正座やしゃがみで膝の前が痛い、曲げると出る膝の痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

正座やしゃがみで痛む膝、なぜ「股関節と足首の硬さ」に着目したのか

1つの症例を、担当した川口流世先生(とんとん整骨院 下板橋店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。正座やしゃがみができず、歩くと膝の前が痛む状態。膝そのものだけでなく、股関節と足首の硬さ、お尻の支えの弱さに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、定年退職後にトレーニングを始めてから右膝の前が痛くなった60代の男性。歩行や膝を曲げる動作で痛み、正座やしゃがみができない方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:正座やしゃがみで膝の前が痛い、股関節と足首の硬さに着目
今回検討する症例(担当:川口先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=右膝の前の痛み。歩行時や膝を曲げる動作で痛み、正座・しゃがみができない(60代・男性)。背景=定年退職後にトレーニングを始めてから痛みが出た。所見=膝を曲げる動作・歩行の荷重で右膝の前に痛み、股関節と足関節(足首)の可動域の制限、臀部(お尻)の筋出力の低下、股関節・足首の制限による膝への代償的な負荷。とらえ方=股関節と足首の硬さに、お尻の筋力低下が重なり、右膝の前へ負担が集中していたと考えた。対応=股関節・足首の可動域を広げる手技、お尻の筋力づくり、患部の疼痛抑制の電気施術(ハイボルト)、中期以降は腰・臀部・内ももへの鍼、トレーニング量の調整と膝に負担をかけない動作の指導。経過=初回は変化が乏しかったが、数回で痛みが少しずつやわらぎ、歩行時の痛みは来院時の半分ほどに。一週間で戻りやすい時期を経ながら、歩行や曲げる動作での痛みが落ち着いてきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

正座やしゃがみで膝の前が痛い、原因は股関節と足首の硬さか

主訴は膝の前の痛みと、正座やしゃがみができないこと。けれど川口先生は、膝そのものより、股関節と足首の硬さに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

川口先生川口先生

主訴は右膝の前の痛みで、正座やしゃがみができませんでした。所見をとると、股関節も足首も動きが硬く、お尻の支えも弱くなっていました。痛む膝の前そのものより、上と下の硬さで膝にしわ寄せが来ているのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

退職後にトレーニングを始めてから痛くなった方ですよね。膝そのものを痛めたわけではないのですか。

川口先生川口先生

もちろん膝の状態は確かめます。そのうえで、しゃがむ・曲げる動きは、股関節と足首も一緒に曲がって膝の負担を分け合います。そこが硬いと、足りない分を膝の前が引き受ける。運動量が増えたことで、その負担が表に出た、という像が所見と合っていました。

なぜ正座やしゃがみができないのか

この方は、深く曲げる動作ができない、という出かたでした。そこを確かめます。

教子先生教子先生

正座やしゃがみができないと、半月板や膝の中の問題も気になりますよね。急に膝が動かなくなって伸びない(引っかかり)、力が抜ける、急に腫れる、といった、医療機関で確かめたい様子はなかったですか。

川口先生川口先生

そこは確認しました。引っかかって伸びなくなる、急に腫れる、力が抜ける、といった様子はなく、痛みは曲げる角度と荷重に応じて変わりました。こうした様子があれば医療機関での評価をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

深く曲げられないとき、膝の中の問題はまず外しておきたいですよね。引っかかりや急な腫れ、脱力を確かめたうえで、上と下の硬さに絞る。運動を始めた時期と重なるのも、分担の崩れが表に出たと考えると筋が通ります。順序が妥当だと思います。

膝を曲げる動作に戻すための介入と経過

膝そのものを無理に曲げにいくのでなく、上と下から、というのが今回の要点でした。初回は変化が乏しかった、という正直な経過もありました。

まなぶ先生まなぶ先生

最初はあまり変わらなかったけれど、続ける中で変わっていったんですね。

川口先生川口先生

はい。初回は痛みの変化が乏しかったのですが、股関節と足首をゆるめ、お尻を使えるようにして、膝への負担を減らしていきました。歩行時の痛みが半分ほどになり、一週間で戻りやすい時期もありましたが、曲げる動作も少しずつ楽になっています。運動を続けたい方なので、量の調整と柔軟性づくりを一緒に続けています。

瀬谷崎瀬谷崎

一度で大きく変わるものばかりではないですよね。上と下の硬さを変えて、膝に集まっていた負担を分け直す。戻りやすい時期を挟みながらも落ち着いてきた経過が、その方向を支えています。運動を続ける方なので、負担のかけ方も含めて、無理のない範囲で見ていきたいところです。

考察:股関節と足首の硬さからとらえる、正座やしゃがみで痛む膝の前

所見という事実(股関節と足首の可動域制限・お尻の筋力低下・曲げる動作と荷重での膝前面の痛み)と、経過という結果(初回は乏しかった変化が、続ける中で歩行時の痛みが半分ほどになり落ち着いてきたこと)。この両方が、「膝の前そのものでなく股関節と足首の硬さに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。深く曲げられないときは膝の中の問題をまず外す。そのうえで、上と下の動きを取り戻し、膝に集まる負担を分け直す。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。一度で変わらなくても、分担を変えていく方向が経過に表れています。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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