しびれや筋力低下をどう見るか?脊髄神経の地図を臨床で使うために

神経症状を見る時は、地図を持っておく

しびれ、筋力低下、反射の変化。これらを見た時に、どの神経根が関与していそうかを整理できると、臨床判断はかなり落ち着きます。

脊髄神経のまとめ図1
脊髄神経の分布や働きの整理 1
脊髄神経のまとめ図2
脊髄神経の分布や働きの整理 2

神経症状は、ひとつの所見だけで決めません。感覚、筋力、反射、痛みの出方、生活での困りごとを合わせて、どの神経根の関与が疑われるかを整理します。

しびれがある。

力が入りにくい。

足首が上がりにくい。

反射が左右で違う。

こうした訴えや所見がある時、施術者は神経のことを考えます。

ただ、神経の話は覚えることが多く、なんとなく苦手意識を持つ人もいます。

でも臨床で大切なのは、完璧に暗記することより、神経症状をどう整理して、何を見落とさないかです。

まなぶ先生
まなぶ先生

神経の表って、覚えるだけで終わってしまいがちです。

瀬谷崎
瀬谷崎

表を覚えることも大事ですが、臨床では「どの所見と組み合わせるか」の方が大事です。神経の地図は、答えではなく道具です。

脊髄神経は、身体を見るための地図になる

脊髄神経は、脊髄から出て身体へ向かう神経です。

一般的には、頸神経、胸神経、腰神経、仙骨神経、尾骨神経に分けて整理されます。

それぞれの神経は、皮膚の感覚、筋肉の働き、反射などに関わります。

たとえば、ある場所にしびれがある時、その場所がどの神経根の領域と近いのかを考えます。

ある筋肉の力が入りにくい時、その筋肉に関わる神経根を考えます。

反射が落ちている時も、その反射に関係する神経根を見ます。

神経の地図を持っておくと、「なんとなくしびれている」ではなく、「どの神経根の関与を疑うか」に整理できます。

もちろん、地図は地図です。

実際の人の身体には個人差がありますし、神経の支配はきれいに線で分かれているわけではありません。

だからこそ、ひとつの表だけで決めず、複数の情報を合わせて見ます。

デルマトームは、しびれの場所を整理する

デルマトームは、皮膚の感覚と神経根の関係を整理する考え方です。

手のどこがしびれるのか。

足のどの範囲に感覚の違いがあるのか。

太ももなのか、すねなのか、足の甲なのか、足裏なのか。

場所を丁寧に聞くことで、どの神経根が関与していそうかを考える材料になります。

ここが大事

デルマトームは便利ですが、実際の感覚領域には重なりがあります。「この場所だから絶対にこの神経根」と断定するのではなく、評価の参考として使います。

しびれの場所だけで決めると、見誤ることがあります。

痛みの出方、筋力、反射、姿勢や動作での変化、画像所見がある場合はその内容。

こうした情報と合わせて、神経根の関与を疑うかどうかを考えます。

ミオトームは、力の入りにくさを見る

ミオトームは、筋肉の働きと神経根の関係を整理する考え方です。

たとえば、足首を上げる力、親指を反らす力、つま先立ちする力などは、腰や仙骨の神経根評価でよく見ます。

首から腕の症状であれば、肘を曲げる、手首を伸ばす、肘を伸ばす、指を動かすといった動きも見ます。

大事なのは、「痛いから力が入らない」のか、「神経の関与を疑う筋力低下」なのかを分けて考えることです。

見る所見 主に何を確認するか 注意点
感覚 しびれや感覚低下の場所 領域には重なりがあり、場所だけで断定しない
筋力 特定の動きに力が入るか 痛みによる抑制と神経由来の低下を分けて考える
反射 腱反射の左右差や低下 個人差があるため、左右差と他の所見を合わせる
経過 悪化しているか、範囲が広がるか 進行性の脱力や強い症状は医療機関での確認が必要

筋力評価も、単独で決めるものではありません。

痛みが強い時は、痛みを避けるために力が入りにくく見えることがあります。

だから、左右差、痛みの有無、動作の再現性、感覚所見と合わせて見ます。

反射は、神経学的所見のひとつとして見る

深部腱反射も、神経根の関与を考える時に使われます。

膝蓋腱反射、アキレス腱反射などは、腰下肢症状の評価でよく確認されます。

ただし、反射は個人差が大きいです。

もともと反射が出にくい人もいますし、検査時の緊張や姿勢でも変わります。

そのため、反射が少し違うだけで即決めるのではなく、左右差や他の神経学的所見と合わせて見ます。

まなぶ先生
まなぶ先生

反射が弱いだけで、神経の問題と考えていいんでしょうか?

瀬谷崎
瀬谷崎

反射だけでは決めません。感覚、筋力、痛みの出方、経過と合わせて「関与を疑う材料」として扱います。

神経学的所見は、きれいに全部そろうこともあれば、そろわないこともあります。

だから、ひとつずつ拾って、全体のつじつまを見ます。

ひとつの所見で決めない

神経の表は便利です。

でも、便利な表ほど、使い方を間違えると危ないです。

「この場所がしびれるからL5」

「足首が上がりにくいからL4」

「反射が弱いからS1」

こうやって単独所見で決めると、外れることがあります。

実際には、神経根の支配には重なりがあり、末梢神経の問題、筋肉や関節の問題、痛みによる抑制なども関係します。

評価の考え方

神経根の関与は、感覚、筋力、反射、症状の経過、動作での反応を組み合わせて推測します。ひとつの所見だけで確定するものではありません。

特に、しびれや脱力が進行している場合は注意が必要です。

整骨院で対応できる範囲を考えつつ、必要に応じて医療機関での確認につなぐ判断も大切になります。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、神経症状を「なんとなくしびれている」で終わらせないことを大切にしています。

どこがしびれるのか。

どの動きで変わるのか。

筋力低下があるのか。

反射に左右差があるのか。

症状が進行しているのか、落ち着いているのか。

こうした情報を集めながら、神経根の関与を疑う材料があるかを見ます。

とんとんの基本姿勢

神経の地図は大切ですが、地図だけで患者さんを見ない。目の前の症状、身体の反応、生活での困りごとを合わせて判断します。

こんな症状は一度ご相談ください

  • 手足のしびれが続いている
  • 足首や指に力が入りにくい
  • 左右で感覚や力の入り方が違う
  • 腰や首の痛みと一緒に、腕や脚へ症状が出ている
  • どの神経が関係しているのか整理して説明してほしい
医療機関の受診について

急な強い脱力、しびれの急速な悪化、排尿・排便の異常、歩行困難、強い外傷後の症状などがある場合は、早めに医療機関で確認してください。

神経の地図は、決めつけるためではなく整理するために使う

脊髄神経、デルマトーム、ミオトーム、反射。

これらは覚えるだけだと、ただの表になります。

でも、しびれの場所、力の入りにくさ、反射の変化、症状の経過を整理する時には、とても役に立ちます。

大事なのは、地図を見ながらも、目の前の患者さんをちゃんと見ることです。

表と違うからおかしい、ではありません。

表と照らし合わせながら、どこまで一致していて、どこが違うのかを見る。

そこに臨床判断があります。

瀬谷崎
瀬谷崎

神経の表は、丸暗記して終わりではありません。しびれ、筋力、反射を整理して、見落としを減らすための道具として使いたいですね。

参考

  • Neuroanatomy, Spinal Nerves. StatPearls. NCBI Bookshelf.
    NCBI Bookshelf
  • Anatomy, Skin, Dermatomes. StatPearls. NCBI Bookshelf.
    NCBI Bookshelf
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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