柔道整復師・鍼灸師が初任給だけで職場を選ぶ前に考えたいこと
セラピスト向け
初任給の高さだけで、職場を選んでいいのか
給料は大事です。そこはきれいごとを言っても仕方ありません。ただ、柔道整復師や鍼灸師が最初の職場を選ぶ時、初任給だけを見ると見落とすものがあります。
初任給は入口であって、キャリアの答えではありません。大切なのは、数年後に何ができる人になっていて、どんな評価を受けられる環境なのかです。
求人票を見る時、最初に目に入るのはやっぱり給料です。
月給26万円、28万円、30万円近く。
学生さんや若手からすれば、かなり魅力的に見えると思います。
もちろん、お金は大事です。生活がありますし、奨学金の返済がある人もいます。地方から出てくるなら家賃もかかります。
ただ、ここで少し立ち止まりたいです。
初任給が高いことと、その職場で長く良いキャリアを作れることは、同じではありません。

まなぶ先生

瀬谷崎
初任給は高い。でも、その後はどう上がるのか
就職先を選ぶ時に見たいのは、入社時の給与だけではありません。
1年後、3年後、5年後にどう上がっていくのか。院長やマネージャーになった時に、実際にどのくらいの責任と報酬があるのか。
ここが見えないまま初任給だけで選ぶと、数年後に苦しくなることがあります。
新卒で30万円もらえることより、35歳になった時に何ができていて、どんな評価を受けられるかの方が、キャリアとしてはずっと大事です。
求人票には、魅力的な年収例が並ぶことがあります。
でも、その役職が実際にどれくらいあるのか。何人がそこまで上がっているのか。年数だけで上がるのか、売上や教育力、マネジメント力も必要なのか。
数字を見るなら、そこまで見たいところです。
給料には、だいたい必要な売上がある
治療院も会社なので、給料はどこかから出ています。
一般的には、給与の3倍から4倍くらいの売上が必要になると言われます。家賃、人件費、広告費、設備、教育、社会保険、税金。いろいろな費用があるからです。
たとえば月給25万円なら、ざっくり75万円から100万円くらいの売上が必要になる計算です。
もちろん、会社の規模や経費構造によって変わります。あくまで考えるための目安です。
| 月給の目安 | 必要になりやすい売上の目安 | 考えたいこと |
|---|---|---|
| 25万円 | 75万から100万円前後 | 新卒ですぐに出せる数字なのか、会社がどう育成するのかを見る |
| 28万円 | 84万から112万円前後 | 求められる成果やメニュー構成、集客方法も確認したい |
| 30万円 | 90万から120万円前後 | 高い給与の裏側に、どんな責任やノルマがあるのかを見る |
必要になりやすい売上の目安:75万から100万円前後
新卒ですぐに出せる数字なのか、会社がどう育成するのかを見る。
必要になりやすい売上の目安:84万から112万円前後
求められる成果やメニュー構成、集客方法も確認したい。
必要になりやすい売上の目安:90万から120万円前後
高い給与の裏側に、どんな責任やノルマがあるのかを見る。
ここで言いたいのは、「高い給料をもらうな」ということではありません。
高い給料をもらうなら、それに見合う能力や成果が必要になります。
その現実を知らないまま入ると、会社側もしんどいし、本人もどこかで苦しくなります。
実力以上の給与は、勘違いを生むことがある
若いうちに高い給与をもらえることは、うれしいです。
ただ、実力や成果と給与のバランスが大きくズレると、自己評価もズレやすくなります。
「自分はこれくらいもらえる人間なんだ」と思う。
でも実際には、会社の採用競争や求人戦略の中で、その給与になっているだけかもしれません。
高い初任給は、必ずしも「あなたの臨床力が高く評価されている」という意味ではありません。採用のための条件である可能性もあります。
最初から高い給与に慣れると、次に転職する時にもその金額を基準にしやすくなります。
でも、臨床力、説明力、売上、教育力がそこに追いついていなければ、選べる職場は狭くなります。
給与は大事です。ただ、給与に見合う自分を作ることも同じくらい大事です。

まなぶ先生

瀬谷崎
給料より先に、臨床方針が合うかを見る
転職してくる人の中には、前職より給与が下がっても環境を変えたいという人がいます。
理由は、お金だけではありません。
療養費の申請の考え方に違和感がある。根拠が弱いメニューを強く売ることに疲れた。患者さんのためというより、売上のための提案が多くなっている。
こういう違和感が積み重なると、臨床家としての気持ちはかなり削られます。
給与だけで職場を選ぶと、「自分がどういう臨床をしたいのか」を後回しにしやすいです。でも、毎日患者さんと向き合う以上、そこはかなり大事です。
もちろん、売上を追うこと自体が悪いわけではありません。
院を続けるには売上が必要です。スタッフに給料を払うにも、設備を整えるにも、教育に投資するにも、お金は必要です。
ただ、売上の作り方に納得できるか。
患者さんへの説明に誠実さがあるか。
自分がその施術や提案を、胸を張って家族にもすすめられるか。
ここは、かなり大事な判断材料です。
職場を選ぶ前に聞いておきたいこと
面接や見学で、給与だけを聞くのはもったいないです。
むしろ、給与以外の質問の方が、その職場の本質が見えます。
- 入社後、どのような研修や評価制度があるのか
- 1年後、3年後にどんな役割を期待されるのか
- 昇給は何を基準に決まるのか
- 売上目標はどのように設定されるのか
- 療養費対象の施術と自費施術の考え方はどうなっているのか
- 患者さんへの提案で大切にしている基準は何か
- 退職する人は、どんな理由で辞めることが多いのか
これを聞いて、嫌な顔をされるなら、それもひとつの情報です。
若手が職場を選ぶ時、遠慮しすぎる必要はありません。働くのは自分です。
会社に成長させてもらう、だけでは弱い
職場選びでは、「ここに入れば成長できますか?」という視点も出てきます。
もちろん、成長しやすい環境はあります。
教育がある。先輩が見てくれる。症例を振り返れる。評価や説明の型がある。これは大事です。
ただ、最終的に成長するかどうかは自分次第です。
会社が成長させてくれるか、だけで見ると受け身になります。良い環境を選んだ上で、自分がそこで何を取りに行くのかを決めた方がいいです。
給料、教育、臨床方針、人間関係、通勤、働き方。
全部が完璧な職場は、なかなかありません。
だからこそ、自分が何を優先するのかを決める必要があります。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、患者さんへの説明や評価を大切にしています。
そのためには、スタッフ自身が「何を目的に施術しているのか」を理解している必要があります。
売上も大事です。経営も大事です。
でも、患者さんの不安を利用したり、納得できない提案を続けたりすると、長く良い臨床はできません。
施術者としての成長と、院としての運営。その両方をどう両立するか。ここは簡単ではありませんが、避けてはいけないテーマです。
「給料が高いから入る」だけだと、しんどくなった時に踏ん張る理由が弱いです。自分が何を学び、どんな臨床家になりたいのかまで考えておいた方がいいです。
就職・転職前のチェックリスト
- 初任給だけでなく、数年後の給与の伸び方を見たか
- 給与に見合う売上や役割を理解しているか
- 評価制度が具体的に説明されているか
- 臨床方針に納得できるか
- 療養費の申請や自費メニューの説明に違和感がないか
- 自分がその環境で何を学ぶのかを言えるか
- お金以外の理由でも、その職場を選びたいと思えるか
高い初任給より、伸びるキャリアを見る
初任給が高いことは、悪いことではありません。
ただ、それだけで職場を決めると、数年後の自分が困ることがあります。
どんな臨床をするのか。どう評価されるのか。何を求められるのか。自分の能力はそこに追いついていくのか。
就職や転職では、目先の数字だけでなく、その先にある働き方まで見たいところです。

瀬谷崎













