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変形性関節症に運動療法は本当に効くのか。SRとRCTが示す効果量と共同意思決定

低リスクという強みを、数値と一緒に評価する。運動療法を等身大でみる

変形性関節症(OA)に対する運動療法は、最も多く使われる介入の一つです。2026年に報告された系統的レビューとランダム化比較試験の概要(計約13,000人)から、その効果を数値で捉え直し、患者と一緒に選ぶための視点を見ていきます。

運動療法は、変形性関節症(OA)に対して広く使われている介入です。私たちも、まず運動から、と考える場面が多いのではないでしょうか。

ただ、その効果が実際どれくらいなのかを、他の介入と並べて眺める機会は意外と少ないかもしれません。今回は、5つの系統的レビュー(SR)と、追加で28件のランダム化比較試験(RCT)を統合した概要をもとに、痛みへの効果を対照群ごとに見ていきます。

変形性関節症に対する運動療法の効果を対照群ごとに示した図。痛みの平均差とGRADE確実性を並べたもの
変形性関節症に対する運動療法の効果(痛みの平均差)。マイナスは運動療法が有利、プラスは対照群が有利で、臨床的に意味のある差の目安は±8点です。Schleimer, et al. (2026) RMD Open より引用改変。

効果量を並べて見る:痛みの平均差とGRADE確実性

下の表は、対照群ごとの痛みの平均差(MD)と、その結果の確からしさをGRADE(グレード、エビデンスの確実性の評価)で示したものです。MDがマイナスなら運動療法が有利、プラスなら対照群が有利という読み方になります。臨床的に意味のある最小の差(MCID)は、この指標でおよそ8点が目安とされます。

比較(OA部位|対照群) 痛みの平均差(MD) GRADE確実性
膝OA|非介入-12.4非常に低い
混合OA|プラセボ-10.8非常に低い
手OA|非介入-10.0中等度
股OA|非介入-6.7中等度
膝OA|教育療法-4.6中等度
膝OA|ステロイド注射-4.8中等度
膝OA|関節鏡手術-0.8高い
膝OA|高位脛骨骨切り術+12.4低い
膝OA|人工膝関節置換術+17.1中等度
股OA|人工股関節置換術+24.2中等度

MD=痛みの平均差。マイナスは運動療法が有利、プラスは対照群が有利。臨床的に意味のある最小の差(MCID)の目安は±8点。

この並びから、いくつかの傾向が読み取れます。

  • 非介入やプラセボとの差は数値上は大きめですが、GRADE確実性が「非常に低い」比較が多く、そのまま受け取るには慎重さがいります
  • 教育療法・ステロイド注射・関節鏡手術との差は小さく、他の保存的・低侵襲な介入と大きくは変わりません
  • 骨切り術や人工関節置換術にはMDでプラスの差がつき、重症例では手術が優位になります
まなぶ先生 まなぶ先生

OAには、まず運動療法。そう教わってきました。非介入と比べて-12.4なら、しっかり効いているように見えます。ここは素直に喜んでいいところですよね?

教子先生 教子先生

ただ、その-12.4はGRADE確実性が「非常に低い」なんですよね。数字の大きさだけを見て安心していいのか、私はそこが気になります。中等度の確実性がある比較だと、差はもっと小さいですし。

瀬谷崎 瀬谷崎

いいところを突いていると思います。効果量とセットで、確実性とMCIDを見たいんですよね。確実性が中等度の比較では、痛みの平均差はおおむね-4から-10。MCIDのおよそ8点と重なる水準です。運動療法に効果がないという話ではなくて、効果はあるけれど、私たちが期待するほど大きくも確実でもないかもしれない、という受け止めが実態に近いと思います。

低侵襲だからこそ、運動療法が優先される

効果が限定的なら、運動療法をすすめる意味は薄いのでしょうか。ここは、逆の見方もできます。

教育療法やステロイド注射など、他の保存的な介入と効果が大きく変わらないのであれば、そのなかで侵襲がなく、リスクも低い運動療法が上位に来るのは、むしろ自然な判断です。効果の大きさだけでなく、侵襲とリスク、続けやすさまで含めて天秤にかけると、運動療法の立ち位置が見えてきます。

一方で、変形性膝関節症の評価で重症度が高いと判断される場合は、数値が示すとおり手術のほうが痛みの改善は大きくなります。運動療法を、どの重症度の患者さんにも一律に当てはめるのではなく、手術という選択肢との距離感も含めて考えたいところです。

まなぶ先生 まなぶ先生

手術と比べるとプラスの値、つまり運動療法が負けています。だとすると、重症の患者さんに運動療法をすすめるのは、遠回りをさせているだけなのでは、とも思えてきます。

教子先生 教子先生

とはいえ、軽症から中等症の方に、いきなり手術という話にもなりません。どこで線を引くのか、そしてそれを誰が決めるのか。そこが難しいところだと思います。

瀬谷崎 瀬谷崎

線引きを一律に決めるのは難しいと思います。重症度、生活で困っていること、手術への希望や不安、併存疾患。人によって重みが変わりますよね。だからこそ、数値は数値として正直に共有したうえで、その人にとって何を優先するかを一緒に決めていく。運動療法を万能のものとして掲げるのではなく、選択肢の一つとして等身大で置くのが、誠実なやり方だと感じています。

患者とともに決める(共同意思決定)

今回の概要が示しているのは、運動療法の効果は限定的で、重症例では手術が優位になりうる、そして患者ごとの慎重な判断が要る、ということです。数値を知ったうえで、それをどう伝え、どう一緒に決めるかが次の課題になります。

効果を大きく見せて期待をあおるのでもなく、逆に効果がないと切り捨てるのでもなく、わかっている範囲を等身大で共有する。そのうえで、その人が何を大事にしたいかを聞き、選択肢を一緒に検討していく。こうした共同意思決定(SDM、シェアード・ディシジョン・メイキング)の姿勢が、こうした限定的なエビデンスを臨床で扱うときほど生きてきます。

参考文献

  • Schleimer T, Teichert F, Henriksen M, Doeding R, Innocenti T, Brisby H, Klotz MC, Korinth M, Owen PJ, Pieper D, Belavy DL. Effectiveness of exercise therapy for osteoarthritis: an overview of systematic reviews and randomised controlled trials. RMD Open. 2026;12:e006275.(図は同論文より引用改変)

運動療法を、等身大で使う

運動療法は、侵襲がなくリスクも低い、優れた選択肢です。その価値は変わりません。同時に、痛みへの効果は私たちが思うより限定的かもしれない、という視点も、今回の概要は示しています。

効果を大きく見せることでも、切り捨てることでもなく、数値を正直に共有し、その人にとっての最善を一緒に選んでいく。運動療法を等身大で扱うことが、結果として患者さんの信頼にもつながっていくのだと思います。

瀬谷崎 瀬谷崎

運動療法を神話のように扱わず、わかっている範囲で正直に。効果があると信じたい気持ちはよくわかりますが、患者さんと慎重に一緒に決めていくことのほうが、長い目で見て信頼を積み上げてくれると思います。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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