噛みしめ・食いしばりで肩がこるのはなぜか。慢性的な首肩こりをスタッフで検討

噛みしめが関わる肩こり、なぜ「咬筋と姿勢」に着目したのか

1つの症例を、担当した横田未帆先生(女性専門鍼灸院 こもれび鍼灸院 院長)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。動かして痛むわけではないのに、仕事中や休んでいるときに重く感じる慢性的な首肩こり。首肩そのものだけでなく、噛みしめと姿勢の負担に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、学生時代から肩こりの自覚があり、半年ほど前から仕事の忙しさが増して症状が強くなった30代の女性。動作時の痛みはなく、噛みしめのクセやイライラ・ストレスの増えた自覚もあった方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:噛みしめをともなう首肩こり、咬筋と姿勢に着目
今回検討する症例(担当:横田先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=噛みしめをともなう慢性的な首肩こり(30代・女性)。背景=学生時代から肩こりの自覚があり、半年ほど前から仕事の忙しさが増して悪化。動いたときの痛みはなく、仕事中や休息時にこりを感じる。噛みしめのクセや、イライラ・ストレスが増えた自覚もあった。所見=頭部前方位(頭が前に出た姿勢)、肩甲骨の外転位(外に開いた状態)、頸部伸筋群・後頭下筋・僧帽筋の硬さ、咬筋・側頭筋の緊張、胸郭の動きの低下。とらえ方=頭が前に出た姿勢と肩甲骨の開き、噛みしめによる咀嚼筋の緊張が重なり、首肩への負担につながっていたと考えた。対応=頸部伸筋群・後頭下筋・僧帽筋・咬筋・側頭筋への鍼、胸郭の可動域を広げるアプローチ、東洋医学的な視点での経穴も使用。経過=初回後に肩のこりが軽くなり、身体の力が抜けるような変化。回を重ねるうちに張りつめが楽になり、週1回を1ヶ月半ほど続けたのち、隔週、月1回のメンテナンスへ移行。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

噛みしめをともなう首肩こり、原因は咬筋と姿勢の負担か

主訴は慢性的な首肩こり。けれど横田先生は、首肩そのものより、噛みしめと姿勢の負担に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

横田先生横田先生

主訴は学生時代から続く首肩のこりで、半年ほど前から仕事が忙しくなって強まっていました。動いて痛むというより、仕事中や休んでいるときに重く感じるタイプです。所見をとると、頭が前に出て肩甲骨が外へ開き、噛みしめで咬筋や側頭筋(こめかみ側の筋肉)も張っていました。首肩そのものより、力が抜けにくい姿勢と噛みしめに出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

こりというと首や肩をもみほぐすイメージですが、あごの噛みしめまで目を向けたのはなぜですか。

横田先生横田先生

噛みしめると、あごの咬筋や側頭筋が縮みっぱなしになります。その緊張は首の後ろの筋肉ともつながっていて、頭を前に出した姿勢が重なると、首肩がずっと力んだ状態になりやすい。もんでも戻ってくるこりだったので、もとの力みのほうに目を向けた、という流れです。

なぜ噛みしめ・ストレスが肩こりに関わるのか

この方は、動かして痛むのではなく、噛みしめやストレスとともに強くなる、という出かたでした。そこを確かめます。

教子先生教子先生

動いて痛むわけではないこりなんですよね。念のため、腕のしびれや力の入りにくさ、だんだん強くなる痛み、頭痛が急にひどくなるといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

横田先生横田先生

そこは確認しました。腕への神経症状や安静時に強まる痛み、急に悪化する頭痛はなく、こりは仕事の忙しさやストレスに伴って変わりました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。噛みしめやイライラが増えた自覚も、ご本人からうかがえました。

瀬谷崎瀬谷崎

忙しさやストレスが増えると、無意識に噛みしめたり、肩に力が入ったりしますよね。動かして痛むのでなく、力が抜けない時間が長いことでたまるこり。咬筋の緊張や前に出た姿勢は、その力みのあらわれの一つと見ると筋が通ります。危ないものを外したうえで、力が抜けにくい背景に絞る。順序が妥当だと思います。

動作の痛みがないこりを繰り返さないための介入と経過

首肩を直接ほぐすだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

首肩を直接ほぐすだけでなく、噛みしめや姿勢のほうから整えていったんですね。

横田先生横田先生

はい。張っていた首肩や咬筋・側頭筋に鍼でアプローチしつつ、胸を開いて胸郭が動くようにして、頭が前に出る姿勢の負担を減らしました。東洋医学的な見方も合わせています。初回のあと力が抜ける感じがあって、回を重ねるうちに張りつめが楽になり、今は間隔を空けてメンテナンスを続けてもらっています。ただ仕事の忙しさは続くので、ご自身でも肩の力を抜く時間をつくってもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

こりの出どころを、もみほぐしでなく、噛みしめと姿勢という力みの背景に戻して整えにいっているのが要点ですね。力が抜ける時間が増えれば、同じ忙しさでもこりはたまりにくくなる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただストレスや噛みしめは生活と結びつくので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:咬筋と姿勢からとらえる噛みしめをともなう首肩こり

所見という事実(頭部前方位・肩甲骨の外転・咬筋と側頭筋の緊張・胸郭の動きの低下)と、経過という結果(こりや張りつめを感じづらい状態が続き、メンテナンスの間隔を空けられていること)。この両方が、「首肩そのものだけでなく、噛みしめと姿勢の負担に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。動かして痛むわけではないこりは、力が入りっぱなしの時間が続くことで生じやすい。噛みしめやストレス、前に出た姿勢といった、力が抜けにくい背景に目を向ける。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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