下肢の神経モビライゼーションとは?スライダーとテンショナーの使い分け

神経は、強く伸ばせばいいわけではない
症状に合わせた動かし方を整理

神経モビライゼーションは、刺激量の見極めが大切な手技です。症状の強さや時期に合わせて、スライダーとテンショナーをどう選ぶかを整理します。

この記事について

下肢の神経モビライゼーションは、腰から足にかけての痛み・しびれ、坐骨神経や大腿神経の過敏性、神経の滑走性や柔軟性を考える際に用いられる徒手的なアプローチです。ここでは、スライダーとテンショナーの違い、坐骨神経・大腿神経への実施方法、回数の目安、急性期・亜急性期・慢性期での使い分け、痛みを悪化させない刺激量の考え方をまとめています。

著者アイコン
伊藤聡史

神経モビライゼーションは、強く伸ばせばよい手技ではありません。痛みやしびれの強さ、神経の過敏性、時期に合わせて、スライダーとテンショナーを使い分けることが重要です。

結論:神経モビライゼーションは、急性期はスライダーを中心に、症状が落ち着いてきたらテンショナーを少量から検討するという考え方が実用的です。

下肢の神経モビライゼーションには、大きく分けてスライダーとテンショナーがあります。どちらも神経の動きや柔軟性にアプローチする手技ですが、神経へかかる負荷の強さが違います。

神経モビライゼーションとは?

神経モビライゼーションは、神経の滑走性や柔軟性を改善することを目的に行われる徒手療法の一つです。下肢では、坐骨神経や大腿神経に対して行われることがあります。

ポイントは、神経を無理に強く伸ばすのではなく、症状の状態に合わせて負荷を調整することです。痛みやしびれが強い時期に強いテンションをかけると、かえって症状を悪化させる可能性があります。

スライダーは「滑らせる」、テンショナーは「張力をかける」と考えると整理しやすくなります。どちらが優れているというより、状態に合わせて選ぶことが大切です。

スライダーとテンショナーの違い

スライダーとテンショナーは、どちらも神経へのアプローチですが、目的と負荷のかけ方が異なります。

スライダー 神経の一端をたるませながら、もう一端を張らせるように動かします。
大きな張力をかけずに神経を往復して滑らせ、循環や浮腫の改善を狙います。痛みが強い時期にも比較的使いやすい方法です。
テンショナー 神経の両端を同時に伸ばすように動かし、スライダーよりも強い張力を加えます。
神経内の循環や柔軟性の改善を狙いますが、負荷が強くなりやすいため、症状が強い時期には注意が必要です。
使い分け 痛みやしびれが強い時期はスライダーを中心に、症状が落ち着いて可動域制限が主になってきたらテンショナーを少量から検討します。
反応を見ながら、負荷を段階的に調整します。

効果はある?エビデンスの見方

神経モビライゼーションについては、研究で効果が示されることもあります。ただし、疾患、病期、手技、回数、強度によって結果にばらつきがあり、「このくらい効く」と一言でまとめるのは難しいのが現状です。

整理

スライダーとテンショナーの効果に大きな優劣があるというより、患者さんの状態に合わせて使い分けることが重要です。また、単独で行うよりも、通常のリハビリや他の施術と組み合わせて考える方が実用的です。

つまり、神経モビライゼーションは「やれば必ず効く万能手技」ではありません。問診、検査、症状の時期、刺激への反応を見たうえで、必要な範囲で使う手技として捉えるのが安全です。

坐骨神経へのアプローチ

坐骨神経へのアプローチは、座った状態で体幹を前屈させて行います。スライダーでは神経を滑らせるように、テンショナーでは神経に張力がかかるように動きを組み合わせます。

坐骨神経のスライダー

  1. 座位で体幹を前屈する椅子に座り、体幹を前屈させます。首はまず中間位から始めます。
  2. 首を反らしながら膝を伸ばす頸部伸展と膝伸展を同時に行います。神経へ大きな張力をかけすぎず、滑走を促すイメージです。
  3. 首を曲げながら膝を曲げる頸部屈曲と膝屈曲へ戻します。この往復運動を繰り返します。

坐骨神経のテンショナー

  1. 座位で体幹を前屈するスライダーと同じく、座位で体幹を前屈した姿勢から始めます。
  2. 首を曲げ、膝を伸ばし、足首を反らす頸部屈曲、膝伸展、足関節背屈を組み合わせます。この姿勢で神経に張力がかかりやすくなります。
  3. 首を反らし、膝を曲げ、足首を戻す頸部伸展、膝屈曲、足関節底屈へ戻します。症状が強く出る場合は無理に行いません。

大腿神経へのアプローチ

大腿神経へのアプローチは、横向きの姿勢で行います。鼠径部から太ももの前側に症状がある場合など、上位腰椎神経根や大腿神経領域の評価・介入と関連して考えられます。

大腿神経のスライダー

  1. 患側を上にして横向きになる下側の脚は抱えるようにして、骨盤や腰部が過度に動かないようにします。
  2. 首を反らしながら股関節を伸ばし、膝を曲げる頸部伸展と同時に、上側の脚の股関節伸展・膝屈曲を行います。
  3. 首を曲げながら股関節を前に戻す頸部屈曲と股関節屈曲へ戻します。この往復で神経の滑走を促します。

大腿神経のテンショナー

  1. 側臥位で開始する患側を上にして横向きになり、下側の脚を抱えて姿勢を安定させます。
  2. 首を曲げながら股関節を伸ばし、膝を曲げる頸部屈曲と同時に、上側の脚の股関節伸展・膝屈曲を行います。大腿神経に張力がかかりやすい肢位です。
  3. 首を反らし、股関節と膝を軽く戻す頸部伸展、股関節軽度屈曲、膝軽度屈曲へ戻します。強い痛みやしびれが出る場合は中止します。

回数の目安と使い分け

回数や保持時間には統一された見解があるわけではありませんが、研究で用いられる目安として、スライダーは10回×2セット、テンショナーは15〜25秒保持を5〜7回程度が紹介されています。

急性期 痛みが強い、夜間痛がある、神経が過敏な時期はスライダーを中心に考えます。
強い張力をかけず、痛みの出ない範囲でゆっくり行います。
亜急性期 症状が少し落ち着いてきたら、スライダーを主体にしつつ、反応を見ながらテンショナーを少量だけ導入します。
翌日の症状変化も含めて確認します。
慢性期 症状が落ち着き、可動域制限が主になっている場合は、テンショナーを検討します。
ただし、過剰なテンションは悪化リスクがあるため、少量から始めます。

神経モビライゼーションは、痛みの出ない範囲で、反応を見ながら少しずつが基本です。特にテンショナーは負荷が強くなりやすいため、無理に伸ばす使い方は避けます。

関連症状:こんな訴えと合わせて見る

  • 腰からお尻、太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれがある
  • 足のしびれや神経痛のような症状が続いている
  • 動かすとしびれが変化する
  • スランプテストやSLRで神経系の関与が疑われる
  • 症状が強く、どの程度動かしてよいか判断が必要
重要

足に力が入りにくい、排尿・排便の異常がある、急に強いしびれが出た、発熱や外傷を伴う強い痛みがある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

神経モビライゼーションは「状態に合わせて選ぶ」

下肢の神経モビライゼーションには、スライダーとテンショナーがあります。スライダーは神経を滑らせる方向、テンショナーは神経に張力をかける方向のアプローチです。

痛みやしびれが強い時期に強く伸ばすと、症状を悪化させる可能性があります。急性期はスライダーを中心に、症状が落ち着いてきたらテンショナーを少量から検討する、という段階的な考え方が大切です。

とんとん整骨院では、痛みのある場所だけでなく、神経の過敏性、動かしたときの症状変化、筋力や感覚の状態を確認しながら、必要な刺激量を見極めることを大切にしています。

著者アイコン
伊藤聡史

神経モビライゼーションは、刺激量の調整が大切です。症状が強い時期は滑走を促すスライダーから始め、反応を見ながら必要に応じてテンショナーを少量ずつ検討します。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

読みもの

瀬谷崎コラム

施術・検査ガイド

とんとんブログ

電話
タップで電話がかかります
LINE
24時間予約受付中
東武練馬店
ときわ台店
下板橋店
南浦和店