しびれを「心因性」で片づけないために。感覚・行動・感情・認知から見る評価の視点

しびれを、神経の入力だけで見ない

しびれ感は、侵害受容だけで説明できるとは限りません。感覚、動きや回避行動、不安や感情、しびれに対する考え方まで合わせて見ると、評価の幅が広がります。

「神経の異常が見つからない=心因性」と片づけない。しびれ感も痛みと同じように、身体と脳、行動、感情、認知が重なって生まれる体験として見る必要があります。

しびれを訴える方に対して、僕たちはまず神経の評価を考えます。

どこにしびれが出るのか。感覚低下はあるのか。筋力低下はあるのか。反射はどうか。神経根なのか、末梢神経なのか。

これはもちろん大事です。

ただ、そこで所見がはっきりしない時に、すぐ「心因性ですね」と片づけてしまうのは危ういと思っています。

しびれ感も、痛みと同じように、いくつかの要素が重なって生まれる体験です。

しびれ感をめぐる4つの要素の図

しびれ感は、感覚の入力だけでなく、行動、情動、認知の影響も受けます。

まなぶ先生
まなぶ先生

神経の所見が弱いしびれって、どう考えればいいんでしょう。

瀬谷崎
瀬谷崎

まずは「弱い所見しかない」と「存在しない」を分けたいですね。その上で、行動や不安、注意の向き方も評価に入れます。

しびれ感をめぐる4つの要素

しびれ感を考える時、次の4つの要素に分けてみると整理しやすくなります。

侵害受容性・感覚性

神経や受容器からの入力、感覚低下、ピリピリ感、チクチク感、灼熱感など、身体から入ってくる感覚の側面です。

侵害防御性・運動行動

しびれを避ける動き、かばう姿勢、動かさない選択、確認行動など、身体を守ろうとする行動の側面です。

情動・感情性

不安、怖さ、嫌悪感、焦り、落ち込みなど、しびれに伴う感情の側面です。

認知性

「悪化しているのでは」「一生治らないのでは」といった意味づけや予測、注意の向き方の側面です。

これらは別々に存在しているというより、互いに影響し合っています。

しびれを感じる。怖くなる。動かさなくなる。身体の感覚に注意が向く。さらにしびれが気になる。

こういう循環が起きることがあります。

侵害受容だけで説明できるとは限らない

しびれの評価では、神経の関与を疑うことは大切です。

末梢神経の絞扼、神経根症状、脊髄の問題、糖尿病などの全身的な背景など、確認すべきことはあります。

一方で、感覚検査や筋力、反射だけでは、患者さんが感じているしびれ感の全部を説明できないこともあります。

そこで「検査で分からないから心因性」と言ってしまうと、評価が止まります。

ここを誤解しない

情動や認知を見ることは、「気のせい」と言うためではありません。しびれ感を維持したり強めたりしている要素を、身体所見と合わせて見るためです。

痛みの定義でも、痛みは単なる神経信号ではなく、感覚的・情動的な体験として整理されています。

しびれ感も、そこまで単純ではありません。

身体からの入力が弱いとしても、不安や注意、回避行動によって、しびれが強く感じられることがあります。

これは患者さんが作っているという話ではなく、身体と脳の処理がそう働くという話です。

しびれがあると、動きや行動も変わる

しびれが続くと、人は自然にその感覚を避けようとします。

手を使わない。足をかばう。首を動かさない。何度も確認する。少ししびれが出ると、すぐ動作をやめる。

これらは身体を守るための自然な反応です。

ただ、長く続くと、必要な動きまで失いやすくなります。

しびれそのものだけでなく、「しびれを避けるために何をやめているか」を見ると、生活への影響が見えやすくなります。

しびれがあるから手を使わない。

足がジンジンするから歩かない。

首を動かすとしびれそうだから、ずっと固めている。

こうした行動が続くと、筋力、可動域、感覚の使い方まで変わっていきます。

だから、しびれの評価では、感覚だけでなく行動も見たいところです。

不安と意味づけが、しびれ感を強くすることがある

しびれは、痛み以上に不安を呼びやすい症状かもしれません。

「神経が傷ついているのでは」

「麻痺になるのでは」

「このまま治らないのでは」

そう考えると、感覚への注意が強くなります。

注意が向くほど、しびれは大きく感じられることがあります。

まなぶ先生
まなぶ先生

不安が関係すると言うと、患者さんに「気にしすぎ」と受け取られませんか?

瀬谷崎
瀬谷崎

言い方が大事です。不安があるから悪い、ではなく、不安があると身体の感覚に注意が向きやすい、と説明した方がいいですね。

認知とは、難しく言えば「そのしびれをどう意味づけているか」です。

危険なサインだと考えるのか、一時的な反応かもしれないと考えるのか。

この違いで、行動も感情も変わります。

だから、説明はかなり大事です。

施術者の一言で安心することもあれば、逆に不安が増えることもあります。

「心因性」で終わらせない

神経学的所見がはっきりしないしびれに対して、「心因性」と言いたくなる場面はあると思います。

でも、その言葉はかなり慎重に扱いたいです。

患者さんにとっては、「気のせい」「自分の性格の問題」と受け取られることがあります。

そして、施術者側にとっても、「身体所見が分からないから心因性」という逃げ道になってしまうことがあります。

言い換えたい視点

「心因性です」と断定するより、「神経の圧迫だけでは説明しきれないので、不安や注意、動き方、生活での負担も合わせて見ます」と伝える方が、患者さんにも臨床にも誠実です。

もちろん、医療機関での確認が必要な神経症状はあります。

急な脱力、歩行障害、排尿・排便の異常、片側の手足や顔の異常、進行する感覚障害などは、整骨院だけで判断しない方がいいです。

ただ、そうした危険なサインを確認した上で、しびれ感が残る場合、身体と心理を分けすぎずに見る必要があります。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、しびれを「神経」だけにも、「心」だけにも押し込めないことを大切にしています。

まず身体所見を確認します。

どこにしびれがあるのか、感覚低下や筋力低下はあるのか、動作で変わるのか、医療機関での確認が必要な可能性はないか。

その上で、不安、回避行動、生活での困りごと、しびれに対する考え方も確認します。

  • しびれの場所、質、経過を確認する
  • 感覚低下、筋力低下、反射など神経学的所見を見る
  • しびれを避ける行動や生活への影響を聞く
  • 不安や注意の向き方を責めずに確認する
  • 医療機関での確認が必要な可能性を見落とさない

しびれを、ひとつの原因に押し込めない

しびれ感は、単なる神経の入力だけで説明できるとは限りません。

侵害受容的な要素があることもあります。

動きや行動が関係することもあります。

不安や怖さが強めていることもあります。

そのしびれをどう意味づけているかが、生活に影響することもあります。

だから、どれか一つに決めつけない。

身体を見て、行動を見て、感情と認知も見て、必要なら医療機関へつなぐ。

しびれの評価は、そういう地味な積み重ねだと思っています。

瀬谷崎
瀬谷崎

身体で説明できないから心、ではありません。説明しきれない時ほど、評価を広げる姿勢が大事だと思います。

参考

  • International Association for the Study of Pain. Revised Definition of Pain.
    IASP
  • Gatchel RJ, et al. Pain and Emotion: A Biopsychosocial Review of Recent Research.
    PMC
  • Pain-sensorimotor interactions: New perspectives and a new model.
    PMC
  • Neuropathic pain. Nature Reviews Disease Primers.
    PMC
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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