歩くとお尻が痛い時に見落としたくない血管由来の臀部痛
症状コラム
歩くとお尻が痛い、それを筋肉だけで片づけない
歩いていると臀部が痛くなり、休むと落ち着く。こういう訴えは脊柱管狭窄症や梨状筋まわりの痛みとして見られがちですが、まれに血管由来の問題が隠れていることがあります。

歩行時の臀部痛は、筋肉や腰だけで説明しきれないことがあります。とくに「歩くと出る」「休むと引く」という跛行の特徴がある場合、血流の問題も評価の参考に入れておきたいところです。
歩くとお尻が痛い。
少し休むと落ち着く。
また歩き出すと同じように痛くなる。
こういう訴えを聞いた時、まず思い浮かびやすいのは腰部脊柱管狭窄症です。
あるいは、梨状筋や中殿筋など、お尻まわりの筋肉の痛みとして見られることもあります。
もちろん、それらが関係しているケースは多いです。
ただ、まれに上殿動脈や内腸骨動脈系の血流障害による臀部跛行が関与していることがあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
臀部跛行という見方
跛行というと、ふくらはぎや太ももの痛みを思い浮かべる人が多いかもしれません。
歩くと痛くなる。休むと落ち着く。また歩くと痛くなる。
このような反応は、血流が必要な運動量に追いつかない時に起こることがあります。
臀部でも同じようなことが起きる場合があります。
上殿動脈や内腸骨動脈系の血流が不十分になると、歩行時にお尻の筋肉へ十分な血液が届かず、臀部に痛みや重だるさが出ることがあります。
「お尻が痛い=梨状筋」「歩くと痛い=狭窄症」と決め打ちすると、血管由来の臀部痛は見落としやすくなります。
もちろん、整骨院で血管病変を確定することはできません。
ただ、「これは筋肉だけでは説明しにくいかもしれない」と疑う材料を拾うことはできます。
脊柱管狭窄症や筋痛と見誤りやすい
臀部跛行がややこしいのは、症状だけ見ると脊柱管狭窄症に似ることがあるからです。
歩くと痛い。休むと楽になる。
この流れだけを見ると、腰の神経の問題を疑いたくなります。
また、痛む場所がお尻なので、梨状筋や中殿筋などの筋痛として処理されることもあります。
でも、症状の出方をもう少し細かく見ると、違和感が出ることがあります。
| 見たいポイント | 腰や神経由来で考えたい反応 | 血流由来も疑いたい反応 |
|---|---|---|
| 痛みの出る条件 | 姿勢や腰の角度で変わりやすい | 歩行距離や運動量で再現しやすい |
| 休み方 | 前かがみや座位で楽になりやすいことがある | 立ったまま休んでも落ち着くことがある |
| 触診や筋への介入 | 筋緊張や圧痛、動作で反応が変わることがある | 筋への施術だけでは歩行時症状が変わりにくい |
| 関連する背景 | 腰部症状、神経症状、姿勢変化など | 喫煙、糖尿病、脂質異常、動脈硬化リスクなど |
この表は、どちらかを確定するためのものではありません。
あくまで、見落としを減らすための整理です。
臨床では、ひとつの所見で決めるのではなく、複数の所見を合わせて可能性を考えます。
筋肉の痛みとして処理しすぎない
お尻が痛い人を見た時、筋肉を触ると硬さや圧痛が見つかることはあります。
でも、筋肉に反応があることと、その筋肉が痛みの主原因であることは同じではありません。
歩いて痛くなるから、梨状筋をほぐす。
中殿筋が硬いから、ストレッチする。
それで変化が出る人もいます。
一方で、何度やっても歩行時の臀部痛が変わらないなら、見立てを修正する必要があります。
筋肉への施術や運動で局所の張り感は変わるのに、歩く距離や歩行時の臀部痛がほとんど変わらない場合は、別の要因も疑う材料になります。
少し辛口に言うと、「お尻が痛いからお尻の筋肉」という見方だけでは雑です。
筋肉、神経、関節、血流。
どこがどの程度関係していそうかを、反応を見ながら考えたいところです。
問診で拾いたいこと
こういうケースで大切なのは、問診です。
どれくらい歩くと痛みが出るのか。
休むと何分くらいで落ち着くのか。
座らないと楽にならないのか、立って休んでも楽になるのか。
前かがみで楽になるのか。
階段や坂道で変わるのか。
ふくらはぎや太ももにも症状があるのか。
喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常などの背景はあるのか。
こうした情報を聞くだけで、見立てはかなり変わります。

まなぶ先生

瀬谷崎
同じ臀部痛でも、歩行距離で毎回同じように出るのか、姿勢で変わるのか、筋への刺激で変わるのか。
ここを分けるだけで、かなり臨床判断は変わります。
疑った時は医療機関につなぐ
血管由来の臀部痛が疑われる場合、整骨院だけで抱え込むべきではありません。
必要に応じて、医療機関での確認が必要になります。
とくに、動脈硬化のリスクがある人、歩行で症状が再現しやすい人、筋肉や腰への介入で変化が乏しい人では、血流の問題を疑う材料になります。
もちろん、すぐに「上殿動脈が閉塞しています」と断定するわけではありません。
整骨院でできるのは、可能性を拾い、必要な確認につなぐことです。
歩くと臀部痛が出て休むと改善する、歩ける距離が短くなっている、動脈硬化リスクがある、筋肉や腰への施術で変化が乏しい。このような場合は、医療機関での確認が必要になることがあります。
見逃しやすいものほど、知っているかどうかで差が出ます。
頻度が低いから無視するのではなく、頻度が低いからこそ「必要な時に思い出せる」ことが大切です。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、痛みをひとつの原因に決めつけないことを大切にしています。
臀部痛であれば、お尻の筋肉だけを見るのではなく、腰、股関節、神経症状、歩行時の反応、生活背景を確認します。
必要に応じて、医療機関での確認が必要な可能性もお伝えします。
整骨院で対応できる範囲を考えることも大事ですが、整骨院で抱え込まない判断も同じくらい大事です。
筋肉の痛みとして説明できそうに見える時ほど、他の可能性を一度確認します。患者さんを不安にさせるためではなく、見落としを減らすためです。
こんな臀部痛は一度ご相談ください
- 歩いているとお尻が痛くなり、休むと落ち着く
- 歩ける距離が以前より短くなっている
- 梨状筋や中殿筋の施術を受けても歩行時の痛みが変わらない
- 腰の狭窄症と言われたが、説明に納得しきれていない
- 喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常などの背景があり、歩行時痛がある
急な強い痛み、足の冷感や色調変化、強いしびれや脱力、安静時にも強い痛みが続く場合などは、早めに医療機関で確認してください。
まれな疾患ほど、知らないと候補に上がらない
上殿動脈の閉塞や内腸骨動脈系の血流障害による臀部跛行は、日常的によく見る疾患ではありません。
だからこそ、知らなければほぼ考えません。
歩行時の臀部痛を、脊柱管狭窄症や梨状筋まわりの痛みとして説明できそうに見えることもあります。
でも、説明できそうな時ほど、ひとつ立ち止まる。
歩くと出るのか。休むとどう引くのか。姿勢で変わるのか。筋への介入で変わるのか。
こうした問いを持つだけで、見落としは減らせます。

瀬谷崎
参考
- Batt M, et al. Angioplasty of the superior gluteal artery in 34 patients with buttock claudication. J Endovasc Ther. 2014.
PubMed - Endovascular revascularization of isolated internal iliac artery for symptomatic occlusive atherosclerotic disease. J Vasc Surg Cases Innov Tech. 2023.
PMC - Buttock claudication due to occlusion of the superior gluteal artery. BMJ Case Reports.
BMJ Case Reports













