ヘルニアと言われても、症状と所見が合わないことがある

画像名より、症状と所見の一致を見る

診断名は大切です。ただし、診断名だけで目の前の痛みをすべて説明できるとは限りません。

ヘルニアという言葉に引っ張られすぎないこと。症状の出方、神経学的所見、徒手検査、生活での困りごとを合わせて見る必要があります。

腰や足の痛みで病院を受診し、画像検査を受けて「腰椎椎間板ヘルニアですね」と言われる。

そこから整骨院や整体に来られる方は少なくありません。

診断名がつくと、患者さんは少し安心します。

一方で、強く不安になる方もいます。

「ヘルニアだから治らないのでは」

「手術しないといけないのでは」

「もう腰を動かせないのでは」

こういう不安を持って来られることもあります。

ここで大切なのは、診断名を軽視しないことと、診断名だけに引っ張られないことです。

まなぶ先生
まなぶ先生

病院でヘルニアと言われたら、その痛みはヘルニアが原因と考えていいんじゃないですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

そう考える場面もあります。ただ、症状や神経所見が合わないなら、一度立ち止まった方がいいです。

診断名は、臨床判断のスタート地点

腰椎椎間板ヘルニアという診断名は重要です。

特に、下肢痛、しびれ、筋力低下、感覚低下、反射の変化がある場合は慎重に見ます。

ただ、診断名がついた時点で、評価が終わるわけではありません。

むしろ、ここから臨床所見と照らし合わせる必要があります。

どの神経根が関わっていそうか。

痛みやしびれの範囲は合っているか。

筋力や反射に変化はあるか。

SLRなどの神経伸張テストはどう反応するか。

悪化する姿勢や、楽になる姿勢は何か。

こうした情報と診断名が噛み合うかを見ることが大切です。

所見が合わない時に、無理にヘルニアへ寄せない

臨床でよくあるのが、画像や診断名に合わせて、症状を無理に解釈してしまうことです。

ヘルニアと言われているから、足の違和感も全部ヘルニアのせい。

腰が痛いのも、動きにくいのも、全部ヘルニアのせい。

そう考えると、別の要因を見落としやすくなります。

合いやすい所見
デルマトームに近い下肢症状、神経伸張テストの反応、筋力・感覚・反射の変化など。

見直したい所見
症状の範囲が合わない、神経学的所見が乏しい、動作や局所負荷で説明しやすい、経過が典型的でないなど。

説明の姿勢
「ヘルニアではない」と断定するのではなく、「今の症状がどれくらいヘルニアらしいか」を丁寧に見る。

診断名に合わせて患者さんを見るのではなく、患者さんの所見に診断名がどれくらい合うのかを見る。

患者さんに何を伝えるか

ここで難しいのは、患者さんへの説明です。

「ヘルニアじゃないと思います」と強く言い切ると、病院の診断を否定されたように感じる方もいます。

逆に、「全部ヘルニアですね」と言い切ると、不必要に怖がらせることがあります。

だから、僕は説明を分けた方がいいと思っています。

説明の例

画像上のヘルニアは確認されています。ただ、今出ている症状がすべてヘルニア由来かどうかは、神経所見や動作の反応も合わせて見た方がよさそうです。

このくらいの説明であれば、診断名を否定せず、でも臨床所見を見る余地を残せます。

患者さんにとっても、「ヘルニアだから終わり」ではなく、「今の身体の反応を見ながら考える」という前向きな理解につながります。

介入も、診断名だけで決めない

ヘルニアと診断されたから、この体操。

ヘルニアだから、絶対に牽引。

ヘルニアだから、腰を反らす。

こういう単純な決め方は、あまりおすすめしません。

同じ診断名でも、反応は人によって違います。

痛みが強い時期なのか、落ち着いてきているのか。

神経症状が進行しているのか、安定しているのか。

動くと楽になるのか、悪化するのか。

患者さんが何を怖がっているのか。

ここまで見て、介入を選びたいところです。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、診断名を大切にしながらも、それだけで施術方針を決めないようにしています。

下肢症状があるなら、神経学的所見を確認します。

ヘルニアらしさが薄いなら、股関節、殿部、末梢神経、血管、筋骨格系の別要因も考えます。

必要であれば、医療機関での確認を勧めます。

「ヘルニアです」と言われた患者さんを、さらに怖がらせるのではなく、今の身体に何が起きていそうかを一緒に整理することを大切にしています。

注意したい症状

急速に進む筋力低下、排尿・排便の異常、強いしびれの悪化、安静時にも強い痛みが続く場合などは、整骨院だけで判断せず医療機関での確認が必要になることがあります。

診断名を、考える材料にする

ヘルニアという診断名は、重要な情報です。

でも、それは臨床判断のゴールではありません。

痛みの出方、しびれの範囲、神経学的所見、動作での反応、生活での困りごと。

これらを合わせて見ることで、ようやく目の前の患者さんに必要な判断が見えてきます。

瀬谷崎
瀬谷崎

診断名は大事です。でも、診断名に患者さんを合わせにいくと見落とします。所見が合っているかを、最後まで丁寧に見たいですね。

参考

  • MSD Manual Professional Edition. Lumbar Disc Herniation.
    MSD Manual
  • Correlation between clinical features and magnetic resonance imaging findings in lumbar disc prolapse.
    PMC
  • Brinjikji W, et al. Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations.
    PMC
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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