しびれの「ピリピリ」「ジンジン」は何を見ているのか?感覚の言葉から評価を考える

しびれの言葉は、評価の入口になる

ピリピリ、ジンジン、チクチク、焼けるような痛み。患者さんが使う言葉には、感覚の種類を考えるヒントが含まれています。ただし、その言葉だけで病態を決めるのは危険です。

しびれの表現は、診断名ではなく評価の材料です。どんな感覚か、どこに出るか、いつ出るか、感覚低下や筋力低下を伴うかを合わせて見ていきます。

「しびれがあります」と言われた時、その中身は人によってかなり違います。

ピリピリする。ジンジンする。チクチクする。押されている感じがする。焼けるように痛い。感覚が鈍い。力が入りにくい。

同じ「しびれ」という言葉でも、触覚に近いもの、痛みに近いもの、温度感を伴うもの、神経症状を疑うものがあります。

ここを雑にまとめてしまうと、評価がぼやけます。

少し辛口に言うと、「しびれ=神経」とだけ言って終わるのは、かなり大ざっぱです。

まなぶ先生
まなぶ先生

しびれの言い方って、そこまで細かく聞いた方がいいんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

聞いた方がいいです。ただし、言葉をそのまま病名に変換するのではなく、どの感覚系が関わっていそうかを考える入口として使います。

しびれは、ひとつの感覚ではない

患者さんが「しびれ」と表現するものには、いろいろな感覚が含まれます。

触れられているような違和感、振動のような感覚、圧迫感、針で刺されるような痛み、焼けるような痛み。

これらは、皮膚や神経にある受容器、神経線維、中枢での処理が関係して生まれる感覚です。

触覚や圧覚のような感覚には、大径有髄線維であるAβ線維が関係しやすいとされます。

鋭い痛みにはAδ線維、焼けるような痛みや鈍い痛みにはC線維が関係することがあります。

ここが大事

患者さんの言葉と受容器・神経線維は、きれいな一対一対応ではありません。あくまで、評価の仮説を立てるための参考として扱います。

「ピリピリと言ったから、この受容器です」と決めるわけではありません。

でも、しびれの質を聞くことで、触覚系の異常なのか、痛覚系の反応なのか、小径線維の関与を疑うのか、考えやすくなります。

しびれの表現と感覚系の見方

ざっくり整理すると、しびれの言葉は次のように評価の参考になります。

患者さんの表現
ピリピリ感
関与を考えたい受容器・感覚系
マイスナー小体などの触覚・振動系
関係しやすい神経線維
Aβ線維
臨床での見方
軽い触覚や表在感覚の違和感として聞き取る

患者さんの表現
ジンジン感
関与を考えたい受容器・感覚系
パチニ小体などの振動・深部圧系
関係しやすい神経線維
Aβ線維
臨床での見方
振動感、深い違和感、圧迫による反応を考える

患者さんの表現
圧迫感
関与を考えたい受容器・感覚系
メルケル細胞などの持続的な触圧系
関係しやすい神経線維
Aβ線維
臨床での見方
持続的な圧、締めつけ感、局所の圧迫刺激を確認する

患者さんの表現
チクチク感
関与を考えたい受容器・感覚系
自由神経終末などの侵害受容系
関係しやすい神経線維
Aδ線維
臨床での見方
鋭い痛み、刺すような痛み、局所の刺激性を見る

患者さんの表現
灼熱痛
関与を考えたい受容器・感覚系
自由神経終末などの温痛覚系
関係しやすい神経線維
C線維
臨床での見方
焼けるような痛み、小径線維や神経障害性疼痛の関与を疑う材料にする

この表は、暗記して当てはめるためのものではありません。

患者さんの言葉を聞いた時に、「この感覚は何に近いのか」と考えるための地図です。

言葉だけで病態を決めない

しびれの言葉は大切ですが、言葉だけで病態を決めるのは危険です。

たとえば、焼けるような痛みがあるから必ず小径線維障害、チクチクするから必ずAδ線維、とは言えません。

痛みやしびれは、末梢の受容器だけでなく、神経根、末梢神経、脊髄、中枢での処理、過去の経験、不安、注意の向き方なども関係します。

しびれの言葉は、答えではなく問いです。「この人は何をしびれと呼んでいるのか」を確認するところから評価が始まります。

同じ「ピリピリ」でも、手根管症候群のような末梢神経の絞扼が関係することもあれば、頚椎由来の神経根症状を疑うこともあります。

同じ「ジンジン」でも、圧迫姿勢で一時的に出るものと、持続的に悪化しているものでは意味が違います。

だから、表現、分布、誘因、持続時間、感覚低下、筋力低下、反射、生活上の困りごとを合わせて見ます。

問診では、言葉を少し具体的にする

しびれを評価する時は、最初に患者さんの表現をそのまま受け取ります。

その上で、少しだけ具体的に聞きます。

  • ピリピリ、ジンジン、チクチク、焼ける感じのどれに近いか
  • しびれはどこからどこまで出ているか
  • 常にあるのか、姿勢や動作で出るのか
  • 触った感覚が鈍い場所はあるか
  • 力が入りにくい、物を落とす、つまずくなどがあるか
  • 夜間や安静時に悪化していないか

ここで大切なのは、患者さんに専門用語を押しつけないことです。

「Aβ線維っぽいですね」と言われても、患者さんは困ります。

説明する時は、「触覚に近い違和感なのか、痛みに近いしびれなのかを確認しています」くらいの言い方で十分です。

まなぶ先生
まなぶ先生

患者さんの表現が曖昧な時は、こちらから選択肢を出してもいいんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

いいと思います。ただ、誘導しすぎないことですね。「どれに近いですか」と聞いて、最後は本人の言葉に戻すのが大事です。

しびれで医療機関での確認を考えたい時

しびれの中には、早めに医療機関での確認を考えたいものもあります。

たとえば、急に強いしびれや脱力が出た。片側の手足が動かしにくい。ろれつが回りにくい。排尿・排便の異常がある。歩行が急に不安定になった。しびれが進行している。

こうした場合は、整骨院だけで判断せず、医療機関での確認が必要になることがあります。

見逃したくないサイン

しびれに加えて、筋力低下、歩行障害、排尿・排便の異常、急な発症、進行性の悪化、発熱や強い全身症状がある場合は、早めに医療機関で確認した方がよいことがあります。

逆に、一時的な圧迫で出るしびれ、姿勢を変えるとすぐ落ち着くしびれなどは、経過を見ながら評価できることもあります。

ただし、自己判断で長く放置するより、気になる場合は相談して整理した方が安心です。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、しびれを「神経ですね」の一言で片づけないことを大切にしています。

どんな感覚か、どこに出るか、どんな動作で変わるか、感覚低下や筋力低下があるかを確認します。

必要に応じて、医療機関での確認が必要な可能性もお伝えします。

その上で、整骨院で対応できる範囲なのか、施術や運動で何を変えたいのかを整理します。

  • しびれの表現を丁寧に聞く
  • 分布や誘因を確認する
  • 感覚低下、筋力低下、反射など他の所見と合わせる
  • 医療機関での確認が必要な可能性を見落とさない
  • 患者さんに分かる言葉で説明する

しびれの言葉を、評価につなげる

しびれは、患者さんにとって不安になりやすい症状です。

だからこそ、施術者側が雑に扱わないことが大切です。

ピリピリなのか、ジンジンなのか、チクチクなのか、焼けるような痛みなのか。

その言葉には、感覚の種類を考えるヒントがあります。

ただし、言葉だけで決めない。

分布、経過、神経学的所見、生活での困りごとを合わせて見る。

地味ですが、しびれの評価はそこから始まると思っています。

瀬谷崎
瀬谷崎

しびれの言葉は、患者さんがくれる評価の入口です。そこから先を雑に決めつけないのが、臨床の仕事だと思います。

参考

  • Physiology, Mechanoreceptors. StatPearls. NCBI Bookshelf.
    NCBI Bookshelf
  • Neuroanatomy, Touch Receptor. StatPearls. NCBI Bookshelf.
    NCBI Bookshelf
  • Sensation. Clinical Methods. NCBI Bookshelf.
    NCBI Bookshelf
  • Baron R, et al. A Review of Neuropathic Pain: From Diagnostic Tests to Mechanisms.
    PMC
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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