座っていると腰が痛い、長く座っていられない腰痛をどう考えるか。症例をスタッフで検討

座っていられない腰痛、なぜ「股関節とお腹の支え」に着目したのか

1つの症例を、担当した中村拓真先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。1時間も座っていられないほどの腰の痛み。腰そのものでなく、股関節の硬さとお腹の支えの弱さに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、デスクワーク中心で、座っていると腰が痛くなる30代の女性。1か月ほど前から、1時間も座っていられないほどになった方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:座っていられない腰痛、股関節とお腹の支えに着目
今回検討する症例(担当:中村先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=座っていると悪化する腰の痛み(30代・女性)。背景=1か月ほど前から、仕事中に座っていると腰が痛み、1時間も座っていられないほどに。デスクワーク中心。所見=後ろに反らす動きで腰に強い痛み、左への側屈で症状が誘発、起き上がりでも痛み、股関節の伸展・内転・外転の制限、腹斜筋(ふくしゃきん・お腹の横の筋肉)の筋力低下、腰椎を反らせて補う代償動作。とらえ方=股関節の硬さとお腹まわりの支えの弱さで、座る姿勢のときに腰へ負担が偏っていたと考えた。お尻の筋力低下をかばう形で股関節が硬くなっていた可能性。対応=股関節の可動域を広げる手技、体幹(お腹)とお尻の筋力づくり、自宅での太もも前の筋(大腿直筋・大腿筋膜張筋)のストレッチ。経過=1〜4回で「8時間座っていても大丈夫だった」と座位の負担感がやわらぎ、5〜9回で繰り返していた腰の痛みが出にくくなった。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

座っていると腰が痛い、原因は股関節とお腹の支えか

主訴は座っていられないほどの腰の痛み。けれど中村先生は、腰そのものより、股関節の硬さとお腹の支えの弱さに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

中村先生中村先生

主訴は座っていると悪化する腰の痛みで、1時間も座っていられないほどでした。所見をとると、股関節の動きが硬く、お腹まわりの支えが弱くなっていました。腰そのものより、座る姿勢のときに股関節とお腹が支えきれず、腰へ負担が偏っているのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

座っていると痛いと、腰そのものに負担がかかっている気がします。それでも股関節やお腹に目を向けたのはなぜですか。

中村先生中村先生

座る姿勢は、股関節が曲がった状態で骨盤と背骨を支え続けます。股関節が硬く、お腹の支えが弱いと、骨盤がうまく立たず、腰の骨を反らせて補うことになる。座り続けるほどその負担がたまる、という像が、後ろに反らすと強く痛む所見とも合っていました。

立っているより、座っている方がつらいのはなぜか

この方は、座っていられない、という場面のはっきりした出かたでした。そこを確かめます。

教子先生教子先生

立つより座る方がつらい、というのは場面がはっきりしていますよね。お尻から脚にかけてのしびれや力の入りにくさ、安静にしても引かない痛みといった、医療機関で確かめたい様子はなかったですか。

中村先生中村先生

そこは確認しました。脚への神経症状や安静時の強い痛みはなく、座る姿勢や反らす動きで再現する痛みでした。こうした様子があれば医療機関への受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

座る姿勢は股関節が曲がって骨盤が後ろに傾きやすく、お腹の支えが弱いと腰で踏ん張ることになりますよね。立つより座る方がつらい、というのはその負担のかかり方と合っています。しびれや脱力を外したうえで、股関節とお腹の支えに絞る。順序が妥当だと思います。

長く座れる体にする介入と経過

腰を直接ゆるめるだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

腰そのものでなく、股関節とお腹の支えから整えていったんですね。

中村先生中村先生

はい。硬くなった股関節まわりをゆるめ、お腹とお尻の支えを働かせて、座る姿勢で腰に負担が偏らないようにしました。早い段階で『8時間座っていても大丈夫だった』とお話があり、繰り返していた痛みも出にくくなっています。座り仕事が続く方なので、体幹とお尻の筋力づくり、股関節の柔軟性づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

座る姿勢を支える土台を、股関節とお腹から立て直しているのが要点ですね。支えが働けば、長く座っても腰だけが踏ん張らずにすむ。早い段階で座っていられる時間が変わってきた経過も、その方向を支えています。座り仕事は続くので、ケアを続ける前提で見ていきたいところです。

考察:股関節とお腹の支えからとらえる、座っていられない腰痛

所見という事実(股関節の可動域制限・お腹の筋力低下・後屈での強い痛みと腰椎の代償)と、経過という結果(早い段階で長く座っていられるようになり、繰り返していた痛みが出にくくなったこと)。この両方が、「腰そのものでなく股関節とお腹の支えに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。座る姿勢は、股関節が曲がり骨盤が後ろに傾きやすく、お腹の支えが弱いと腰で踏ん張ることになる。しびれや脱力を外したうえで、座位で腰に偏る負担を、股関節とお腹の支えに分け直す。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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