首の触診で注意したい場所。頸部を安全に評価するための基本

首の触診は、やさしく触ればいいだけではない

首には、血管、神経、筋肉がかなり密に集まっています。だから頸部の触診では、どこに何があるのかを知った上で、力加減と目的をはっきりさせる必要があります。

頸部の触診では、頸動脈洞、腕神経叢、大後頭神経などへの配慮が必要です。触れること自体が悪いのではなく、構造を知らずに強く・長く・雑に触ることが危険です。

首の痛み、肩こり、頭痛、腕のしびれ。

こうした症状を見る時、頸部の触診をする場面は多いです。

筋肉の緊張を見たり、圧痛を確認したり、神経症状との関係を整理したり。

触診はとても大切な評価です。

ただ、頸部は「なんとなく押してみる」には少し怖い場所でもあります。

少し辛口に言うと、首を触るなら、どこに何があるかを知らないまま触らない方がいいです。

まなぶ先生
まなぶ先生

首の触診って、筋肉をやさしく触るだけなら大丈夫そうに見えます。

瀬谷崎
瀬谷崎

やさしく触るのは前提です。ただ、頸部は血管や神経が近いので、「どこを避けるか」も知っておきたいです。

前外側頸部は、血管と神経が近い

まず注意したいのが、首の前から外側にかけての領域です。

頸動脈三角には、頸動脈洞があります。

ここは圧受容器が関係する部位で、強い刺激や長い圧迫は避けたい場所です。

また、外側頸三角には副神経や横隔神経、斜角筋三角には腕神経叢が走ります。

触診で確認したいことがあっても、強く押し込むような触り方は適しません。

頸部前外側の触診で注意したい部位

頸動脈三角、外側頸三角、胸鎖乳突筋後縁、斜角筋三角などは、触診時に構造を意識したい部位です。

特に注意したい前外側の部位

頸動脈三角、外側頸三角、胸鎖乳突筋近位後縁、斜角筋三角は、血管や神経が近くを走ります。触る目的を明確にし、強い圧迫や不用意な刺激を避けます。

頸部を評価する時は、「痛い場所を探す」だけでは足りません。

押した時に痛いから問題がある、ではなく、そこに何が走っていて、どの反応を見たいのかを考えます。

筋肉を触っているつもりでも、少し位置が変われば血管や神経に近づきます。

だから、首の触診では解剖学がそのまま安全管理になります。

頸動脈洞は、強く触らない

頸動脈洞は、血圧調整に関係する圧受容器がある部位です。

医療現場では特殊な目的で頸動脈洞マッサージが行われることがありますが、それは適応や禁忌を確認した上で行う医療行為です。

整骨院の触診で、ここを強く押したり、長く圧迫したりする必要は基本的にありません。

頸動脈洞は「触れると危ないから全部避けろ」というより、評価目的なく強く刺激しない場所として覚えておきたいです。

患者さん側からすると、首の前側を強く触られるだけでも不安があります。

苦しい感じ、息が詰まる感じ、めまい感が出る人もいます。

触診は、施術者が情報を取るためのものですが、患者さんに不快感や不安を与えてまで行うものではありません。

触れるなら短く、やさしく、目的を説明して行う。

ここはかなり基本です。

後頸部は、大後頭神経を意識する

後頸部では、大後頭神経を意識したいです。

僧帽筋付着部、頭半棘筋、下頭斜筋まわりは、頭痛や後頭部の痛みと関係して見られることがあります。

ただ、ここも「硬いから強く押す」で済ませる場所ではありません。

後頸部の触診で注意したい大後頭神経周囲の部位

僧帽筋付着部、頭半棘筋、下頭斜筋まわりでは、大後頭神経の走行を意識して触診します。

後頭部の痛みや頭痛を訴える方では、後頸部の筋や神経の反応を確認することがあります。

この時、強く押して「痛いですね」で終わると、ただ痛みを作っているだけになりかねません。

いつもの痛みが再現されるのか。

押した刺激が後頭部へ響くのか。

頸部の動きや姿勢とどう関係するのか。

そこまで合わせて見る必要があります。

まなぶ先生
まなぶ先生

後頭部の痛みがある時、強く押して確認することもありますよね。

瀬谷崎
瀬谷崎

確認はします。ただ、強く押せば情報が増えるわけではありません。再現性を見るなら、必要最小限の刺激で十分です。

注意したい部位を整理する

頸部触診で注意したい部位を、ざっくり整理すると次のようになります。

部位 主に意識したい構造 触診で注意したいこと
頸動脈三角 頸動脈洞 強い圧迫や長い刺激を避ける
外側頸三角 副神経、横隔神経 神経走行を意識し、雑に押し込まない
胸鎖乳突筋近位後縁 頸神経叢 感覚神経の反応を見ながら慎重に触れる
斜角筋三角 腕神経叢 しびれや放散反応が出る場合は刺激を控える
僧帽筋付着部 大後頭神経 後頭部への響きや普段の痛みとの一致を見る
頭半棘筋 大後頭神経 強刺激で痛みを作りすぎない
下頭斜筋 大後頭神経 後頭下筋群の緊張と神経反応を分けて見る

こうして見ると、首はかなり情報量の多い場所です。

首こり、肩こり、頭痛、腕のしびれがあるからといって、全部同じように押していいわけではありません。

どの場所を、何のために、どれくらいの刺激で触るのか。

そこを明確にしておきたいです。

患者さんへの説明も大切

首の触診では、患者さんに説明してから触れることも大切です。

首は敏感な場所です。

前側を触られるのが苦手な方もいますし、過去に強く押されて怖かった経験がある方もいます。

だから、いきなり触るのではなく、「ここは血管や神経が近いので、軽く確認します」と一言あるだけで安心感が変わります。

説明の例

首の前側や横側は、血管や神経が近くを走っています。強く押す場所ではないので、痛みやしびれの反応がないかを軽く確認します。不快感があればすぐ教えてください。

触診は、患者さんの身体から情報をもらう行為です。

不安にさせたり、我慢させたりするものではありません。

特に頸部では、患者さんの反応を聞きながら進めることが、評価の精度にも安全性にもつながります。

触診より先に確認したいこともある

頸部の症状では、触診より先に確認したいこともあります。

強い外傷後の首の痛み、発熱、激しい頭痛、めまい、ろれつが回らない、手足の脱力、歩きにくさ、広範なしびれ、排尿・排便の異常などがある場合は、整骨院だけで判断しない方がよいことがあります。

首を触って評価する前に、医療機関での確認が必要かどうかを考えることも大切です。

大切なバランス

頸部を丁寧に触診することと、触ってはいけない状況を見極めることはセットです。触診技術より前に、安全確認があります。

同業者向けに言うなら、首は「触れる技術」より「触らない判断」も大事です。

触れば何か分かる、という考え方だけだと危ないです。

触診しない方がいい場面、医療機関へつなぐべき場面を判断できて、初めて頸部を安全に評価できます。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、頸部の症状を評価する時に、痛い場所だけで判断しないことを大切にしています。

首の動き、頭痛やしびれの有無、神経症状、生活での負荷、危険なサインを確認します。

その上で必要な部位を、必要な刺激で触診します。

首は、強く押せばよい場所ではありません。

患者さんの反応を聞きながら、安全に、丁寧に評価することを大切にしています。

とんとんの基本姿勢

頸部の触診では、筋肉だけでなく血管や神経の位置も意識します。触る目的を明確にし、不快感やしびれが出る刺激は避けながら評価します。

こんな首の症状は一度ご相談ください

  • 首こりや肩こりが続いている
  • 後頭部の痛みや頭痛がある
  • 首を動かすと腕や手にしびれが出る
  • 首を触られるのが不安で、丁寧に評価してほしい
  • 首の痛みと頭痛・しびれの関係を整理したい

首は、知ってから触る

頸部の触診は、臨床でよく行われます。

でも、よく触る場所だから安全、というわけではありません。

頸動脈洞、副神経、横隔神経、頸神経叢、腕神経叢、大後頭神経。

首には、触診で配慮したい構造がたくさんあります。

だからこそ、触る場所、触る目的、触る強さを考える。

患者さんの反応を聞きながら、必要最小限の刺激で情報を取る。

それが頸部触診の基本だと思っています。

瀬谷崎
瀬谷崎

首は、触れば分かる場所ではなく、知っているから安全に触れる場所です。頸部の触診ほど、雑さが出やすいと思います。

参考

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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