子どものセーバー病で痛がり方が強すぎる。中枢性感作を疑う前に確かめる随伴症状
セラピスト向け
よく痛がる子は、感作か、それとも痛がりか
セーバー病(踵骨骨端症)のお子さんが、患部の範囲を超えて強く痛がる。中枢性感作を考えるべきか、痛がりやすい個体差なのか。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に挙がった相談をもとに、小児の痛みの読み方を検討します。
相談された症例は、小学校高学年のお子さんです。右足のセーバー病に加えて、左足にできた魚の目をかばううちに、左のかかとにも痛みが広がっていました。病院でMRI(エムアールアイ・磁気共鳴画像)も撮影済みで、腫瘍などの所見はありません。
気になるのは痛がり方です。セーバー病で痛むはずの部位だけでなく、アキレス腱やふくらはぎの下側まで過剰に痛がる。発症は5月ごろから続いていて、痛みで学校に行けない期間が1か月ほどありました。これは中枢性感作なのか、という相談です。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎子どもでも中枢性感作は起こりうるのか
中枢性感作のメカニズムはいくつも言われています。C線維(シーせんい)の持続性興奮、恐怖回避行動との関わり、グリア細胞の関与などです。痛みが3か月ほど続いているなら、感作が若干生じている可能性はあります。
そもそも感作自体は、それほど珍しい病態ではありません。突き指のあと、少し動かすだけで痛むのも末梢性感作のひとつです。感作は固定した状態ではなく、行ったり来たりするダイナミックな変化の中で起こります。
子どもの中枢性感作が臨床で着目される場面は多くありません。起こりえないとまでは言えないものの、セーバー病の痛みが長引いた程度であれば、そこまで気にすべき感作ではない可能性もあります。
痛み以外の随伴症状があるかを確かめる
感作が進んでいる場合、表に出てくるのは痛みだけではありません。次のような随伴症状をチェックします。
- 疲れやすい・倦怠感がある
- 抑うつ的な様子がある
- 学校に行きたがらない
- 話すときの声が小さい
- 目線が合わない
今回の症例では、これらに当てはまる所見はありませんでした。爪が伸びにくいという気になる点も挙がりましたが、感作との関係ははっきりしません。該当する随伴症状がなければ、感作と呼ぶほどの状態ではなく、痛がりやすいという個体差の可能性も十分に考えられます。
イエローフラッグサインは患部の外に表れる
中枢性感作は全身性の変化なので、患部以外の反応にも出てきます。次のような所見が複数重なるようなら、感作を意識したほうがよい場面です。
- 首や腰など、患部から離れた部位も強く痛がる
- この動きでそんなに痛がるのか、と感じる場面がある
- 軽く押しただけでも強い痛みを訴える
- 電気刺激に過剰に反応する(流す前から「もう来ました」と言う)
逆に言えば、こうした所見がかかと周囲に限られているなら、全身性の感作として扱う根拠は弱くなります。今回の症例では、ピアノによる指の腱鞘炎はあったものの、頸部痛や腰痛はありませんでした。
家庭や学校の環境は、問診でどう確かめるか
子どもの頃の家庭環境や学校環境は、大人になってからの難治性慢性疼痛の重要な背景因子としてよく言われています。いじめに遭っている、親からの愛情が乏しいといった状況です。
ただしこれは、あくまで大人になってからの慢性疼痛について語られる知見です。目の前のお子さんに当てはめて、家庭を疑ってかかる話ではありません。今回の症例でも、該当しそうな所見は乏しいものでした。
一方で、セーバー病の痛みで学校を1か月休んでいるという経過は、気に留めておきたい部分です。確かめ方は、問診の工夫で足ります。
- 随伴症状を聞く疲れやすさ、だるそうな様子など、痛み以外の変化がないかを保護者と本人に確認します。
- 患部以外の反応を見る施術の中で、他部位の痛がり方や刺激への反応を観察します。
- 学校のことは本人に聞く保護者のいない場面で「学校どうなの」と聞いてみます。黙り込むようなら、背景として考慮に入れます。
- 保護者には行きたがっているかを聞くもともと学校に行きたがっていないという答えなら、そうした要因が強く絡んだ痛みの可能性を念頭に置きます。
原疾患が良くなれば、感作も引いていく
仮に感作が若干生じていたとしても、多くの場合は原疾患の軽快とともに落ち着きます。セーバー病であれば、おおむね1年ほどで治まっていく疾患です。かかとの痛みがなくなれば、感作も同時に引いてくるのが通常の経過です。
セーバー病はセーバー病として、普段どおりの対応を続けます。あえて普通に歩かせる必要はありません。評価と負荷管理はセーバー病の評価の記事で扱っています。
困るのは、何年も痛みが続くような慢性化に至った場合です。ただ、随伴症状もイエローフラッグサインも見当たらない段階なら、感作の治療へ切り替える局面ではないと考えられます。感作がある患者さんへの運動療法の考え方は受動的介入から能動的介入へ移す理由の記事にゆずります。
瀬谷崎





