電療の鎮痛機序とは?内因性オピオイド系と周波数設定の考え方
施術・検査ガイド
周波数で鎮痛の出方はどう変わる?
電療と内因性オピオイド系を整理
電療の鎮痛は、ただ電気を流せばよいわけではありません。周波数や通電時間によって働きやすい鎮痛機序が変わるため、狙う効果に合わせて設定を考える必要があります。
電療による鎮痛機序のうち、内因性オピオイド系に関わる作用を整理します。低周波域と高周波域では、関与しやすい物質や効果が出るまでの時間、持続時間が異なるため、症状や目的に合わせた設定の考え方として解説します。
結論:電療の周波数設定は、即時的な鎮痛を狙うのか、持続しやすい鎮痛を狙うのかで考え方が変わるため、目的に合わせて選択します。
電療による鎮痛には、ゲートコントロール理論、末梢循環への影響、筋緊張の変化など複数の考え方があります。その中の一つが、体内で作られる鎮痛物質である内因性オピオイド系を介した作用です。
内因性オピオイドとは、身体の中で作られるオピオイド様の鎮痛物質の総称です。エンケファリン、βエンドルフィン、ダイノルフィンなどが含まれ、痛みの伝達や痛みの感じ方を抑える方向に働くと考えられています。

内因性オピオイド系とは?
内因性オピオイド系は、身体にもともと備わっている鎮痛システムの一つです。痛みの刺激が入ったとき、脳や脊髄などで内因性オピオイドが働き、痛みの伝達を抑える方向に作用します。
電療では、刺激条件によってこの内因性オピオイド系が関与することがあります。特にTENS(経皮的電気神経刺激)などの鎮痛目的の電気刺激では、周波数によって関与する受容体や鎮痛の出方が異なると報告されています。
| エンケファリン | 内因性オピオイドの一つです。低周波刺激で関与しやすい物質として整理されることがあります。 |
|---|---|
| βエンドルフィン | 鎮痛や快感、ストレス反応などと関係する内因性オピオイドです。低周波刺激での鎮痛機序として扱われます。 |
| ダイノルフィン | 高周波刺激で関与しやすい物質として整理されることがあります。即時的な鎮痛に関係する見方があります。 |
電療の設定は「何Hzにするか」だけでなく、「どの鎮痛機序を狙うか」「どれくらい持続させたいか」まで考えると整理しやすくなります。
周波数で何が変わる?
画像の表では、2〜5Hzと50〜100Hzで、分泌されやすい物質や効果の出方が異なると整理されています。低い周波数では効果が出るまでに時間がかかる一方、持続しやすい。高い周波数では効果が早く出やすい一方、通電終了後に消えやすい、という見方です。
| 2〜5Hz |
分泌物:エンケファリン、βエンドルフィン 効果までの時間:遅い、20〜30分程度 持続時間:長い、数十分〜数時間程度 じっくり鎮痛を引き出し、通電後の持続を狙いたい場合に考えやすい設定です。 |
|---|---|
| 50〜100Hz |
分泌物:ダイノルフィン 効果までの時間:早い、1〜5分程度 持続時間:短い、通電終了後に消失しやすい その場での痛みの軽減を確認したい場合に考えやすい設定です。 |
低周波域は効果発現まで時間がかかるが持続しやすい、高周波域は効果が早いが持続は短い。こうした違いを知っておくと、症状や目的に合わせて設定を選びやすくなります。
2〜5Hzを選ぶ場面
2〜5Hzのような低周波域では、エンケファリンやβエンドルフィンなどの内因性オピオイド系が関与しやすいと整理されています。効果が出るまでに20〜30分程度かかるとされるため、短時間だけ流して「効かない」と判断するのは早い場合があります。
一方で、効果が出た場合は数十分から数時間程度持続しやすいとされます。通電後の痛みの落ち着きや、施術後の動きやすさを狙う場合には、低周波域の設定を検討しやすくなります。
- 通電後の持続的な鎮痛を狙いたい
- 短時間の即時変化だけでなく、施術後の反応を見たい
- 低周波刺激に対して不快感が強すぎない
- 筋収縮や刺激感を患者さんが許容できる
50〜100Hzを選ぶ場面
50〜100Hzのような高周波域では、効果発現が比較的早いと整理されています。画像の表では、1〜5分程度で効果が出やすい一方、通電終了後には鎮痛効果が消失しやすいとされています。
そのため、検査や運動前に一時的に痛みを下げたい、今その場で痛みの変化を確認したい、といった場面では高周波域の設定が使いやすいことがあります。
- 短時間で痛みの変化を確認したい
- 運動療法や動作確認の前に痛みを下げたい
- 通電中の鎮痛を利用したい
- 持続効果よりも即時的な変化を優先したい
低周波域と高周波域は、どちらが優れているかではなく、何を狙うかで選ぶという考え方が実用的です。
通電時間も設定の一部
電療では、周波数だけでなく通電時間も重要です。低周波域で内因性オピオイド系の反応を狙う場合、効果発現までに時間がかかるとされるため、十分な通電時間を確保する必要があります。
反対に、高周波域では早めに痛みの変化が出やすい一方、通電後の持続は短いとされます。目的が「今動きやすくすること」なのか、「施術後もしばらく痛みを落ち着かせたいこと」なのかで、設定の考え方が変わります。
| 即時的な鎮痛 | 高周波域を検討しやすい場面です。運動前、検査前、動作確認前など、その場で痛みを下げたいときに考えます。 |
|---|---|
| 持続的な鎮痛 | 低周波域を検討しやすい場面です。効果発現までの時間を見越して、通電時間を短くしすぎないことがポイントです。 |
| 反応の確認 | 設定を固定して使い続けるのではなく、痛みの変化、動作の変化、翌日の反応を確認して調整します。 |
臨床では反応を見て調整する
周波数ごとの鎮痛機序を知っておくことは大切ですが、実際の反応には個人差があります。同じ設定でも、痛みが下がる人、変化が少ない人、刺激感が不快で続けにくい人がいます。
そのため、設定は一度決めたら終わりではありません。痛みの強さ、症状の部位、刺激への反応、施術後の動きやすさ、翌日の戻り方を確認しながら調整します。
電療の設定は、機械の数字だけで完結しません。患者さんの痛みがどう変わったか、動きがどう変わったか、刺激を許容できるかまで含めて判断します。
安全確認も必ず行う
電療は便利な選択肢ですが、適応と禁忌の確認が必要です。ペースメーカーなどの植込み型医療機器、感覚障害が強い部位、皮膚トラブル、妊娠中の腹部・腰部周辺、悪性腫瘍が疑われる部位など、注意が必要なケースがあります。
また、痛みを下げることだけを目的にしすぎると、重要な症状の変化を見逃すことがあります。強い神経症状、急な脱力、発熱や外傷を伴う痛みなどがある場合は、電療の前に医療機関での確認が必要になることがあります。
電療を行う際は、禁忌・注意事項、皮膚状態、感覚障害、医療機器の有無を確認します。強い神経症状や急な症状変化がある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。
関連症状:こんな目的で設定を考える
- その場で痛みを下げて動作確認をしたい
- 施術後もしばらく痛みを落ち着かせたい
- 運動療法の前に痛みを調整したい
- 慢性的な痛みに対して鎮痛手段を組み合わせたい
- 電療の設定を目的に合わせて使い分けたい
電療は「何を狙う設定か」を決めて使う
電療による鎮痛には、内因性オピオイド系が関わる作用があります。2〜5Hzではエンケファリンやβエンドルフィン、50〜100Hzではダイノルフィンが関与しやすいと整理され、効果発現までの時間や持続時間にも違いがあります。
低周波域は効果が出るまでに時間がかかる一方で持続しやすく、高周波域は効果が早い一方で通電後に消えやすい。だからこそ、即時的な鎮痛を狙うのか、持続的な鎮痛を狙うのかで設定を考えます。
とんとん整骨院では、電療をただ当てるのではなく、症状、目的、刺激への反応、安全性を確認しながら、必要な設定を選ぶことを大切にしています。














