歩くと脚がしびれて休んでしまう(脊柱管狭窄症)、負担はどこか。症例をスタッフで検討

間欠性跛行、なぜ「股関節と背中の動き」に着目したのか

1つの症例を、担当した杉生真悟先生(とんとん整骨院 南浦和店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。少し歩くと脚がしびれて休んでしまう間欠性跛行。医療機関で脊柱管狭窄症と説明を受けていた方の、変えられない狭窄と、変えられる股関節・背中の動きや体幹の支えを分けてとらえた判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、歩き始めは大丈夫でも5分ほど歩くと脚がしびれて休んでしまう80代の女性。医療機関で脊柱管狭窄症と説明を受けていた方の症例です。変えられる部分と変えられない部分を分けて見ていきます。

症例カルテ:間欠性跛行、股関節と背中の動きに着目
今回検討する症例(担当:杉生先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=腰からお尻・太ももの痛みとしびれ。歩き始めは大丈夫だが5分ほど歩くと強まり、休まないと歩き続けられない(間欠性跛行/80代・女性)。背景=整形外科を受診し、脊柱管狭窄症と説明を受けていた方。所見=腰を後屈すると腰と脚に痛み、股関節と胸椎の伸展制限、中殿筋・大殿筋の筋力低下、腹部の機能低下、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)の短縮。とらえ方=狭窄による神経症状に加え、股関節と胸椎の伸展制限・体幹の機能低下で歩行時の負担が腰へ集中し、腰椎の伸展ストレスが増していたと考えた。対応=股関節の可動域を広げる手技、体幹・殿部の筋力づくりと胸椎の伸展エクササイズ、疼痛抑制の電気施術、セルフケア。経過=5分で休んでいたのが連続して歩けるようになり、買い物もしやすく。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

歩くと脚がしびれて休んでしまう、負担を増やすのは股関節と背中の動きか

主訴は歩くと出る脚のしびれ。けれど杉生先生は、狭窄そのものと、変えられる負担を分けて考えました。その根拠を確かめます。

杉生先生杉生先生

この方は整形外科を受診し、脊柱管狭窄症と説明を受けていました。神経の通り道が狭くなること自体は元には戻せませんが、所見をとると股関節と背中(胸椎)が伸びにくく、その分だけ歩くときに腰へ負担が集中していました。狭窄そのものとは別に、変えられる負担に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

狭窄があると言われていると、神経そのものの問題に思えます。それでも股関節や背中に目を向けたのはなぜですか。

杉生先生杉生先生

狭窄があっても、歩くときの腰の反りの大きさは負担のかかり方で変わります。股関節と背中が伸びないと、歩くたびに腰を反って補い、神経の通り道がさらに狭くなりやすい。だから狭窄は変えられなくても、股関節と背中の動きや体幹の支えは変えられる、と考えました。

脚のしびれで見逃せない、再評価が必要なサインと受診の役割分担

狭窄があるとわかっている方こそ、医療機関との役割を分けて考えます。教子先生がそこを確認しました。

教子先生教子先生

脊柱管狭窄症と説明を受けている方ですよね。両脚に急に力が入らない、排尿や排便の異常、しびれが急に進むといった、医療機関での再評価が必要なサインは外せていましたか。

杉生先生杉生先生

そこは慎重に確認しました。急な筋力の低下や排尿排便の異常、進行するしびれはなく、症状は歩くと強まり休むと和らぐ、という負担に応じた出かたでした。こうしたサインがあれば、まず医療機関の受診をご案内する前提で進めています。

瀬谷崎瀬谷崎

狭窄があるとわかっている方こそ、変えられない部分と変えられる部分を分けたいですよね。医療機関と役割を分けながら、こちらは股関節と背中の動き、体幹の支えという負担の側を担う。急なサインがあれば受診へつなぐ。その立ち位置が妥当だと思います。

歩ける時間を延ばす介入と経過

腰そのものでなく、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

腰そのものでなく、股関節や背中の動きから負担を減らしていったんですね。

杉生先生杉生先生

はい。硬くなった股関節を広げ、背中(胸椎)を伸ばす動きをつくって、体幹とお尻で支えられるようにしました。電気施術で痛みも抑えつつ進めて、5分で休んでいたのが連続して歩けるようになり、買い物もしやすくなっています。今は股関節と背中の柔軟性、体幹の筋力づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

狭窄は戻せなくても、歩くときの腰の反りを小さくできれば、神経の通り道の負担は下げられる。歩ける時間が延びた経過も、その方向を支持しています。ただ年齢や状態には個人差があるので、無理のない範囲で続けたいところです。

考察:股関節と背中の動きからとらえる間欠性跛行の負担

所見という事実(股関節と胸椎の伸展制限・殿筋と体幹の弱さ・後屈での腰と脚の痛み)と、経過という結果(連続して歩ける時間が延びたこと、買い物や外出のしやすさ)。この両方が、「変えられない狭窄と、変えられる股関節・背中の動きや体幹の支えを分けてとらえた」という見立ての妥当性を支えています。狭窄そのものは戻せなくても、歩行時の腰の反りという負担は変えられる。急なサインがあれば医療機関での再評価へつなぐ。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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