰から足へ広がる症状を入口に、問診、誘発テスト、筋力、感覚、腱反射の順番を整理します。しびれシリーズでは、神経症状そのものの分布や所見の意味を深掘りします。

重要

神経根レベルは、痛みの場所だけで決めません。筋力、感覚、反射、誘発テスト、経過が同じ方向を向いているかを確認し、進行する脱力や排尿・排便の変化がある場合は医療機関での評価を優先します。

腰下肢痛は、所見をひとつずつつなげて読む

L2からS1までの神経根症状は、教科書上の分布だけで判断するものではありません。痛みやしびれの場所、筋力、感覚、腱反射、誘発テストがどの程度そろうかを見ます。

複数の所見が同じ方向を示す場合は、神経根症状として整理しやすくなります。一方で、所見がばらばらな場合や、危険サインがある場合は、腰椎以外の原因や医療機関での確認も含めて考えます。

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伊藤聡史
伊藤聡史

神経根の見方は、表を覚えるよりも、所見のつながりを丁寧に見る方が実用的です。痛み、筋力、感覚、反射が同じ方向を向いているかを確認していきます。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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