脊柱管狭窄症で膝裏を押す?脛骨神経圧迫テストという補助所見
セラピスト向け
膝裏の圧痛が、狭窄症評価のヒントになることがある
脊柱管狭窄症というと、腰や脚のしびれ、間欠性跛行に目が向きます。でも、膝窩部で脛骨神経を圧迫した時の圧痛が、評価の参考になることがあります。

膝裏の圧痛だけで脊柱管狭窄症を判断するわけではありません。ただ、歩行時症状や神経学的所見と合わせることで、見立てを整理する材料になることがあります。
脊柱管狭窄症を疑う時、よく確認されるのは歩行時の症状です。
歩くと脚がつらくなる。休むと楽になる。前かがみや座る姿勢で落ち着きやすい。
こうした訴えは、いわゆる間欠性跛行の見方として大切です。
ただ、それだけではありません。
腰椎椎間板ヘルニアなどで知られるヴァレーの圧痛点のように、神経の走行上に圧痛が出ることがあります。
脊柱管狭窄症でも、特に膝窩部で脛骨神経を圧迫した時の圧痛が目立つことが報告されています。

まなぶ先生

瀬谷崎
脛骨神経圧迫テストとは何を見るものか
脛骨神経圧迫テストは、膝窩部で脛骨神経を圧迫し、その圧痛の有無や強さを確認する検査です。
腰部脊柱管狭窄症では、神経根や馬尾神経の圧迫が関係します。
その影響が末梢の神経走行上の圧痛として現れる可能性があり、膝窩部の脛骨神経圧迫がスクリーニングとして検討されています。
ある研究では、腰部脊柱管狭窄症の患者で膝窩部の脛骨神経圧痛が高い割合でみられたと報告されています。
ここで大事なのは、検査を「決め手」として使うのではなく、狭窄症を疑う材料のひとつとして扱うことです。
検査は答えを出す魔法ではありません。問診や他の所見と合わせて、可能性を上げたり下げたりする道具です。
膝裏を押して痛いから狭窄症。
膝裏が痛くないから狭窄症ではない。
そういう単純な使い方は避けたいところです。
ヴァレーの圧痛点をどう捉えるか
ヴァレーの圧痛点は、神経痛などで神経の走行に沿って圧痛がみられる考え方として知られています。
腰椎椎間板ヘルニアなどの坐骨神経痛で、臀部や坐骨神経の走行上に圧痛が出ることがあります。
脊柱管狭窄症でも、同じように神経の走行上の圧痛が見られる可能性があります。
特に膝窩部は、脛骨神経が通る場所です。
そこに圧痛があるかどうかを確認することで、神経の過敏性や関与を考える参考になります。
圧痛点があることは、神経の関与を疑う材料にはなります。ただし、痛みの原因をその場で確定するものではありません。
圧痛は、筋肉、神経、皮膚、血流、炎症、痛みの過敏さなど、いろいろな要素で出ます。
だから、圧痛があるという所見だけを過信しない。
同時に、見落とさない。
この距離感が大切です。
狭窄症らしさは、症状の出方に出る
脊柱管狭窄症を考える時、まず大切なのは症状の出方です。
歩くと脚がつらくなる。
休むと落ち着く。
腰を反らすとつらい。
前かがみや座位で楽になる。
こうした特徴があるかどうかを確認します。
その上で、しびれの場所、筋力、反射、歩行距離、日常生活での困りごとを見ます。
| 見るポイント | 確認したい内容 | 脛骨神経圧迫テストとの関係 |
|---|---|---|
| 歩行時症状 | どれくらい歩くと脚がつらくなるか | 狭窄症らしさを考える基本情報 |
| 休むとどう変わるか | 座位や前かがみで楽になるか | 神経性跛行を疑う材料になる |
| 神経学的所見 | 感覚、筋力、反射の左右差 | 圧痛所見と合わせて見る |
| 膝窩部の圧痛 | 脛骨神経圧迫で痛みが出るか | 補助所見として可能性を整理する |
脛骨神経圧迫テストは、この中のひとつです。
問診で狭窄症らしさがあり、神経学的所見も気になる。
その上で膝窩部の圧痛が強ければ、見立てを補強する材料になるかもしれません。
単独で決めないから、役に立つ
検査は、単独で使うほど危なくなります。
脛骨神経圧迫テストも同じです。
陽性だったから狭窄症。
陰性だったから狭窄症ではない。
そういう使い方ではなく、他の情報と合わせて考えるから意味があります。

まなぶ先生

瀬谷崎
少し辛口に言うと、検査名だけを覚えて満足するのは臨床ではありません。
その検査が何を見ていて、どんな場面で使うのか。
陽性だった時に何を考え、陰性だった時に何を考えるのか。
ここまで含めて、検査の使い方です。
医療機関での確認が必要なこともある
脊柱管狭窄症が疑われる場合、状態によっては医療機関での確認が必要になります。
整骨院では、問診や身体評価を通して、神経の関与を疑う材料を整理します。
ただし、画像検査や医学的な判断が必要なケースもあります。
特に、脱力が強い、症状が進行している、歩行がかなり困難になっている、排尿・排便の異常がある場合は、整骨院だけで見続けるべきではありません。
歩行距離が短くなっている、しびれや脱力が強くなっている、排尿・排便の異常がある、安静時にも強い症状が続く。このような場合は医療機関での確認が必要になることがあります。
検査をする目的は、整骨院で全部抱え込むことではありません。
必要な時に、必要な場所へつなぐためでもあります。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、脊柱管狭窄症が疑われる症状に対して、歩き方や痛みの出方だけでなく、神経学的所見も確認します。
しびれの場所、筋力、反射、歩行距離、休むとどう変わるか。
そこに必要であれば、膝窩部の脛骨神経圧迫のような補助所見も加えて考えます。
ひとつの検査で決めるのではなく、複数の所見を合わせて、今できる対応と医療機関での確認が必要な可能性を整理します。
検査は患者さんを不安にさせるためではなく、状態を整理し、必要な判断につなげるために行います。
こんな方は一度ご相談ください
- 歩くと脚がつらくなり、休むと落ち着く
- 腰やお尻から脚にかけて、しびれや痛みがある
- 脊柱管狭窄症と言われたが、何を基準に動けばいいか分からない
- 歩ける距離が以前より短くなっている
- 神経症状や身体の状態を整理して説明してほしい
急な強い脱力、排尿・排便の異常、強いしびれの悪化、歩行困難が進んでいる場合などは、早めに医療機関で確認してください。
膝裏の圧痛も、評価の引き出しに入れておく
脛骨神経圧迫テストは、全員に機械的に行うものではありません。
ただ、脊柱管狭窄症を疑う症状がある時に、膝窩部の圧痛という視点を持っておくと、評価の幅が広がります。
歩行時症状、休むとどう変わるか、神経学的所見、そして脛骨神経の圧痛。
それらを合わせて、可能性を整理する。
検査は増やすことが目的ではありません。
見落としを減らし、患者さんに必要な判断をするために使うものです。

瀬谷崎
参考
- The tibial nerve compression test for the diagnosis of lumbar spinal canal stenosis. Acta Orthop Traumatol Turc. 2018.
PMC - Lumbar Spinal Stenosis. American Family Physician. 2024.
AAFP - Lumbar Spinal Stenosis. StatPearls. NCBI Bookshelf.
NCBI Bookshelf













