バイオメカニクスだけで痛みを説明しきれない理由
セラピスト向け
身体の構造だけで、痛みを説明しきれるのか
解剖学や運動学は、とても大事です。ただ、姿勢・アライメント・画像所見だけで痛みを説明しようとすると、患者さんの痛みをかなり狭く見てしまうことがあります。
バイオメカニクスは必要です。でも、それだけで痛みを全部説明できるわけではありません。構造だけでなく、痛みの感じ方や生活背景まで合わせて見る必要があります。
腰が痛い。肩が痛い。膝が痛い。
こういう相談を受けると、まず身体の構造を見たくなります。
姿勢はどうか。関節の動きはどうか。筋肉は硬いか。アライメントは崩れていないか。画像では何が写っているか。
もちろん、これは大事です。解剖学、運動学、生理学は、施術者にとって土台です。
ただ、ここで止まると危ないです。
「身体に異常があるから痛い」「痛いならどこかに構造的な原因がある」と考えすぎると、痛みのかなり大事な部分を見落とします。

まなぶ先生

瀬谷崎
「構造の異常=痛み」とは限らない
痛みを構造だけで説明しようとすると、画像所見に引っ張られやすくなります。
たとえば、MRIで椎間板の変化が見つかる。首にヘルニアっぽい所見がある。膝に変形がある。
そうすると、「これが痛みの原因です」と言いたくなります。
でも、無症状の人にも画像上の変化はかなり見つかります。
| 腰のMRI研究 | 腰痛のない人にも、椎間板の膨隆や突出などの所見が珍しくないことが報告されています。 |
|---|---|
| 頸椎のMRI研究 | 症状のない人でも、加齢とともに椎間板の膨隆などの画像所見が高頻度に見られます。 |
| 臨床での意味 | 画像で何かが見つかったからといって、それが今の痛みの主因とは限りません。 |
腰痛のない人にも、椎間板の膨隆や突出などの所見が珍しくないことが報告されています。
症状のない人でも、加齢とともに椎間板の膨隆などの画像所見が高頻度に見られます。
画像で何かが見つかったからといって、それが今の痛みの主因とは限りません。
もちろん、画像所見が重要なケースもあります。
神経症状、外傷、進行する脱力、強い炎症が疑われる場合など、見逃してはいけないものもあります。
ただ、「写っている=痛みの原因」とは限らない。ここはかなり大事です。
構造の変化は、痛みを考える材料です。でも、材料のひとつであって、答えそのものではありません。
画像所見に引っ張られると、不安も増える
患者さんは、画像で「ヘルニアがあります」「変性があります」「歪みがあります」と言われると、かなり不安になります。
それが今の痛みにどのくらい関係しているのか分からないまま、言葉だけが残ることがあります。
すると、「自分の身体は壊れている」「だから痛いんだ」「もっと詳しく調べないと」となりやすいです。
場合によっては、検査を繰り返したり、いろいろな場所を回ったりして、さらに不安が強くなることもあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
身体だけでなく、心理・社会背景も見る
痛みには、身体の要因だけでなく、心理的な要因や社会的な要因も関わります。
これは「気のせい」という話ではありません。
痛みは、身体の状態、神経の反応、睡眠、疲労、不安、仕事、家庭環境、周囲の理解など、いろいろなものの影響を受けます。
| 身体の要因 | 組織の状態、関節の動き、筋力、炎症、神経の関与、体力など。 |
|---|---|
| 心理的な要因 | 痛みへの不安、恐怖、過去の経験、睡眠不足、ストレスなど。 |
| 社会的な要因 | 仕事の負担、家庭環境、休めるかどうか、周囲の理解、経済的な不安など。 |
組織の状態、関節の動き、筋力、炎症、神経の関与、体力など。
痛みへの不安、恐怖、過去の経験、睡眠不足、ストレスなど。
仕事の負担、家庭環境、休めるかどうか、周囲の理解、経済的な不安など。
身体を見ることは大切です。
でも、身体だけを見ると、患者さんの生活の中で何が痛みを強めているのかが見えにくくなります。
良くなった理由を、簡単に決めつけない
バイオメカニクス的なアプローチで症状が良くなることはあります。
それは事実です。関節の動きが変わる、筋肉の出力が変わる、動作がしやすくなる。そういうことはあります。
ただ、良くなったからといって、「自分の見立てが完全に正しかった」とは限りません。
時間経過、安心感、説明による納得、動くきっかけができたこと、患者さん自身の回復力。いろいろな要素が重なって変化している可能性があります。
患者さんが良くなった時ほど、施術者は自分の手柄にしたくなります。でも、改善した理由をひとつに決めつけると、次の患者さんで同じ失敗をしやすくなります。
良くなった理由を冷静に見ることも、臨床ではかなり大事です。
なぜ構造に偏りやすいのか
これは、施術者個人だけの問題ではないと思っています。
学校では、解剖学、運動学、生理学をたくさん学びます。もちろん大切です。
一方で、痛みのメカニズム、神経科学、心理社会的な要因については、学ぶ量が少ないこともあります。
すると、どうしても目に見えるもの、触れるもの、説明しやすいものに寄っていきます。

まなぶ先生

瀬谷崎
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、身体の構造を見ます。
関節の動き、筋肉の働き、姿勢、動作、痛みの出方。こうした評価は大切にしています。
ただ、それだけで終わらせないようにしています。
患者さんが何に困っているのか、何を怖がっているのか、どんな生活の中で痛みが出ているのか。そこまで見ないと、施術方針も説明も浅くなります。
構造を見る。でも、構造だけで決めつけない。身体の評価と生活背景を合わせて、その人に必要な施術と説明を考えます。
こんな方は一度ご相談ください
- 画像で異常を指摘されてから、痛みへの不安が強くなった
- 姿勢や歪みを指摘されたが、何をすればいいか分からない
- 腰痛、肩の痛み、膝の痛みなどが長引いている
- 痛い場所だけを施術しても、すぐ戻ってしまう
- 身体の状態と生活背景を含めて、説明を受けたい
急な強い痛み、しびれや脱力、発熱、外傷、排尿・排便の異常、安静にしていても強い痛みが続く場合などは、まず医療機関での確認が必要になることがあります。
参考
- Beecher HK. Relationship of significance of wound to pain experienced. JAMA. 1956.
JAMA PDF - Jensen MC, et al. Magnetic Resonance Imaging of the Lumbar Spine in People without Back Pain. NEJM. 1994.
NEJM - Nakashima H, et al. Abnormal findings on magnetic resonance images of the cervical spines in 1211 asymptomatic subjects. Spine. 2015.
PubMed
身体を見る。でも、身体だけで終わらない
バイオメカニクスは必要です。解剖学や運動学を軽視していいわけではありません。
ただ、痛みは構造だけで決まるものではありません。
画像所見、姿勢、動き、筋力、不安、生活背景。いろいろな要素を合わせて見ていくことで、患者さんにとって納得しやすい説明と施術につながります。

瀬谷崎













