前もものしびれは腰椎だけとは限らない。大腿神経と腸腰筋周囲で起きること
セラピスト向け
L3/4っぽい、で止まると危ない前ももの症状
太もも前側の痛みやしびれは、腰椎由来に見えることがあります。ただ、大腿神経そのものが腸腰筋や鼠径部周辺で障害される可能性もあります。
太もも前側が痛い。しびれる。力が入りにくい。
こういう訴えがあると、腰椎由来の神経症状を考える人は多いと思います。
L3/4の椎間板ヘルニア。腰椎由来の神経根症。大腿神経伸張テストの反応。
もちろん、それらは重要です。
ただ、前ももの症状をすべて腰だけで説明しようとすると、大腿神経そのものの障害を見落とすことがあります。
大腿神経は腸腰筋周辺、鼠径靭帯下、そして大腿部前面へと走行します。つまり、腰椎から出た後のどこかで圧迫や刺激を受ける可能性があります。

まなぶ先生

瀬谷崎
大腿神経は、腸腰筋の近くを通る
大腿神経は、腰神経叢から出て、腸腰筋周辺を通り、鼠径靭帯の下を抜けて大腿前面へ向かいます。
そのため、腰椎の神経根だけでなく、腸腰筋や腸骨筋、鼠径靭帯周辺での圧迫や刺激も考える必要があります。
大腿神経が障害されると、前ももや膝内側、下腿内側にかけての感覚症状、膝伸展筋力の低下、膝蓋腱反射の低下などが出ることがあります。
大腿前面、膝内側、伏在神経領域の下腿内側などに痛み・しびれが出ることがあります。
大腿四頭筋の出力低下、特に膝伸展の弱さが重要な所見になります。
膝蓋腱反射の低下や左右差があれば、神経学的所見として重視します。
鼠径部痛や股関節前方痛を伴う場合、腸腰筋周辺の問題も候補になります。
前ももの症状では、痛みの場所だけで判断しないことが大切です。
感覚、筋力、反射を合わせて見ることで、腰椎由来なのか、末梢での大腿神経障害なのかを考えやすくなります。
腸腰筋の腫脹や血腫は、抱え込んではいけない
大腿神経障害で特に注意したいのが、腸腰筋や腸骨筋周辺の血腫です。
抗凝固薬を使用している人、外傷後、手術後、血液凝固に問題がある人では、腸腰筋血腫や腸骨筋血腫によって大腿神経が圧迫されることがあります。
この場合、股関節前方や鼠径部の強い痛み、前もものしびれ、膝伸展筋力低下、膝蓋腱反射低下などが出る可能性があります。
急な鼠径部痛、前ももの強い痛み、膝伸展筋力低下、抗凝固薬の使用、外傷歴が重なる場合は、整骨院内で様子見しない方がいいです。医療機関での評価が必要な可能性があります。
これは、筋肉をほぐすかどうかの話ではありません。
大腿神経が圧迫されている可能性があるなら、まず安全確認です。
「腸腰筋が張っているから押しましょう」では済まないケースがあります。
鼠径靭帯周辺での絞扼も考える
大腿神経は、鼠径靭帯の下を通って大腿部へ向かいます。
そのため、腸腰筋と鼠径靭帯の間での圧迫や、股関節前方の組織による影響も考えられます。
鼠径部周辺の症状が強い場合や、股関節の肢位によって前ももの症状が変化する場合は、腰椎だけでなく鼠径部周辺も確認したいところです。
- 鼠径部痛を伴う前もものしびれ
- 股関節伸展や腸腰筋伸張で症状が変化する
- 膝伸展筋力に左右差がある
- 膝蓋腱反射に左右差がある
- 腰椎の動きだけでは症状が説明しにくい
- 股関節前方の圧痛や深部痛がある
大腿神経障害を疑う時は、腰椎、股関節、鼠径部を分けて見ます。
一つの検査だけで決めるのではなく、複数の所見のつじつまを合わせていくことが必要です。
大腿直筋腱深部での障害という視点
大腿神経の障害部位として、腸腰筋と鼠径靭帯の間だけを考えると、少し粗くなります。
大腿直筋腱深部での影響が疑われる場合もあります。
この場合、知覚障害が目立たず、中間広筋や外側広筋の筋力低下が中心になる可能性があります。
一方で、腸腰筋と鼠径靭帯間で障害される場合は、大腿神経の全枝に影響が出やすく、感覚障害も含めて広く症状が出る可能性があります。
前ももの症状では「腰椎由来かどうか」だけでなく、「大腿神経のどこで障害されていそうか」まで分けると、評価の解像度が上がります。
このあたりは非常に細かい話です。
ただ、膝伸展筋力のどの要素が落ちているのか、感覚障害があるのか、反射がどうかを見ることで、腰だけではない見方ができます。
L3/4椎間板ヘルニアとの鑑別
前ももの痛みやしびれでは、L3/4周辺の椎間板ヘルニアや神経根症も当然考えます。
だからこそ、大腿神経障害との鑑別が必要です。
腰椎の動きで症状が変わるのか。神経根症状として説明できるのか。股関節や鼠径部の肢位で症状が変わるのか。膝蓋腱反射や大腿四頭筋の出力はどうか。

まなぶ先生

瀬谷崎
FNSテストなども重要ですが、検査結果だけで「腰」と決めつけるのは危険です。
前ももの症状は、腰椎、腸腰筋、鼠径部、大腿部前面を連続したルートとして見る必要があります。
前ももの症状で確認したい順番
前ももの痛みやしびれを見た時は、いきなり患部を触る前に、まず安全性と神経学的所見を確認します。
- 急な発症か、徐々に出た症状か
- 外傷歴、手術歴、抗凝固薬の使用があるか
- 鼠径部痛や股関節前方痛を伴うか
- 大腿前面、膝内側、下腿内側の感覚異常があるか
- 膝伸展筋力の低下があるか
- 膝蓋腱反射の低下や左右差があるか
- 腰椎の動きで症状が変化するか
- 股関節伸展や鼠径部周辺の刺激で症状が変化するか
この確認を飛ばして、「前ももがしびれるから腰ですね」と決めるのは雑です。
逆に、「腸腰筋が張っているから腸腰筋ですね」と決めるのも雑です。
神経症状は、場所ではなく経路で見ます。
前もも症状は、腰椎から鼠径部まで一本で見る
太もも前側の痛みやしびれは、腰椎由来に見えることがあります。
でも、大腿神経は腰椎から出た後、腸腰筋周辺、鼠径靭帯下、大腿部前面へと走行します。
つまり、症状の場所だけでは障害部位は決まりません。
L3/4っぽい。腸腰筋っぽい。鼠径部っぽい。
その「っぽい」を一つずつ検証する必要があります。
特に、急な強い鼠径部痛、前ももの痛み、膝伸展筋力低下、膝蓋腱反射の低下、抗凝固薬の使用などが重なる場合は、整骨院で抱え込まない判断も必要です。
前ももの症状は、腰だけで決めない。
腸腰筋だけで決めない。
神経の通り道として、連続して見る。
この視点を持っておきたいところです。

瀬谷崎













