マニュアルを完コピできない人ほど、オリジナリティを出したがる
セラピスト向け
「自分らしさ」は、型を入れたあとでいい
新人のうちから臨機応変にやろうとすると、だいたい成長が遅れます。まずは上手い人の完コピ。オリジナリティは、その後で十分です。
入社したての頃や、臨床経験が浅い頃ほど、自分を出したくなることがあります。
マニュアル通りの問診は嫌だ。
先輩の言う通りだけではつまらない。
患者さんごとに違うのだから、自分で考えて臨機応変にやりたい。
気持ちは分かります。
ただ、そこにはかなり大きな落とし穴があります。
型を知らない人が出すオリジナリティは、患者さんにとって価値になるとは限りません。
むしろ、上手くいっている方法から外れて、ただ不安定な対応になっているだけのことがあります。
厳しく言えば、完コピできない人ほど、オリジナリティを出したがる。
そして、その多くは型破りではなく、型無しです。

まなぶ先生

瀬谷崎
まずは、上手くいっている人のままやる
新人への問診の落とし込みで、最初に徹底したいのは完コピです。
言葉の順番。
説明の流れ。
患者さんへの間の取り方。
不安をあおらない言い回し。
治療計画を伝えるタイミング。
これらは、上手くいっている人が何度も試行錯誤して見つけた型です。
それを経験の浅い段階で「自分なりに変えます」と言うのは、なかなか危険です。
もちろん、最終的には自分の言葉で話せるようになる必要があります。
でも、最初から自分の言葉でやろうとしなくていい。
まずは、上手い人の言葉を借りていいです。
完コピは、思考停止ではありません。上手くいっている人が何を見て、どの順番で伝え、どこで患者さんの反応を拾っているかを身体に入れるための練習です。
80点に最速で到達する価値
マニュアルの役割は、全員を100点にすることではありません。
まず、最速で80点に到達させることです。
80点の問診ができる。
80点の説明ができる。
80点の初回対応ができる。
これだけでも、現場ではかなり大きいです。
なぜなら、0点から100点を目指すより、80点から100点を目指す方が圧倒的に早いからです。
最初からオリジナリティを出そうとすると、0点から自分の感覚だけで山を登ることになります。
一方で、マニュアルを完コピすれば、先輩たちが登った道をまず通れます。
そこから自分の工夫を入れればいい。
何を聞くか、どう伝えるかが毎回ブレる。患者さんの反応にも振り回されやすい。
最低限の流れが安定し、患者さんに必要な説明を大きく外さず届けられる。
患者さんの状態や価値観に合わせ、型を理解したうえで適切に崩せる。
80点を軽く見てはいけません。
現場では、80点を安定して出せるだけで、患者さんの安心感も、リピートも、院全体の品質も大きく変わります。
適切なオリジナリティと、ただの自己流は違う
とんとん整骨院の問診チェックシートには、「適切なオリジナリティ」という考え方があります。
これは、マニュアルを一言一句守ることだけが正解ではないという意味です。
患者さんの理解度。
不安の強さ。
症状の背景。
生活で何を大事にしているか。
その場の反応。
これらによって、言葉を変える必要はあります。
ただし、それはマニュアルを理解している人が、必要に応じて崩すから意味があります。
マニュアルの意図を知らずに変えるのは、ただの自己流です。
自己流は、うまくいった時の再現性も、うまくいかなかった時の修正点も見えにくい。
適切なオリジナリティとは、マニュアルを無視することではありません。マニュアルの目的を理解したうえで、患者さんや状況に合わせて、意図を持って変えることです。
患者さんの顔色を見すぎると、説明が弱くなる
新人の問診で起こりやすいのが、患者さんの顔色を見すぎることです。
患者さんが少し不安そうに見える。
説明が長いかなと焦る。
質問された瞬間に流れが崩れる。
すると、本来伝えるべき内容を省いたり、曖昧な説明で逃げたりしてしまいます。
患者さんに合わせているように見えて、実際には自分の不安に負けているだけのことがあります。
だからこそ、最初はマニュアルを振り切る必要があります。
壁に向かってでも言えるくらい、流れを身体に入れる。
すると、患者さんの表情を見る余裕が出ます。
マニュアルを覚えていない人ほど、患者さんを見ているようで、実は自分の頭の中で迷子になっています。

まなぶ先生

瀬谷崎
よく聞かれる質問ほど、答えを決めておく
患者さんからよく聞かれる質問があります。
「私の肩、凝っていますか?」
「筋肉、硬いですか?」
「骨盤が歪んでいますか?」
「このままだと悪くなりますか?」
こういう質問に、その場のノリで答えるのは危険です。
安易に「硬いですね」と言えば、患者さんに不要な不安を与えるかもしれません。
逆に、言葉を選びすぎて曖昧になると、何を言いたいのか伝わらないかもしれません。
だから、よくある質問ほど、あらかじめ回答の軸を決めておいた方がいいです。
これは患者教育をマニュアル化するという意味で、少し違和感があるかもしれません。
でも、患者さんに余計な認知を植え付けないためには、かなり重要です。
- 不安をあおる表現になっていないか
- 医学的に言いすぎていないか
- 患者さんが行動しやすい説明になっているか
- こちらの都合の良い解釈を押しつけていないか
- 同じ質問に、スタッフごとに違う回答をしていないか
つまらないマニュアルは、読まれない
マニュアルは内容だけでなく、伝え方も大事です。
読んでいて眠くなる資料。
受けていてつまらない研修。
文字ばかりで、どこが重要なのか分からないスライド。
こういうものは、どれだけ良いことが書いてあっても現場に落ちにくいです。
会社運営や教育では、エンタメ性もかなり重要だと思います。
笑いがある。
見た目が分かりやすい。
大事なところが印象に残る。
研修を受ける側が飽きない。
それは軽さではなく、伝える技術です。
正しいことを書くだけなら、資料は作れます。でも、現場で使われる資料にするには、読まれる工夫、覚えられる工夫、やってみたくなる工夫が必要です。
型を入れた人だけが、型を破れる
マニュアルは、臨床のゴールではありません。
ただ、スタートラインとしてはかなり強いです。
上手くいっている人の完コピをする。
80点まで最速で到達する。
マニュアルの意図を理解する。
患者さんの反応を見る余裕を作る。
よくある質問への答えを決める。
そのうえで、患者さんに合わせて適切に崩す。
これが順番です。
最初からオリジナリティを出したくなる気持ちは分かります。
でも、患者さんにとって大事なのは、治療家の個性ではなく、結果と安心です。
自分らしさを出す前に、まずは上手い人の型を入れる。
その型を理解した人だけが、本当の意味で型を破れます。

瀬谷崎













