全身がだるくて眠れない。検査で異常が出ない訴えに、院として何を用意するか
セラピスト向け
運動器の枠の外にある訴えと、受け皿のつくり方
全身がだるくて眠れない、たまに首もつらい。MMT(徒手筋力検査)でも神経学的チェックでも異常が出ないのに、ご本人は確かにつらい。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった相談をもとに、運動器の評価に収まらない訴えを院としてどう受けるかを考えます。
相談を挙げたのは他院の先生です。全身がだるくて眠れず、たまに首がつらくなるという方が来院しました。首の伸展でしびれや痛みが誘発されるような、力学的に説明のつく症状ではありません。MMT(徒手筋力検査)を一通りとり、神経学的チェックも行いましたが、異常は出ませんでした。それでもご本人のつらさの訴えは一貫しています。
その院では通常の施術枠とは別に長めの全身コースを用意していて、時間をかけて話を聞きながら、マッサージや物理療法も含めて対応したそうです。リラクゼーション的な要素の強い対応になったが、他の院ではこうした方をどう受けているのか、というのが相談の中身でした。
- 主訴は全身のだるさと不眠。首のつらさは時々出る程度
- MMT(徒手筋力検査)・神経学的チェックはいずれも異常なし
- 動作や姿勢で症状が再現されず、力学的な仮説と結びつきにくい
- 検査結果と、ご本人が訴えるつらさの強さが釣り合っていない
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎検査がそろって陰性のとき、訴えをどの枠で扱うか
MMT(徒手筋力検査)も神経学的チェックも陰性という結果は、評価の失敗ではありません。この訴えは運動器の枠の外にあるかもしれない、という情報です。ここで無理にバイオメカニクス(生体力学)の物語を組み立てて施術の根拠にすると、手応えのない介入を重ねることになりがちです。陰性は陰性のまま、枠を切り替える合図として扱います。
そして枠を切り替えるなら、最初に置くべきは医科の確認です。強いだるさや不眠は、内科的な疾患が背景にあることもあります。医療機関の受診状況を問診で確かめ、未受診であれば内科での確認を勧めたうえで、院でできることを並行して考えていきます。
全身のだるさや不眠のような訴えは、内科的な原因の除外が前提です。受診歴を確かめ、未受診なら受診を勧めてから、院で担える範囲を考えます。診断は医師の領分です。
受け皿は二つ。東洋医学の枠組みと、長めの全身コース
検討の場で共有された対応は、大きく二つでした。ひとつは鍼灸への誘導です。自律神経系にかかわる訴えについては、東洋医学的な評価と介入の枠組みを持つ鍼灸師につなぐ、という考え方です。実際、連携している鍼灸院には、眠れない、原因のはっきりしないだるさが続く、といった訴えの方が多く来院しているそうで、そうした相談を受ける場として機能しています。効果を約束する位置づけではなく、体調の相談ができる場としての選択肢です。
もうひとつは、施術時間を長めに設計したリラクゼーション主体のコースです。20分程度の枠では、体の話をゆっくり聞く時間が確保しにくい。そこで時間を延ばした全身コースや、ヘッドスパのようなリラクゼーション系のメニューを用意して、そちらへ案内するという形です。
教子先生
まなぶ先生
瀬谷崎生活の訴えと絡めて、体調を追う定点にする
だるさ単独では手がかりが少なくても、朝起きるのがしんどい、眠りが浅い、といった生活の訴えが並んでいることは多いものです。検討の場では、そうした生活面の訴えが少しでもあれば、そこと絡めながら経過を追うという臨床印象が共有されました。施術の場が、体調の変化をご本人と一緒に確認する定点になります。
相談に挙がった方は、30代の音楽家の男性でした。今年に入って全身のだるさが強まり、集中力が落ちて楽譜を読み飛ばすことが出てきたそうです。うつ病の治療を1年半続けて、ようやく回復してきた時期でもありました。眠れないことに加えて飲み込みづらさもあり、耳鼻咽喉科では慢性上咽頭炎と診断されて治療中で、ストレスの関与も指摘されていたといいます。医科がすでにかかわっている状態での来院でした。
初回の施術後、ご本人からメッセージで、体の変化を感じた、今後も通いたいという連絡があったそうです。相談の場では、2週間に1回程度の全身メンテナンスとして続けていく方針で進めることになりそうだ、という報告でした。
治療の枠で約束を積むのではなく、2週間に1回程度の全身メンテナンスとして提案する。リラクゼーションと体調の相談の場という位置づけなら、検査で異常が出ない訴えにも無理のない通い方を示せます。
位置づけを保ったまま、定期的な接点を持つ
この通い方で大事なのは、位置づけの線引きです。あくまでリラクゼーションと体調の相談の場であり、施術で訴えを解消できると請け合う場ではありません。経過の中で新しい症状が出れば評価をやり直し、内科的な疑いが強まれば医科へ送る。その線を保ったまま定期的な接点を持っておくことが、こうした訴えの方への現実的な関わり方になります。
瀬谷崎





