座って仕事をしていると肩が痛い、長く座る人の肩の痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

座っていると出る肩の痛み、なぜ「肩甲骨の位置と背中の支え」に着目したのか

1つの症例を、担当した中村拓真先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。長く座って仕事をしていると出てくる肩の痛み。肩そのものでなく、肩甲骨の位置と背中の支えに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、デスクワークで長時間座る20代の女性。仕事中、座っていると肩が痛くなる方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:座っていると出る肩の痛み、肩甲骨の位置と背中の支えに着目
今回検討する症例(担当:中村先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=仕事中、座っていると出る肩の痛み(20代・女性)。背景=デスクワークで長時間座る。所見=首を後ろに反らす動きで両肩に痛み、肩甲骨が外に開いた位置(外転)、僧帽筋中部(背中の肩甲骨を寄せる筋肉)の筋出力の低下、長時間座位による姿勢の崩れ。とらえ方=肩甲骨が外に開き、背中で肩甲骨を寄せる支えが弱くなることで、肩甲骨から首につく筋肉が引き伸ばされ、肩や首に負担が集まっていたと考えた。対応=小胸筋・前鋸筋への手技、肩甲骨の動きを引き出す手技、首の後ろの筋肉への手技、背中(僧帽筋中部)の筋力づくり、自宅での小胸筋ストレッチと背中のトレーニング。経過=1〜3回で仕事中に気になることが減り、4〜5回で肩こりを感じる場面が減った(業務量の多い日にやや感じる程度)。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

座っていると出る肩の痛み、原因は肩甲骨の位置と背中の支えか

主訴は座っていると出る肩の痛み。けれど中村先生は、肩そのものでなく、肩甲骨の位置と背中の支えに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

中村先生中村先生

主訴は座っていると出る肩の痛みでした。所見をとると、肩甲骨が外に開いていて、背中で肩甲骨を寄せる筋肉が働きにくくなっていました。肩そのものより、肩甲骨の位置の崩れと、それを支える背中の弱さに出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

肩が痛いと、肩そのものがこっている気がします。それでも肩甲骨や背中に目を向けたのはなぜですか。

中村先生中村先生

肩甲骨が外に開くと、肩甲骨から首につく筋肉が常に引き伸ばされて緊張します。背中で肩甲骨を寄せる支えが弱いと、その位置が戻らない。長く座っているとその姿勢が続いて肩に出る、という像が所見と合っていました。だから肩だけをほぐすより、位置と支えを見たほうがよいと考えました。

長く座っていると、なぜ肩に出るのか

この方は、長時間座っていると出る、という場面のはっきりした出かたでした。そこを確かめます。

教子先生教子先生

長く座ると出る、という場面がはっきりしていますよね。腕のしびれや力の入りにくさ、安静にしても引かない痛みといった、医療機関で確かめたい様子はなかったですか。

中村先生中村先生

そこは確認しました。腕への神経症状や安静時の強い痛みはなく、座位の時間に応じて変わる痛みでした。こうした様子があれば医療機関への受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

長く座る姿勢が続くと、肩甲骨が開いたまま固定されて、首肩につく筋肉が引っぱられ続ける。場面がはっきりしているのは手がかりですよね。しびれや脱力といったものを外したうえで、姿勢と肩甲骨の位置に絞る。順序が妥当だと思います。

座る時間に負けない肩にする介入と経過

肩を直接ほぐすだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

肩そのものでなく、肩甲骨の位置と背中の支えから整えていったんですね。

中村先生中村先生

はい。胸の前の硬さをゆるめて肩甲骨が開きすぎないようにし、肩甲骨の動きを出して、背中で肩甲骨を寄せる筋肉を働かせました。仕事中に気になることが減って、肩こりを感じる場面も減ってきています。座る時間が長い方なので、肩甲骨まわりのケアと姿勢づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

肩甲骨の位置を戻して、背中で支えられるようにしているのが要点ですね。支えが働けば、長く座っても肩甲骨が開きっぱなしになりにくい。気になる場面が減ってきた経過も、その方向を支えています。座位が長い働き方は続くので、ケアを続ける前提で見ていきたいところです。

考察:肩甲骨の位置と背中の支えからとらえる、座ると出る肩の痛み

所見という事実(肩甲骨の外転・背中の筋出力低下・首を反らしたときの両肩の痛み・長時間座位での姿勢の崩れ)と、経過という結果(仕事中に気になる場面が減ってきたこと)。この両方が、「肩そのものでなく肩甲骨の位置と背中の支えに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。しびれや脱力といったものを外したうえで、長く座る姿勢で崩れた肩甲骨の位置と支えをとらえ、肩だけをほぐすのでなく位置と支えを立て直す。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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