しゃがむと腰が痛い、立ったりしゃがんだりが多い仕事で出る腰痛をどう考えるか。症例をスタッフで検討

しゃがみ姿勢で出る腰の痛み、なぜ「股関節の硬さと支える力」に着目したのか

1つの症例を、担当した鈴木英二先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。しゃがんだときや掃除機をかけるときに強まる腰の痛み。腰そのものでなく、股関節の硬さと腰を支える力の弱さに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、保育のお仕事で立ったりしゃがんだりが多い50代の女性。1ヶ月ほど前から腰の重さと痛みが出て、しゃがみ姿勢や掃除機で強まり、2〜3日に1回ほどお尻や脚にしびれのような感覚も出ていた方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:しゃがみ姿勢で出る腰の痛み、股関節と支える力に着目
今回検討する症例(担当:鈴木先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=しゃがんだときや掃除機をかけるときに強まる腰の痛み。2〜3日に1回ほど、お尻や脚にしびれのような感覚も出ていた(50代・女性)。背景=保育のお仕事で立ったりしゃがんだりが多く、1ヶ月ほど前から腰の重さと痛み。座っていると痛むため、趣味のキャンプもつらかった。所見=前屈・側屈で腰から臀部に痛みやしびれのような症状、股関節の屈曲制限、多裂筋(たれつきん)の出力低下、長時間の座位や前かがみによる姿勢の崩れ(股関節の制限を腰の曲げで代償)。とらえ方=硬い股関節の分を腰が深く曲げて補い、腰を支える多裂筋の働きも落ちていたことで、腰に負担が集中していたと考えた。対応=ハムストリングスなどをゆるめる手技、多裂筋の出力を高める運動、物理療法、しびれが落ち着いてからのストレッチ指導、同じ姿勢を続けない工夫。経過=来院間隔が空くと戻りやすかったが、しゃがみ作業や掃除機での痛みが落ち着いてきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

しゃがむ・前かがみで腰が痛む、原因は股関節の硬さと支える力か

主訴はしゃがむと強まる腰の痛み。けれど鈴木先生は、腰そのものより、股関節の硬さと腰を支える力の弱さに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

鈴木先生鈴木先生

主訴は、しゃがんだときや掃除機をかけるときに強まる腰の痛みでした。保育のお仕事で、立ったりしゃがんだりを一日じゅう繰り返す方です。所見をとると、股関節の曲がりが硬くて、その分を腰が深く曲げて補っていました。さらに腰を支える多裂筋の働きが落ちていました。痛む腰そのものより、硬い股関節と支える力の弱さに出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

しゃがむと腰が痛いと、腰そのものを痛めたように思えます。それでも股関節に目を向けたのはなぜですか。

鈴木先生鈴木先生

しゃがむ動作は、本来は股関節と膝が深く曲がって、腰の曲がりは少なくてすみます。股関節が硬いと、足りない分を腰の曲げで補う。長く曲げた姿勢が続くほど、腰の同じところに負担が集まります。掃除機やしゃがみ作業で痛みが強まる、という出かたが、その像と一致したんです。

ときどき出るお尻や脚のしびれを、どう確かめたか

この方は、2〜3日に1回ほど、お尻や脚にしびれのような感覚も出ていました。しびれは丁寧に確かめるべきところです。

教子先生教子先生

お尻や脚にしびれのような感覚も出ていた、とのことですよね。しびれがあると気になります。念のため、脚の力が入りにくい、しびれがどんどん広がる、安静にしても強く痛む、排尿や排便のしにくさといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

鈴木先生鈴木先生

そこは確認しました。脚の力の入りにくさや、しびれが強く広がること、安静時の強い痛みや排尿・排便の変化はなく、しびれも前かがみや側屈の動作に伴って一時的に出るものでした。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめたうえで、しびれの強い時期は無理に動かさず進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

腰を深く曲げた姿勢が続くと、腰の前のクッション(椎間板)や近くを通る神経に負担がかかって、動作のたびにお尻や脚へ一時的なしびれとして出ることがあるんですよね。動きに伴って出て安静で引く、というのもその範囲と合います。ただしびれは丁寧に確かめるべきところなので、危ないサインを外したうえで進める、という順序が大事です。

しゃがむ動作を繰り返す仕事で再発させないための介入と経過

その場の痛みをとるだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

その場の痛みをとるだけでなく、股関節や支える力のほうから整えていったんですね。

鈴木先生鈴木先生

はい。硬かったハムストリングスなどをゆるめて股関節が曲がりやすいようにしつつ、腰を支える多裂筋を使えるようにしました。しびれが落ち着いてからはご自宅でのストレッチも加えています。来院の間隔が空くと戻りやすかったので、同じ姿勢を続けすぎないことも意識してもらって、しゃがみ作業での痛みが落ち着いてきました。

瀬谷崎瀬谷崎

痛みの出どころを、腰そのものでなく、硬い股関節と支える力の弱さに戻して整えにいっているのが要点ですね。股関節が動いて腰を支えられれば、同じしゃがみ作業でも腰の一点に負担が集まりにくくなる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただしゃがむ動作の多いお仕事なので、支える力づくりは続ける前提で見ていきたいところです。

考察:股関節の硬さと支える力からとらえるしゃがみ姿勢の腰痛

所見という事実(股関節の屈曲制限・多裂筋の出力低下・前屈や側屈での腰から臀部の症状)と、経過という結果(しゃがみ作業や掃除機での痛みが落ち着いてきたこと)。この両方が、「腰そのものでなく、硬い股関節と腰を支える力の弱さに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。しゃがむと腰が痛むのは、硬い股関節の分を腰が深く曲げて補い、支える力も足りないため。その場をゆるめるだけで終わらせず、股関節の動きと腰を支える力を整える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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