小指側のしびれは肘だけで決めない 肘部管症候群の評価で見るべきこと

尺骨神経の症状は、首・頚髄・肘を分けて確認する

肘部管症候群は、比較的特定しやすい所見が出ることがあります。ただし、頚椎や頚髄の問題と重なっている場合もあり、検査陽性だけで安心しないことが大切です。

肘部管症候群らしい検査所見があっても、頚椎・頚髄障害の関与は確認したいところです。尺骨神経の症状を肘だけで説明しきらず、首から手までをつなげて見ます。

小指や薬指がしびれる。

手の内側がじんじんする。

細かい作業がしにくい。

肘を曲げていると症状が強くなる。

こういう訴えがある時、肘部管症候群を疑う場面があります。

肘部管症候群は、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫や牽引を受け、しびれや筋力低下などを起こす状態です。

検査によっては特異度が高く、陽性なら尺骨神経の関与を疑いやすいものもあります。

ただ、ここで注意したいのが、頚椎頚髄障害や頚椎由来の神経症状との重なりです。

まなぶ先生
まなぶ先生

小指側のしびれがあって、肘のテストも陽性なら、肘部管症候群でいいんじゃないですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

可能性は上がります。ただ、首や頚髄の問題が重なっていることもあります。陽性で終わらず、全体を見たいですね。

肘部管症候群は尺骨神経の絞扼を考える

尺骨神経は、首から腕を通り、肘の内側を抜けて手へ向かいます。

肘の内側、いわゆる肘部管のあたりで圧迫や牽引が加わると、小指側のしびれや違和感、手の使いにくさが出ることがあります。

肘を長時間曲げる、肘をついて作業する、肘の内側に負担がかかる。

こうした状況で症状が出やすい人もいます。

進行すると、手の筋肉がやせる、指の細かい動きがしにくい、握力が落ちるといった変化が出ることもあります。

肘部管症候群では、小指側のしびれだけでなく、手の使いにくさや筋力低下まで見る必要があります。

軽いしびれだけなら様子を見るケースもありますが、脱力や筋萎縮がある場合は、医療機関での確認が必要になることがあります。

検査陽性は、可能性を上げる材料になる

肘部管症候群では、チネル徴候、肘屈曲テスト、圧迫誘発テスト、屈曲と圧迫を組み合わせたテストなどが使われます。

研究によって数値にはばらつきがありますが、いくつかの誘発テストでは特異度が高く、陽性所見が出た時に尺骨神経の関与を疑う材料になります。

ただし、検査が陽性だからといって、すぐに「肘だけが原因」と決めるわけではありません。

検査は、あくまで可能性を上げたり下げたりする道具です。

肘部管症候群の評価で確認したい検査所見
肘部管症候群の評価では、誘発テストの陽性所見を「可能性を上げる材料」として扱います。
検査の扱い方

特異度が高い検査で陽性なら、その疾患の可能性は上がります。ただし、他の部位の関与や重複障害まで否定できるわけではありません。

とくに、首から腕にかけての症状は、末梢神経だけでなく頚椎や頚髄の影響も考える必要があります。

頚椎頚髄障害との重なりが厄介

肘部管症候群の評価で難しいのは、頚椎や頚髄の問題と症状が重なることです。

たとえば、C8やT1領域の神経症状は、小指側のしびれや手の使いにくさと関係することがあります。

そのため、肘で尺骨神経の検査が陽性でも、首からの影響がないとは言えません。

さらに、頚椎側の問題と肘部管での絞扼が同時に存在する、いわゆる重複障害のような見方が必要になることもあります。

肘部管症候群と頚椎頚髄障害の鑑別で確認したいポイント
小指側のしびれでも、肘だけでなく頚椎・頚髄由来の所見がないかを合わせて確認します。
確認したいこと 肘部管症候群で見たい所見 頚椎頚髄障害も疑う材料
しびれの範囲 小指、薬指尺側、手の尺側 腕全体や首、肩甲帯まで広がる症状
症状の誘発 肘屈曲、肘への圧迫で悪化 頚部の動きや姿勢で変化する
筋力低下 手内在筋、指の細かい動き 複数神経領域にまたがる筋力低下
全身的な神経所見 尺骨神経領域中心 巧緻動作障害、歩行の不安定さ、腱反射亢進など

この表は、どちらかをその場で確定するためのものではありません。

「肘だけで説明できそうか」「首や頚髄も確認した方がよさそうか」を整理するためのものです。

頚髄障害を見落とさない

頚髄障害は、首の中を通る脊髄が圧迫されることで、手足の症状や運動のしにくさが出る状態です。

手のしびれや使いにくさだけでなく、歩きにくさ、ボタンを留めにくい、箸が使いにくい、字が書きにくいといった巧緻動作の問題が出ることがあります。

こうした症状がある場合、肘部管症候群だけで説明しようとするのは危険です。

肘の検査が陽性だったとしても、頚髄由来の症状が隠れていないかは確認したいところです。

確認したいサイン

手の細かい動きが急に苦手になった、歩行が不安定、両手に症状がある、筋力低下が進行している、反射が強く出る。このような場合は医療機関での確認が必要になることがあります。

整骨院で大切なのは、全部を自分たちで判断しきることではありません。

必要な時に、医療機関へつなぐ判断をすることです。

検査は増やすより、目的を持って選ぶ

肘部管症候群の評価では、検査をいくつも並べることができます。

でも、検査をたくさんやれば良い臨床になるわけではありません。

何を知りたいのか。

どの可能性を上げたいのか。

どの危険な見落としを避けたいのか。

ここが決まっていないと、検査はただの作業になります。

肘部管症候群の評価を目的に合わせて整理する資料
検査を増やすより、何を確認したいのかを決めて評価を組み立てることが大切です。
まなぶ先生
まなぶ先生

肘の検査が陽性なら、首まで見るのはやりすぎじゃないですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

全部の人に大げさに疑う必要はありません。ただ、症状の広がりや進行、巧緻動作の問題があれば、肘だけで終わらせない方がいいです。

肘部管症候群らしい所見がそろっている。

でも、首の動きでも症状が変わる。

両側性に症状がある。

手の細かい動作が急に苦手になっている。

こういう場合は、肘だけに絞りすぎないことが大切です。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、小指側のしびれを見た時に、尺骨神経の走行だけでなく、首から手までのつながりを確認します。

肘で誘発されるのか。

首の動きで変わるのか。

筋力低下や手の使いにくさはあるのか。

症状は片側だけなのか、両側なのか。

これらを合わせて、整骨院で対応できる範囲と、医療機関で確認すべき可能性を整理します。

とんとんの基本姿勢

肘部管症候群らしい所見があっても、そこで思考停止しない。頚椎頚髄障害との鑑別や重複障害の可能性も、必要に応じて確認します。

こんな症状は一度ご相談ください

  • 小指や薬指側のしびれが続いている
  • 肘を曲げていると手のしびれが強くなる
  • 手の細かい作業がしにくくなっている
  • 首や肩から腕、手まで症状が広がる
  • 肘部管症候群と言われたが、首の影響も気になっている
医療機関の受診について

手の筋肉がやせてきた、脱力が進行している、歩行が不安定、両手に症状がある、排尿・排便の異常を伴う場合などは、早めに医療機関で確認してください。

陽性所見がある時ほど、他を見落としやすい

肘部管症候群の評価では、陽性所見が出ると「これだ」と思いやすくなります。

特異度の高い検査なら、その判断材料としての価値はあります。

でも、陽性所見があるからこそ、他の可能性を見落としやすくもなります。

頚椎、頚髄、末梢神経、重複障害。

小指側のしびれを、肘だけで閉じない。

検査を使いながらも、検査に引っ張られすぎない。

そこが、評価ではかなり大切です。

瀬谷崎
瀬谷崎

検査陽性は大事な材料です。ただ、そこで安心しないこと。肘部管症候群らしく見える時ほど、頚椎頚髄の関与も一度確認しておきたいですね。

参考

  • Novak CB, Lee GW, Mackinnon SE, Lay L. Provocative testing for cubital tunnel syndrome. J Hand Surg Am. 1994.
    ScienceDirect
  • A Comprehensive Review of Cubital Tunnel Syndrome. Orthop Rev. 2022.
    PMC
  • Cubital tunnel syndrome: Anatomy, clinical presentation, and management. J Orthop. 2018.
    PMC
  • Cervical Myelopathy. StatPearls. NCBI Bookshelf.
    NCBI Bookshelf
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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