階段の昇り降りで膝が痛い、両膝の内側に出る痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

階段でつらい膝の内側の痛み、なぜ「足首とお尻の支え」に着目したのか

1つの症例を、担当した二宮寿己先生(とんとん整骨院 ときわ台店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。階段の昇り降りや立ち上がりで出る両膝の内側の痛み。膝そのものでなく、足首と股関節の硬さ、お尻の支える力に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、事務のお仕事で、事務所に行くのに毎回階段を上る40代の女性。階段や立ち上がり、歩行で両膝の内側と右膝の後ろが痛み、歩くとポキポキ音がして翌朝に膝が曲げにくいことがあった方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:階段でつらい膝の内側の痛み、足首とお尻の支えに着目
今回検討する症例(担当:二宮先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=階段の昇り降りや椅子からの立ち上がり、歩行で出る両膝の内側と右膝の後ろの痛み(40代・女性)。背景=事務のお仕事で、事務所に行くのに毎回階段を上る。歩くとポキポキ音がして、翌朝に膝が曲げにくいことがあった。所見=膝の屈曲・伸展の制限と完全には伸びきらない状態、足首の背屈制限、中殿筋・内側広筋の筋力低下、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)・ハムストリング・ヒラメ筋などの緊張、膝の不安定さ。とらえ方=足首と股関節の硬さ、お尻の支える力の弱さで膝に負担が集中し、膝の不安定さも重なっていたと考えた。対応=太ももや足首まわりへの手技、中殿筋のトレーニングや膝の運動軸のコントロール、物理療法、ご自宅でのお尻のトレーニングと膝のセッティング。経過=はじめに手すりを使わず階段を降りられるようになり、回を重ねて痛みより違和感や膝の後ろの重さが残る程度に。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

階段や立ち上がりで膝の内側が痛む、原因は膝の外にあるか

主訴は両膝の内側と右膝の後ろの痛み。けれど二宮先生は、膝そのものより、それを支える足首・股関節・お尻に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

二宮先生二宮先生

主訴は両膝の内側と右膝の後ろの痛みで、階段の昇り降りや椅子からの立ち上がり、歩行で出ていました。所見をとると、足首と股関節の動きが硬く、お尻(中殿筋)や内ももの力が落ちて、膝の安定にもばらつきがありました。痛む膝そのものより、膝を支える足首・股関節・お尻の土台に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

膝が痛いと、膝そのものを痛めたように思えます。それでも足首やお尻に目を向けたのはなぜですか。

二宮先生二宮先生

膝は、上の股関節と下の足首にはさまれて動く関節です。上と下が硬いと、そのしわ寄せが真ん中の膝に集まりやすい。さらにお尻や内ももの支えが弱いと、膝が内側にぶれて内側に負担がかかります。階段や立ち上がりで内側が痛む、という出かたが、その像と一致したんです。

なぜ歩くと音が鳴り、翌朝に膝が動かしにくいのか

この方は、歩くとポキポキ音がして、翌朝に膝が曲げにくい、という特徴がありました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

歩くと音がして翌朝に膝が曲げにくい、とのことですよね。念のため、膝が大きく腫れる・熱をもつ、カクンと崩れて支えられない、安静にしても強く痛むといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

二宮先生二宮先生

そこは確認しました。強い腫れや熱感、急に膝が抜けるような不安定さ、安静時の強い痛みはなく、症状は動作に伴って変わりました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。音や朝の動かしにくさも、動き出すと和らぐ出かたでした。

瀬谷崎瀬谷崎

足首と股関節が硬く、お尻の支えが弱いと、膝は内側にぶれながら無理な軌道で動きます。その引っかかりが、音や動かしはじめのこわばりとして出やすいんですよね。動き出すと和らぐのも、固まっていた周りがほぐれるからと見ると筋が通ります。危ないものを外したうえで、膝の外側の土台に絞る。順序が妥当だと思います。

膝の不安定さを繰り返さないための介入と経過

膝を直接ほぐすだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

膝を直接ほぐすだけでなく、足首やお尻のほうから整えていったんですね。

二宮先生二宮先生

はい。硬かった太ももや足首の筋肉をゆるめつつ、お尻(中殿筋)や内ももを使えるようにして、膝が安定して動く軌道をつくりました。ご自宅でもお尻のトレーニングと膝のセッティングを続けてもらっています。回を重ねるうちに、手すりを使わず階段を降りられるようになり、痛みより違和感や重さが残る程度に落ち着きました。

瀬谷崎瀬谷崎

膝の痛みの出どころを、膝そのものでなく、足首・股関節・お尻という土台に戻して整えにいっているのが要点ですね。土台が安定すれば、同じ階段でも膝の内側に負担が集まりにくくなる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ毎日階段を使うお仕事なので、支える力づくりは続ける前提で見ていきたいところです。

考察:足首・股関節とお尻の支えからとらえる階段でつらい膝の内側の痛み

所見という事実(足首・股関節の硬さ、中殿筋・内側広筋の弱さ、膝の伸展制限と不安定さ)と、経過という結果(手すりなしで階段を降りられ、痛みが違和感や重さの程度に落ち着いたこと)。この両方が、「膝そのものでなく、膝を支える土台に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。階段や立ち上がりで膝の内側が痛むのは、硬い足首・股関節のしわ寄せと、お尻の支えの弱さで、膝が内側にぶれるため。その場をほぐすだけで終わらせず、土台を整えて膝を安定させる。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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