捻挫後・アキレス腱術後に残る突っ張り感。組織の同定と除外で絞り込む評価
セラピスト向け
痛みは引いたのに突っ張る。切り分けの手順を2症例で考える
ケガや手術のあとに、痛みはもう無いのに突っ張り感だけが残る。押しても痛くない、可動域もほぼ戻っている、それでも本人は気になり続ける。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスの同じ回に、この訴えの相談が2件並びました。足関節捻挫後のブレイクダンサーと、アキレス腱断裂術後の舞台役者。2症例の検討から、突っ張り感という主観の訴えをどう評価し、どこまで絞り込めるかを考えます。
1例目は20代の女性で、職業はブレイクダンサーです。6日前の練習中に内返しで捻挫。程度は1度相当で、炎症は翌日には落ち着き、固定はせずに翌日からダンスを再開しています。来院時に痛みはなく、主訴は底屈したときに足関節前面へ出る突っ張り感でした。
- 圧痛は一切なし。前距腓靭帯(ATFL、内返し捻挫で傷みやすい外側の靭帯)の圧痛もなし
- 底屈可動域の左右差は、当初あったものがほぼ解消している
- 前脛骨筋や足趾の伸筋群への運動療法・温熱を行うと、突っ張り感の場所が前面から足背へ、次は下腿中間へと移っていく
- 前脛骨筋を押さえたまま底屈すると楽になる、と本人が答えている
担当者は、原因と疑う筋を押さえた状態で動いてもらい症状の増減を見る確認(とんとんで使っている確認検査の呼び名で、ANO(アノ)テストと共有している手順です)を場所が変わるたびに行っており、前面でも下腿中間でも、楽になるのは前脛骨筋を押さえたときでした。それでも施術のたびに突っ張る場所が移り、本人が納得できる着地に届かないという相談です。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎足趾の肢位を変えた底屈で、前脛骨筋か長趾伸筋かを分ける
前脛骨筋は足趾を越えない筋、長趾伸筋は足趾まで届く筋です。この付着の違いを使うと、どちらの腱が突っ張りの発生源かを動きで切り分けられます。
- 足趾屈曲位での底屈足趾を曲げたまま底屈してもらう。長趾伸筋が発生源なら、伸張が強まるこの肢位で突っ張り感や制限が強く出ると予想できます。
- 足趾背屈位での底屈足趾を反らしたまま底屈してもらう。長趾伸筋がゆるむ肢位なので、長趾伸筋由来ならこちらでは楽になるはずです。
- 母趾だけでなく4趾でも比べる母趾側だけの確認では長母趾伸筋しか動かせていません。2〜5趾まで含めて曲げた肢位でも同じ比較をします。
本例では、この比較をしても「そんなに変わらない」という返答でした。検討の場では、この変わらないという返答自体を重要な情報として扱っています。足趾の肢位に影響されないなら足趾まで届く筋の線は引っ込み、やはり前脛骨筋の線が残る、という読み方です。
残った候補を、条件と確認でひとつずつ外す
前脛骨筋腱に絞れたとして、腱のまわりで何が起きているのか。ここからは候補を並べて、成立条件が欠けているものを外していきます。
まず癒着です。本例は固定をしておらず、受傷翌日からダンスを再開しています。長期の不動という癒着が固まる条件がそろっていないため、この線は薄いと考えられます。そのうえで、皮膚の滑走性はどうか、突っ張り感が表面寄りなのか奥のほうなのか、本人の主観を言葉で確かめておきます。
次に骨性の詰まりです。本例は背屈での詰まり感がなく、距骨が関節内で引っかかっている絵は描きにくい状態でした。距骨を後方へ押し込んだ状態で底屈してもらい、それでも突っ張り感が変わらなければ、骨性の要因はさらに考えにくくなります。
受傷直後の数日は、痛みを避ける歩き方で前脛骨筋を普段より使っている場合があります。その一過性の使いすぎによる張りなら、数日で自然に消えていくこともある、という見方が検討の場で臨床印象として共有されました。介入を重ねるだけでなく、少し待って経過を見る判断も選択肢に入ります。
こうして除外を重ねた結果、本例は前脛骨筋腱の滑走性の改善、具体的には腱の上の皮膚を軽くつまんだり押さえたりしながら自動運動を行う方法を中心に置く方針になりました。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎アキレス腱断裂術後2ヶ月半、舞台に立つ人の突っ張り感
2例目は30代の男性で、舞台役者です。舞台から落ちてアキレス腱を断裂し、縫合術を受けて約2ヶ月半。痛みは取れたものの、10日ほど前から再開した舞台稽古で突っ張り感がどうしても取れない、という相談でした。
検討の場では、この時期に軽い可動域制限や突っ張り感が残るのは一般的な経過という見方がまず共有されました。異常事態として追いかけるより、修復途中の腱に伴う症状として扱い、そのうえでできることを積む段階です。
徒手と物療では、アキレス腱の滑走改善が候補に挙がりました。腱を把持した状態での足関節の自動底背屈、強度を上げるなら背屈時に腱を持ってスライドさせるように動かす操作です。温熱と運動療法を組み合わせるとよい、という印象も検討の場で共有されています(いずれも臨床印象で、効果を約束するものではありません)。バイオメカニクスの面では、ハムストリングスの柔軟性をSLR(下肢伸展挙上テスト)などで評価しておくことも関連として挙がりました。
術後例では、介入の中身より先に確認すべきことがあります。
- 運動強度がどこまで許可されているか。高負荷のカーフレイズ(かかと上げ)や軽いジャンプが許可される時期の目安はあるが、実際の可否は医師の判断
- 術後の通院が続いているか。本例はリハビリのみで医師の診察から足が遠のいており、受診を続けるよう勧める
- 実際の活動量。稽古再開のような負荷の跳ね上がりを本人任せにしない
この方は職業柄、舞台の予定に合わせて無理をしがちです。検討では、完全な運動復帰はもう少し先という時期の読みを共有したうえで、片足カーフレイズのような段階的な負荷から積み、医師の指示を確認しながら進める方針になりました。焦りに引っ張られず段階を守ってもらう指導も、介入の一部です。
突っ張り感という訴えは、そのままでは掴みどころがありません。しかしどの組織かを同定し、成立しない候補を除外していくと、皮膚をつまみながらの自動運動、腱を把持しての滑走操作といった具体的なアプローチに変わります。術後例ではそこに、時期の見立てと医師の許可範囲の確認が加わります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎




