バスケをする14歳の、荷重時だけに出る股関節前面部痛。他動運動で無痛なら収縮時痛から原因筋を絞り込む
セラピスト向け
伸ばされて痛いのか、働いて痛いのか。荷重時痛の読み方
バスケットボールをしている14歳の女子。練習で走った後から股関節の前あたりが痛み、体重をかけると強く痛む。ところが股関節を他動で動かしても、どの方向にも痛みが出ない。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった相談をもとに、荷重時にだけ出る痛みから原因筋を絞り込む評価の組み立てを考えます。
相談されたのは、バスケットボールをしている14歳の女子の症例です。1日練習した日の後から、ASIS(上前腸骨棘)の一横指ほど内側のあたりを起点に、腸骨稜の縁に沿って中ほどまでの範囲が痛くなりました。本人は、走った後くらいから痛み出した気がすると話しています。
目立つのは荷重時の痛みです。体重をかけると強く痛み、圧痛はスカルパ三角(大腿三角)の周辺にあって、担当者はおそらく腸腰筋のあたりだろうと見ていました。発症からはすでに1か月ほど。痛み自体は落ち着いてきているものの、すっきりとは戻らないまま経過している、という相談でした。
- 痛む範囲はASIS(上前腸骨棘)のやや内側から、腸骨稜の縁に沿って中ほどまで
- 体重をかけると強く痛む。圧痛はスカルパ三角(大腿三角)の周辺
- 他動の股関節運動(屈曲・内転・外転・回旋)では痛みが出ない。強く伸ばすと突っ張る感じが出る程度
- 初期には他動の屈曲・内転で痛みがあったが、経過の途中で消えている
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎「伸展で痛い」を、歩行のどの局面かまで具体化する
検討がまず立ち止まったのは、動作の表現でした。当初の訴えは「股関節の伸展で痛い」に聞こえます。ところが詳しく聞き直すと、痛むのは左足を前に出して、右足に体重が乗ってくる瞬間。つまり患側の立脚中期に、荷重がかかったときの痛みでした。
関節運動としての伸展が痛いのではなく、荷重そのものが痛い。この言い換えができた時点で、確かめるべきストレスの種類が変わります。実際、股関節の他動運動は屈曲・内転・外転・回旋のいずれも無痛で、関節を動かすこと自体は痛みの条件になっていませんでした。
患者さんの「伸展で痛い」は、関節運動の伸展とは限りません。どちらの足に体重があり、反対の足がどこにあるか、歩行のどの局面かまで具体化すると、かかっているストレスの正体が見えてきます。
他動で無痛という所見は、収縮時痛を指す
筋の痛みを疑うなら、伸長時痛か収縮時痛のどちらかがあるはず。これが検討で確認された前提です。本例では他動運動、つまり筋が伸ばされる方向のストレスはどの方向でも無痛でした。伸長ストレス系の検査は、おそらくそろって陰性です。
残るのは収縮時痛の線です。荷重を支えるのは筋の収縮ですから、荷重したときにだけ痛むという出方は、収縮時痛のイメージとよく重なります。一方で、痛む場所の訴えは範囲が広くぼんやりしていて、どの筋が疼痛源かまでは絞れていません。
そこで示されたのが、立脚中期に収縮している筋を挙げて、一つずつ確かめる手順です。腸腰筋や内転筋群、体幹側では腹斜筋の下部など、痛む範囲に関わる候補を並べ、それぞれについて伸長時痛と収縮時痛を確認していきます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎抵抗の強度と収縮様式を変えて、一つずつ確かめる
荷重で強く痛む症例でも、ベッド上の軽い検査では再現できないことがあります。荷重時に筋へかかる負荷は、重力だけの自動運動よりずっと大きいからです。検討で示された確認の流れは、次のようになります。
- 候補の筋を挙げる痛む動作(立脚中期の荷重)で収縮する筋と伸長される筋、関わる関節運動を書き出し、痛む範囲と突き合わせて候補をしぼります。
- 伸長時痛を確かめる候補の筋を個別に伸ばして再現を見ます。本例は他動運動が全方向で無痛だったため、ここはそろって陰性の見込みです。
- 収縮時痛を弱い条件からまず自動運動、次に徒手での抵抗と、負荷を段階的に上げながら痛みの再現を確認します。
- 強い抵抗・遠心性収縮まで上げる軽い抵抗で出なければ、強い抵抗や遠心性収縮まで条件を上げます。どの条件で再現されるかが、痛めている筋と程度の手がかりになります。
この流れは特別な検査ではなく、日常動作の動診から、その動作で収縮する筋・伸長される筋を挙げてストレス別に確かめるという、評価の基本の手順をそのまま通すものです。検討の場でも、この順で進めればスムーズにいくはずだ、という確認がされました。
個別選択的なストレッチとトレーニングで、反応を見ながら絞り込む
候補の筋がしぼれてきたら、次は介入の形で確かめます。関節運動として大きく動かすのではなく、この筋だけを狙って伸ばす、この筋だけをできるだけ選択的に縮める。個別選択的なストレッチやトレーニングを試し、症状の反応を見ながら、どこが疼痛源なのかの見当を付けていきます。
どの筋を痛めているかが分かれば、施術の中身もそこから具体化できます。本例は転帰までは共有されておらず、この確認を進めていく方針になりました。なお、成長期の股関節前面部痛では骨端線(成長軟骨)由来など骨側の問題が隠れていることもあるため、痛みが長引く・強まる場合は整形外科での評価を勧める前提は崩せません。診断は医師の領分です。
瀬谷崎





