同じ姿勢が続くと出ていた首の痛みと張りが施術を経て仕事のあとも気にならなくなった例(20代女性)
主訴
2026年3月、首の痛みでご来院されました。首を動かしたときにはっきりした痛みはなく、長時間同じ姿勢が続くと痛みが出てくるタイプで、仕事中に首の張りを感じ、仕事のあとまで残ることがある状態でした。動かすと痛いわけではないため、どこに相談すればよいか迷っていたとのことです。
当院の評価
患者様への説明
首の動きを確かめると、どの方向に動かしても痛みはなく、左右に倒したときに首の横から付け根にかけて張りが出ていました。姿勢を見ると、肩甲骨が外側に開いた位置にあり、頭が肩より前に出た状態でした。この姿勢では、胸の前の筋肉(小胸筋)が縮んで肩甲骨を前に引き、首の後ろの筋肉(頚部伸筋群・後頭下筋)や肩甲骨を持ち上げる筋肉(肩甲挙筋)、首の横の筋肉(胸鎖乳突筋)が頭を支え続けることになります。動かしたときに痛まないのは関節や筋肉を傷めているからではなく、同じ姿勢で支え続ける時間が長いことで張りと痛みが出ていると考えました。
日常動作・解剖学的動診
【動作】頚部の動診で痛みなし/両側屈で首の張り 【日常】長時間の同じ姿勢で痛みが誘発/仕事中に張り・仕事後に残る 【所見】肩甲骨外転位・頭部前方位
身体機能評価
小胸筋・肩甲挙筋・胸鎖乳突筋・後頭下筋・頚部伸筋群の緊張/肩甲骨の外転位/僧帽筋中部・下部の出力低下
判断
動かしても痛まず、同じ姿勢が続くと出る首の痛みで、肩甲骨が外に開いて頭が前に出た姿勢がそろっていたことから、首の筋肉そのものを傷めているのではなく、頭を支え続ける筋肉に負担が集まっている状態と考えました。方針は、肩甲骨を前に引いている胸の前の筋肉をゆるめて肩甲骨の位置を戻し、頭を支えている首の後ろと横の筋肉の緊張を落としたうえで、肩甲骨を背中側で支える筋肉(僧帽筋中部・下部)のトレーニングで、同じ姿勢が続いても張りが出にくい状態をつくることとしました。
施術の様子
患者様への説明
肩甲骨が外に開いた姿勢に対して、胸の前の筋肉(小胸筋)と肩甲骨を持ち上げる筋肉(肩甲挙筋)をゆるめ、肩甲骨と肋骨のあいだの動きを引き出すモビライゼーション(関節をゆっくり動かして動きを広げる手技)を行いました。頭が前に出た姿勢に対しては、首の横の筋肉(胸鎖乳突筋)、首の後ろの筋肉(頚部伸筋群)、後頭部の付け根の筋肉(後頭下筋)をゆるめています。あわせて、肩甲骨を背中側で支える筋肉(僧帽筋の中部・下部)のトレーニングを行い、姿勢を保ちやすくしました。
専門的内容
【手技療法】肩甲骨外転位に対して:小胸筋・肩甲挙筋へのアプローチ/肩甲胸郭関節のモビライゼーション。頭部前方位に対して:胸鎖乳突筋・頚部伸筋群・後頭下筋へのアプローチ 【運動療法】僧帽筋中部・下部のトレーニング
施術の経過
-
初期
初回に肩甲骨まわりと首の筋肉をゆるめ、2回目には仕事中の首の張りが気にならなくなり、仕事終わりに少し気になる程度になったとのことです。同じ姿勢が続く時間の長さと、張りの出方の関係を確かめながら進めました。
-
中期
肩甲骨の位置が戻ってきた段階で、僧帽筋の中部・下部のトレーニングの比重を増やしました。6回目には、仕事のあとに出ていた首の痛みも出なくなったとのことです。
-
後期
約10回、4か月の施術を経て、仕事中も仕事のあとも首の痛みや張りを気にせず過ごせる状態になりました。現在は、肩甲骨と頭の位置を保つためのメンテナンスと、姿勢を整える施術を継続されています。
料金・通院目安
料金の目安
初回料金
3,740円
2回目以降の料金
6,480円
通院の目安
施術回数
約10回(その後はメンテナンスと姿勢を整える施術を継続中)
施術期間
約4か月(その後も継続中)
ここでは、この症例の記録とは別に、「首を動かしたときの痛みはないのに、長時間同じ姿勢が続くと出てくる首の痛みと張り」という状態について、一般的な見方やご自宅でのヒント、医療機関へ相談する目安を順にたどります。
動かしても痛くないのに、じっとしていると首が痛くなるのはなぜ?
首の痛みには、動かしたときに出るものと、同じ姿勢が続いたときに出るものがあります。後者は、関節や筋肉を傷めているというより、頭を支え続けている筋肉に負担が積み重なって出るタイプだと言われています。頭が肩より前に出た姿勢では、首の後ろや横の筋肉が頭の重さを支え続けることになり、同じ姿勢の時間が長いほど張りが強まり、やがて痛みとして感じられることがあります。
首の張りの背景に、肩甲骨の位置があることも
肩甲骨が外側に開いた位置にあると、胸の前の筋肉が縮んで肩甲骨を前に引き、その上に乗っている首は前に出やすくなります。この症例では、首そのものの手技に加えて、肩甲骨を前に引いている胸の前の筋肉をゆるめ、肩甲骨を背中側で支える筋肉(僧帽筋の中部・下部)のトレーニングを組み合わせました。首だけをほぐすと一時的に楽になっても、肩甲骨の位置が変わらなければ同じ姿勢でまた支え続けることになるためです。
「仕事中」から「仕事後」へ、出る時間帯の変化を見る
同じ姿勢で出るタイプの首の痛みは、どのくらいの時間で出るか、仕事中か仕事のあとかといった出る時間帯の変化が、経過を見るうえでの手がかりになります。この症例では、仕事中の張りが先に気にならなくなり、その後に仕事のあとの痛みが出なくなるという順序で変化しました。同じ20代の首肩の症状でも、猫背が気になっていた仕事中の肩こりの例のように、気になっている点によって組み立ては変わります。
動かしても痛くないのに同じ姿勢で出る首の痛みでは、首の筋肉だけでなく、肩甲骨の位置と頭の位置、そして背中側で肩甲骨を支える筋肉が働いているかをあわせて見ることが、進め方を考えるうえで役立つと言われています。
稲毛田 和磨動かしても痛くないと、「どこも悪くないのに痛い」と感じて相談しづらいかもしれません。でも、同じ姿勢で出てくる首の痛みには、支え方のかたよりという理由があることが多いです。首だけでなく、肩甲骨と頭の位置から一緒に確かめていきましょう。
こんな方に気になりやすい(セルフチェック)
次のような項目に心当たりが多い方は、負担が集まりやすい傾向があると言われています。当てはまること自体が異常を意味するわけではありません。
- 首を動かしても痛くないが、同じ姿勢が続くと首が痛くなる
- 仕事中に首の張りを感じ、仕事のあとまで残ることがある
- 首を横に倒すと、首の横から付け根にかけて張りを感じる
- 肩が前に入り、頭が前に出ていると言われたことがある
- 首をほぐすと一時的に楽になるが、翌日にはまた張ってくる
ご自宅でできる工夫
痛みが和らいできたら、一般的なセルフケアとして次のような工夫が知られています。
- 30〜60分に一度は姿勢を変え、胸を開いて肩甲骨を軽く寄せる
- 画面の高さを目線に近づけ、頭が前に出にくい環境をつくる
- うつぶせや座った姿勢で、肩甲骨を下げながら寄せる動きをゆっくり数回行う
痛みやしびれが強いとき、力が入りにくいときは無理に行わず中止し、医療機関にご相談ください。
こんなときは医療機関へ
多くは時間とともに和らいでいくと言われていますが、次のような場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。
- 腕や手にしびれ、力の入りにくさが出てきた
- 安静にしていても痛みが強く、夜も眠れない
- 今まで経験したことのない強い頭痛を伴う
- 発熱や体重減少など体調の不調を伴っている
- 首の痛みとともにめまいや吐き気がある
よくある質問
動かしても痛くないのに、施術を受ける意味はありますか?
この症例では、動かしたときの痛みはなかったものの、同じ姿勢が続くと出る首の痛みと張りがあり、肩甲骨と頭の位置のかたよりが関わっていました。首をゆるめる手技に加えて肩甲骨の位置を戻し、支える筋肉を働かせることで、仕事のあとまで残っていた痛みが出なくなりました。状態によって進め方は異なりますので、来院時にご相談ください。
どのくらいの回数と期間がかかりましたか?
この症例では、2回目で仕事中の張りが気にならなくなり、6回目で仕事のあとの痛みも出なくなりました。約10回、4か月を経て、現在はメンテナンスと姿勢を整える施術を継続されています。経過は体の状態や生活によって異なります。
首だけでなく肩甲骨のトレーニングもするのはなぜですか?
この症例では、肩甲骨が外に開いた位置にあることで首が前に出やすくなっていました。肩甲骨を背中側で支える筋肉(僧帽筋の中部・下部)が働くと、同じ姿勢が続いても首の筋肉だけで頭を支え続けなくて済むと言われています。首の症状でも、肩甲骨から整えることがあります。
稲毛田 和磨動かしても痛くないのに、同じ姿勢が続くと首が痛くなるという方は、肩甲骨と頭の位置から確かめると進め方が見えてきます。どのくらいの時間で、どんな場面で出るかを教えていただければ、一緒にたどっていきますので、一度ご相談ください。
この症状について、担当者と複数のスタッフで臨床的に検討したカンファレンス記事もあります。評価の進め方や考え方の詳細はこちらをご覧ください。
施術担当者

経歴
症例レポートは、改善した例だけでなく、そうでなかった例も含めて結果を選ばず掲載しています。













動かしても痛くないのに、同じ姿勢が続くと首が痛くなるという訴えは、検査で異常が見つかりにくく、ご本人も「気のせいかな」と思いがちです。この症例では、肩甲骨が外に開いて頭が前に出た姿勢で、首の筋肉が頭を支え続けていたことが張りと痛みにつながっていました。首だけをほぐすのではなく、肩甲骨の位置を戻して背中側で支える筋肉を働かせたことで、仕事のあとまで残っていた痛みが出なくなり、今は姿勢を保つためのケアを続けていただいています。