肩甲骨の上方回旋は1種類じゃない。屈曲と外転で違う運動軸

腕を上げる時、肩甲骨は同じ動きをしていない

「肩甲骨を上方回旋させる」と一括りにすると、評価も介入も粗くなります。肩の屈曲と外転では、早期に起こる肩甲骨上方回旋の軸が異なるため、どちらの動きで詰まっているのかを分けて見ることが大切です。

この記事について

肩関節屈曲・外転早期における肩甲骨上方回旋の違いを整理したものです。肩甲骨の可動性低下が関わる肩の機能障害では、「上方回旋が足りない」で止めずに、屈曲と外転で必要な運動軸を分けて確認する視点が重要になります。

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伊藤聡史

肩の屈曲・外転早期における肩甲骨の上方回旋は、屈曲では肩鎖関節を軸として脊柱から離れていくような上方回旋、外転では肩甲骨内に軸を持ち脊柱に近づいていくような上方回旋の2種類があります。

結論:肩甲骨の上方回旋は、屈曲時と外転時で同じ動きとして扱わず、運動軸の違いまで見て評価・介入することが大切です。

肩を上げる動きでは、肩甲骨の上方回旋が必要になります。ただし、臨床で問題になるのは「上方回旋しているかどうか」だけではありません。

同じ上方回旋でも、肩関節屈曲と外転では、動き始めに求められる肩甲骨の回り方が異なります。ここを分けて見ないと、肩甲骨の可動性低下や運動制御の問題を見落としやすくなります。

上方回旋を一括りにしない

肩甲骨上方回旋という言葉だけを聞くと、肩甲骨が外側上方へ回る一つの動きのように感じます。しかし実際には、腕をどの方向へ上げるかによって、肩甲骨が回る軸や、脊柱との距離の変化が変わります。

特に肩の屈曲と外転では、早期の肩甲骨運動に違いがあります。屈曲で必要な上方回旋と、外転で必要な上方回旋を同じものとして扱うと、介入の方向性がずれてしまうことがあります。

肩関節屈曲時と外転時の肩甲骨上方回旋の違い
肩関節屈曲時と外転時では、肩甲骨上方回旋の軸が異なります。肩甲骨の動き方を分けて見ることで、肩の機能障害をより具体的に評価しやすくなります。

「上方回旋を出す」だけでは不十分です。屈曲で必要な上方回旋なのか、外転で必要な上方回旋なのかを分けると、評価と介入がかなり具体的になります。

屈曲時:脊柱から離れていく上方回旋

肩関節屈曲の早期では、肩甲骨は肩鎖関節を軸として、脊柱から離れていくように上方回旋します。腕を前方へ上げていく中で、肩甲骨が胸郭上を外側へ逃げるような要素が必要になります。

この動きが出にくい場合、肩甲骨が十分に追従できないまま上腕骨だけが動こうとします。その結果、肩前方や上方の詰まり感、挙上時の違和感、代償的な肩すくめにつながることがあります。

屈曲で見るポイント

  • 腕を前に上げる早期から肩甲骨が固まっていないか
  • 肩甲骨が脊柱から離れる方向へ動けているか
  • 肩すくめや体幹伸展で代償していないか
  • 肩甲骨を補助すると屈曲時の詰まり感が変化するか

外転時:脊柱に近づいていく上方回旋

肩関節外転の早期では、肩甲骨内に軸を持ち、脊柱に近づいていくような上方回旋が起こります。腕を横から上げるときは、屈曲時とは違う肩甲骨の回り方が求められます。

外転でこの上方回旋が出にくい場合、上腕骨頭の動き、肩甲骨の位置、鎖骨の動きがうまく噛み合わず、外転途中の引っかかりや痛みにつながることがあります。

外転で見るポイント

  • 腕を横から上げるとき、肩甲骨が早期から自然に回っているか
  • 肩甲骨が脊柱に近づくような回旋要素を持てているか
  • 外転途中で肩甲骨が過剰に挙上していないか
  • 肩甲骨の誘導で外転時の痛みや引っかかりが変化するか

屈曲と外転を比較して見る

肩甲骨の可動性低下を評価するときは、屈曲だけ、外転だけを見るのではなく、両方を比較すると情報が増えます。

肩関節屈曲 肩鎖関節を軸として、脊柱から離れていくような上方回旋が重要です。
前方挙上で肩甲骨が外側へ逃げられない場合、屈曲時の詰まりや代償につながることがあります。
肩関節外転 肩甲骨内に軸を持ち、脊柱に近づいていくような上方回旋が重要です。
横から挙げる動きで肩甲骨が適切に回れない場合、外転途中の痛みや引っかかりを考える材料になります。
共通して見ること 上方回旋の量だけでなく、動き出し、軸、脊柱との距離、肩すくめ、体幹代償、左右差を確認します。
評価のヒント

屈曲では動けるのに外転で詰まる、または外転では動けるのに屈曲で詰まる場合、単なる「上方回旋不足」ではなく、運動方向ごとの肩甲骨運動軸の問題として整理すると仮説が立てやすくなります。

介入も運動軸を意識する

肩甲骨の可動性低下に対して介入するときも、「肩甲骨を動かす」だけでは雑になります。屈曲で必要な動きが足りないのか、外転で必要な動きが足りないのかによって、誘導する方向や運動練習の内容は変わります。

たとえば屈曲時の問題であれば、肩甲骨が脊柱から離れていく方向へ動けるかを確認します。外転時の問題であれば、肩甲骨内の軸を意識しながら、脊柱に近づいていくような回旋要素が出るかを確認します。

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伊藤聡史

肩甲骨の可動性低下による肩の機能障害では、屈曲と外転で異なる2つの運動軸を意識した介入が必要になります。どの方向で動きにくいのかを分けて見ることが大切です。

肩甲骨上方回旋は、方向ごとに分けて見る

肩甲骨の上方回旋は、肩を上げるときに欠かせない動きです。ただし、屈曲時と外転時では、早期に起こる肩甲骨の運動軸が異なります。

屈曲では肩鎖関節を軸として脊柱から離れていくような上方回旋、外転では肩甲骨内に軸を持ち脊柱に近づいていくような上方回旋を意識します。

とんとん整骨院では、肩の痛みや動かしにくさを、痛みの部位だけでなく、肩甲骨、鎖骨、胸郭、体幹の動きまで含めて確認し、症状の背景を多角的に見極めることを大切にしています。

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伊藤聡史

肩甲骨の上方回旋は、屈曲と外転で同じように見えても、早期の運動軸が異なります。どちらの方向で動きにくいのかを分けて見ることで、評価や介入の方向性を整理しやすくなります。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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