重い物を持つと腰が痛い、立ち仕事で重い物を扱う腰痛。症例をスタッフで検討

重い物を持つ仕事の腰痛、なぜ「股関節の伸展」に着目したのか

1つの症例を、担当した塩谷健太先生(とんとん整骨院 ときわ台店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。床から持ち上げる、運ぶといった動作で強くなる腰の痛み。腰そのものでなく、股関節の伸展に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、花屋で働き配達もする50代の男性。十数年前から腰の重さや急な痛みがあり、最近は休みの日も重さが残るようになった方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:重い物を持つ仕事の腰痛、股関節の伸展に着目
今回検討する症例(担当:塩谷先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=仕事中の腰の痛みと、急に来る強い痛み(50代・男性)。背景=十数年前から腰の重さや急な痛みがあり、最近は休みの日も重さが残る。花屋で床から花を持ち上げたり、配達で車から降りる際に強く出る。保険の接骨院に通っていた。所見=前かがみ、椅子からの立ち上がり、重い荷物を運ぶときに痛み、後屈や側屈で腰に鈍い痛み、股関節の伸展・側屈の制限、大殿筋の延長。とらえ方=股関節の伸展が制限され、腰で伸展を代償していたことが腰への負担につながっていたと考えた。対応=大腿直筋・大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)をゆるめ、大殿筋を働かせるトレーニング、疼痛抑制の電気施術、ストレッチのセルフケア指導。経過=反る動作での痛みが軽減してきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

重い物を持つ仕事の腰痛、原因は股関節の伸展制限か

主訴は重い物を扱うときの腰の痛み。けれど塩谷先生は、腰そのものより、股関節の伸展に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

塩谷先生塩谷先生

主訴は床から持ち上げる、運ぶといった動作での腰の痛みでした。所見をとると股関節が後ろへ伸びにくく、お尻が使えていませんでした。痛む腰そのものより、伸びない股関節とお尻に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

重い物を持つ仕事だと、腰そのものに負担がかかっている気がします。それでも股関節に目を向けたのはなぜですか。

塩谷先生塩谷先生

物を持ち上げて立ち上がる動きは、本来は股関節とお尻が伸びて力を出します。そこが使えないと、足りない分を腰の反りで補う。だから持ち上げや立ち上がりで腰に負担が集中する、という像が所見と一致したんです。

床から持ち上げる動作で、なぜ腰に負担が集まるのか

この方は持ち上げや立ち上がりで強く出る、という出かたでした。そこを確かめます。

教子先生教子先生

十数年前から続いて、休みの日も重さが残る、というのは気になりますよね。安静にしても引かない痛みや、足のしびれ、力の入りにくさといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

塩谷先生塩谷先生

そこは確認しました。足への神経症状や安静時の強い痛みはなく、痛みは持ち上げや反る動作で再現しました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

持ち上げる動きで股関節とお尻が伸びないと、腰を反って力を出すことになり、負担が集まる。長年それを繰り返してきた背景もありそうですね。危険なものを外したうえで、股関節とお尻の使い方に絞る。筋道が通っていると思います。

重い物を扱う動作に強い体にする介入と経過

腰を直接ゆるめるだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

腰そのものでなく、股関節とお尻の使い方を変えていったんですね。

塩谷先生塩谷先生

はい。硬くなった太ももの前側をゆるめ、電気施術で痛みも抑えつつ、お尻を働かせられるようにしました。持ち上げるときに股関節とお尻で力を出せるよう、使い方も確認しています。反る動作での痛みが軽くなってきました。重い物を持つ仕事なので、股関節の柔軟性とお尻の筋力づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

持ち上げる負担を、腰の反りでなく股関節とお尻に戻しにいっているのが要点ですね。力の出し方が変われば腰の負担は下がる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ重い物を扱う仕事が続くので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:股関節の伸展からとらえる重い物を持つ仕事の腰痛

所見という事実(股関節の伸展制限・大殿筋の弱さ・持ち上げや反る動作での痛み)と、経過という結果(反る動作での痛みの軽減)。この両方が、「腰そのものでなく股関節の伸展に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。持ち上げる動きで股関節とお尻が伸びないと、腰を反って力を出し負担が集まる。危険なものを外したうえで、力の出し方から出どころを絞る。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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