夜も眠れないほどの膝の痛み、安静にしても痛むのをどう考えるか。症例をスタッフで検討

夜も痛む膝、なぜ「足首の硬さと膝のねじれ」に着目したのか

1つの症例を、担当した杉生真悟先生(とんとん整骨院 南浦和店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。整形外科で変形性膝関節症と診断され、夜も眠れないほど痛んでいた膝。膝そのものだけでなく、足首の硬さと膝のねじれによる内側への負担に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、1年前に整形外科で変形性膝関節症と診断された70代の女性。急に痛みが強まり、夜も眠れず、歩行や階段、しゃがむ動作がつらい方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:夜も眠れない膝の痛み、足首の硬さと膝のねじれに着目
今回検討する症例(担当:杉生先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=夜も眠れないほどの膝の痛み(70代・女性)。背景=1年前に整形外科で変形性膝関節症と診断。ある時期から急に痛みが強まり、夜も眠れない状態に。歩行時の荷重・階段の昇降・しゃがむ動作で痛みが出る。所見=足関節の背屈(足首を上に反らす動き)の制限、膝のねじれ、鵞足部(がそくぶ・膝の内側)の圧痛、半腱様筋・内転筋群・外側広筋・腓腹筋(ひふくきん)の緊張、内側広筋・中殿筋の筋力低下、股関節屈筋の緊張による前傾姿勢。とらえ方=足首の硬さと膝のねじれによって、膝の内側へ負担が集中していたと考えた。対応=鵞足部まわりの筋(半腱様筋・内転筋群・外側広筋・腓腹筋)への手技、患部の疼痛抑制のための電気施術(ハイボルト)、足首の柔軟性と内ももの筋力づくりのセルフケア。経過=1〜3回ほどで歩行時の痛みがやわらぎ、就寝時の痛みも気になりにくくなった。4〜9回で膝の内側の圧痛がやわらぎ、歩行や階段への不安感も軽減。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

夜も眠れない膝の痛み、原因は足首の硬さと膝のねじれか

主訴は夜も眠れないほどの膝の痛み。けれど杉生先生は、膝そのものだけでなく、足首の硬さと膝のねじれに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

杉生先生杉生先生

主訴は夜も眠れないほどの膝の痛みでした。所見をとると、足首が上に反りにくく、膝にねじれが出ていて、膝の内側(鵞足部)に圧痛が集中していました。膝そのものだけでなく、足首の硬さと膝のねじれが、膝の内側に負担を集めているのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

整形外科では変形性膝関節症と言われた方ですよね。それでも足首や膝のねじれに目を向けたのはなぜですか。

杉生先生杉生先生

変形があるという診断は前提にしています。そのうえで、足首が硬いと歩くときの衝撃を膝で受けやすく、膝がねじれると内側の一点に負担が偏ります。実際に内側に圧痛が出て、内ももやお尻の支える筋肉が働きにくくなっていた。負担の集まり方を変えられる余地があるのではないか、と考えました。

なぜ夜・安静にしていても膝が痛むのか

この方の特徴は、動いたときだけでなく、夜・安静にしていても痛むことでした。ここは慎重に確かめたいところです。

教子先生教子先生

夜も眠れない、安静にしていても痛む、というのは慎重に見たいサインですよね。急に腫れて熱を持つ、発赤や全身の発熱、急に体重をかけられないほど痛む、といった、すぐに医療機関へ相談すべき様子はなかったですか。

杉生先生杉生先生

そこは確認しました。急な腫れや熱感、全身症状はなく、すでに整形外科で評価を受けて変形性膝関節症という診断がついていた方です。日中の動作で痛みが強まり、内側の負担が増したぶん、安静にしても痛みが残っていたと考えました。新たに気になる様子があれば、あらためて医療機関への相談をご案内する前提で進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

安静時にも痛む、というのは一度立ち止まって確かめたいサインですよね。腫れや熱、急な体重がかけられないほどの痛みといった、別の原因を思わせるものを外す。そのうえで、診断がついている変形に、足首と膝のねじれによる内側への偏りが重なっていた、ととらえる。順序として妥当だと思います。負担の偏りが減れば、安静時の痛みもやわらぎやすい、という見立てですね。

夜の痛みを繰り返さないための介入と経過

痛みをその場でやわらげるだけでなく、膝の内側に負担が偏らない体まで、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

膝そのものでなく、足首や内ももの使い方から整えていったんですね。

杉生先生杉生先生

はい。膝の内側につく筋肉や、硬くなっていた筋肉をゆるめ、患部には疼痛抑制の電気施術を使いました。そのうえで、足首を反らせる柔らかさと、膝を内側で支える内ももの筋力をつけていきました。1〜3回ほどで夜の痛みが気になりにくくなり、歩行や階段の不安も軽くなってきています。膝に負担がかかりやすい方なので、足首の柔軟性と内ももの筋力づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

膝の内側への偏りを、足首の柔らかさと内ももの支えで分散させにいっているのが要点ですね。負担が一点に集まらなくなれば、夜や安静時の痛みもやわらぎやすい。早い段階で就寝時の痛みが変わってきた経過も、その方向を支えています。ただ変形という背景がある方なので、無理のない範囲で続けながら、変化を見ていきたいところです。

考察:足首の硬さと膝のねじれからとらえる、夜も痛む膝

所見という事実(足首の背屈制限・膝のねじれ・膝の内側の圧痛・内ももやお尻の筋力低下)と、経過という結果(早い段階で就寝時の痛みが気になりにくくなり、歩行や階段の不安が軽くなったこと)。この両方が、「変形という診断を前提にしつつ、足首の硬さと膝のねじれによる内側への負担に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。夜・安静時にも痛むときは、別の原因を思わせるサインをまず外す。そのうえで、負担がどこに偏っているかをとらえ、一点に集まらないように分散させる。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。変形性膝関節症と言われていても、負担の偏り方を見直せる余地がある、ということでもあります。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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