若手セラピストの問診力をどう伸ばすか|ロールプレイで見えた課題と指導の視点
セラピスト向け
問診は、症状を聞くだけの時間ではない。若手セラピストのロールプレイに出た課題
問診が浅いと、説明も浅くなります。患者さんの生活背景、言葉のトーン、検査の進め方、通院提案の自信。どれも手技とは別物に見えて、実際にはかなり臨床能力そのものです。
問診は「情報収集」ではなく、臨床推論と信頼関係を同時に進める時間です。聞いた情報を患者さん特有の説明に変換できなければ、どれだけ検査や施術ができても納得には届きません。
若手セラピストの問診ロールプレイを見ていると、技術練習だけでは見えにくい課題がかなり出ます。
姿勢は悪くない。検査も一応できている。施術後の変化も出ている。
それでも、患者さんから見た時に「この先生に任せたい」と思えるかどうかは別問題です。
今回の動画では、2年目の鍼灸師スタッフが患者役の瀬谷崎に対して問診・検査・説明を行い、その後にかなり具体的なフィードバックが入ります。
内容としては、若手セラピストだけでなく、問診指導をする院長や教育担当にもかなり使えるテーマです。

まなぶ先生

教子先生

瀬谷崎
問診票とカルテは、ただ埋める紙ではない
動画の前半では、問診票やカルテの役割について触れられています。
不眠、倦怠感、眼精疲労、服薬状況、既往歴など、一見すると腰痛や肩こりと関係が薄そうな項目も確認します。
これは、項目を埋めること自体が目的ではありません。
慢性的な痛みと睡眠の関係、服薬状況から見えるリスク、内科的な背景、患者さん本人が重要だと思っていない情報の拾い上げ。そういったものを見落とさないためです。
慢性痛や回復の遅れに関係する可能性があります。痛む部位だけを聞いていると拾いにくい情報です。
高血圧や頭痛薬、その他の薬の有無は、リスク管理や医療機関への紹介判断にも関係します。
労働時間、睡眠、ストレス、趣味、運動習慣などは、痛みの説明を個別化する材料になります。
評価の抜けを減らすための道具です。全部を機械的に埋めるより、必要な情報を臨床判断につなげることが大切です。
問診票は、患者さんに書いてもらうための紙ではなく、施術者側の見落としを減らすための仕組みです。
そこを理解していないと、問診票はただの事務作業になります。
ロールプレイでは、問診から検査まで一通り行われた
ロールプレイでは、患者役の瀬谷崎が「2週間前くらいから腰痛がある」という設定で進みます。
普段はそこまで腰痛がない。腰全体が気になる。良い姿勢を取ると楽になる。前屈では曲げ始めから痛みが出る。後屈は大丈夫。側屈では途中から痛みが出る。
スタッフはそれらの情報を聞いたうえで、腰そのものより股関節の影響を疑い、検査とアプローチを進めます。
施術後には前屈がしやすくなり、変化そのものは出ています。
症状を聞き、動作で痛みを確認し、見立てを立て、施術後の変化も確認できています。表面的には大きく外していないように見えます。
ただ、フィードバックでは、そこからかなり細かい課題が出てきます。
ここが大事です。
若手のロールプレイは「できたか、できていないか」だけで見ると浅くなります。実際には、声の出し方、リアクション、検査の選び方、説明の個別性、自信の見え方まで含めて見た方がいいです。
声が大きいことと、自信があることは違う
フィードバックのひとつ目は、声のトーンです。
若手のうちは、ちゃんとやろう、ハキハキ話そう、患者さんに不安を与えないようにしよう、と意識しすぎて、声量やテンションで押し切ろうとすることがあります。
でも、それは患者さんから見ると、自然な自信ではなく、力みとして伝わることがあります。
自信は声量ではなく、言葉の選び方、間の取り方、迷わない提案、患者さんの反応を受け止める余裕に出ます。
大きい声で明るく話せばよい、というわけではありません。
逆に、声が小さく、早口で、語尾が曖昧で、提案の前に言い訳が入ると、どれだけ内容が正しくても自信がなさそうに見えます。
問診の練習では、何を聞くかだけでなく、どう聞こえているかも確認した方がいいです。
患者さんの背景に、ちゃんと反応できているか
もうひとつ印象的だったのが、患者さんの背景へのリアクションです。
たとえば、長時間働いている、珍しい趣味がある、格闘技をしている、といった情報が出た時に、ただ情報として処理するだけではもったいない。
患者さんからすれば、それは自分の生活の一部です。
そこに興味を持ってもらえたと感じるか、淡々と流されたと感じるかで、会話の温度は変わります。

まなぶ先生

瀬谷崎
これは雑談力の話ではありません。
生活背景を病態理解に接続するためには、まずその情報にちゃんと気づいている必要があります。
聞いたのに流す。聞いたのに説明に使わない。これはかなりもったいないです。
通院計画は、申し訳なさそうに言うものではない
治療計画や通院期間を伝える場面でも、課題が出ていました。
たとえば「3ヶ月くらい必要です」と伝える時に、施術者側が申し訳なさそうにしたり、来られない前提で話したりすると、患者さんには自信のなさとして伝わります。
もちろん、患者さんの仕事や家庭の事情を無視して押し切る必要はありません。
ただ、専門家として必要だと思う提案をするなら、まずは堂々と伝えるべきです。
患者さんに寄り添うことと、最初から患者さんが通えない前提で提案を弱めることは違います。必要な提案をしたうえで、現実的にどう調整するかを話し合います。
「本当はこれくらい必要です。ただ、現実的にこの頻度ならどう進めるかを考えましょう」
この順番なら、専門家としての提案と患者さんの生活のすり合わせができます。
最初から弱い提案にすると、患者さんは何が必要なのか分からなくなります。
検査は、何度もやれば丁寧になるわけではない
施術の途中で何度も動作テストを繰り返すことについても指摘がありました。
もちろん、介入前後で変化を見ることは大切です。
ただ、何かを少し触るたびに同じテストを繰り返していると、臨床としての流れが悪くなります。
しかも、そのタイミングで結果が大きく変わらないと分かっているなら、テストを増やす意味は薄いです。
仮説を確認するため、介入の効果を判定するため、方針を変えるために行う再テスト。
不安だから何度も確認する、変化が出にくいタイミングで機械的に繰り返す、流れを止める再テスト。
検査は多ければ丁寧、ではありません。
必要な検査を、必要なタイミングで行う。
そこに臨床推論が出ます。
最大の課題は、説明が「その人の話」になっていないこと
今回のフィードバックで最も重要なのは、状態説明の個別化です。
検査結果を説明するだけなら、誰にでもできます。
「股関節が硬いです」
「腰ではなく股関節が原因です」
「ここを改善していきましょう」
これ自体は間違っていなくても、患者さんからすると、自分の話として刺さらないことがあります。
その患者さんの仕事、睡眠、趣味、運動、ストレス、痛みが出る場面と、検査結果をつなげて説明する必要があります。
たとえば、長時間労働があり、睡眠不足があり、ストレスが強く、運動習慣や趣味の負荷もある。
その情報を聞いているなら、説明の中で使わないともったいないです。
「検査ではこうでした」だけではなく、「あなたの場合、この生活背景があるから、ここに負担が集まりやすいと考えています」と言えるかどうか。
ここで患者さんの納得度は大きく変わります。
患者さんが「なるほど、だから自分はこうなっていたのか」と思える説明は、検査結果の暗唱ではなく、生活背景と所見の接続から生まれます。
答えの丸暗記では、問診が説明につながらない
若手のうちは、どうしても研修で教わった答えをそのまま言いたくなります。
こういう姿勢ならここが硬くなる。
この動きならこの筋が関係する。
この検査ならこの所見を見る。
もちろん、最初はそれで構いません。型は必要です。
ただ、患者さんの前で必要なのは、丸暗記した答えを出すことではなく、目の前の人の情報に合わせて言葉を組み直すことです。

教子先生

瀬谷崎
研修で習った知識を、患者さんの生活背景に変換する。
ここが問診力のかなり大きな部分です。
問診も、練習する臨床技術である
問診は、性格やセンスだけで決まるものではありません。
声のトーン、リアクション、質問の順番、情報の拾い方、検査へのつなげ方、説明の組み立て方、通院提案の伝え方。
どれも練習できます。
逆に言えば、練習していない人はなかなか上達しません。
- 患者さんの背景に自然に反応できているか
- 質問がチェック項目の消化になっていないか
- 検査結果を生活背景とつなげて説明できているか
- 通院計画を申し訳なさそうに伝えていないか
- 再テストの回数とタイミングに意味があるか
- 説明が「その人だけの説明」になっているか
このあたりをロールプレイで見ていくと、問診の課題はかなり具体的になります。
「もっと寄り添って」みたいな抽象的な指導より、声量、反応、言葉の順序、説明の個別化まで分解した方が伸びやすいです。
教育担当が見るべきポイント
指導する側は、スタッフの問診を「聞けているかどうか」だけで評価しない方がいいです。
情報は聞けているのに、説明に使えていない。
検査はできているのに、患者さんの納得に変換できていない。
提案内容は悪くないのに、自信がなさそうに見えてしまう。
こういうズレを拾う必要があります。
問診のフィードバックでは、人格ではなく行動を指摘します。「リアクションが薄い」「提案の前に言い訳が入る」「検査結果と生活背景がつながっていない」のように、修正可能な単位まで分解すると練習しやすくなります。
問診指導は、なんとなくの雰囲気論にすると再現性がありません。
どの場面で患者さんの情報を拾い損ねたのか。
どの言葉で自信がなさそうに見えたのか。
どこで説明が一般論になったのか。
そこまで具体化して初めて、次のロールプレイで改善できます。
問診の浅さは、説明の浅さとして返ってくる
問診で聞いた情報を、ただカルテに残すだけでは足りません。
その情報を検査結果とつなげ、患者さんの生活背景とつなげ、その人だけの説明に変換する。
そこまでできて、初めて問診が臨床に使われます。
若手セラピストにとって、問診は避けて通れない壁です。
そして指導する側にとっても、問診をどう見て、どうフィードバックするかは教育力そのものです。

瀬谷崎
参考動画
- 瀬谷崎 将也 | リアル治療家チャンネル「【2年目鍼灸師】スタッフの問診を社長がガチフィードバック」
https://www.youtube.com/watch?v=kwvwUSHWUA8













